ラオスにおける企業登録に関するガイドラインについて
ラオスにおける企業登録に関するガイドラインについてのニュースレターを発行しました。
PDF版は以下からご確認下さい。
ラオスにおける企業登録に関するガイドラインについて
2024年1月2日
One Asia Lawyers Groupラオス事務所
1.経緯
2018年2月1日より施行されているラオスの投資環境改善に関する首相令が発行され(詳細はニューズレターをご参照ください)、これまでに、会社設立にかかる煩雑な手続きを改善するために、多くの法令が発行されました。そして、これらの法令に基づき、2023年12月29日付で会社法が改正されました(以下、「改正会社法」)(詳細はニュースレターをご参照ください)。しかしながら、未だに法令と実務が乖離している部分も多くあり、実務上、混乱することが多いのが現状です。
今回、商工業省は、2023年12月22日付で、「企業登録実務に関するガイドライン(No.2406)
(以下、「ガイドライン」)」を発行しました。同ガイドラインは、改正会社法の中に規定される「企業登録」に関する条文に基づいて、より詳細に解説しているガイドラインであり、下記の表の通り、大きく分けて15項目から構成されています。
項目 |
内容 |
Ⅰ |
企業登録 |
Ⅱ |
企業登録書の記載事項 |
Ⅲ |
企業登録後の事業活動 |
Ⅳ |
企業名及び企業看板 |
Ⅴ |
企業登録情報の変更 |
Ⅵ |
企業の支店 |
Ⅶ |
企業印 |
Ⅷ |
企業登録書の再発行 |
Ⅸ |
企業登録書使用の停止及び再開及び納税者番号の使用停止 |
Ⅹ |
会社清算 |
Ⅺ |
印刷媒体による書類及び使用言語 |
Ⅻ |
手数料とサービス料 |
XIII |
国家企業登録情報データベースの管理 |
XIV |
施行 |
XV |
効力 |
本ニューズレターでは、企業登録書に関する規定(上記、Ⅰ、Ⅱ)と改正会社法第24条に規定されている企業登録情報の変更(上記、Ⅴ)を中心に解説します。
2.企業登録について
(1)経済特区の中の会社の企業登録書について
改正会社法第15条において、「Conducting business shall be first registered as an enterprise with the enterprise registration authorities in the industry and commerce sector, including investment in the special economic zone」と規定されており、経済特区の中の会社も商工業省/局で登記することが規定されています。
しかしながら、現状、経済特区委員会から企業登録書が発行されていることもあり、ガイドラインでは、経済特区の中の会社の企業登録書は、各経済特区が所在する都や県の経済特区委員会が発行すると規定しています。従って、改正会社法とは異なる運用がなされていますので、留意する必要があります。
(2)オンラインでの会社登録について
改正会社法第16条では、オンラインでの企業登録について、別途定める規定に従うとあります。
現時点において、オンラインでの企業登録はまだ運用されていませんが、ガイドラインでは、企業登録の方法を①印刷媒体での申請、及び ②オンラインでの申請に分けて説明しており、オンラインでの企業登録が今年中に始まることが期待されます。
(3)企業登録番号
改正会社法第18条では、企業登録書の記載内容について、「企業識別番号、納税者番号」と書かれており、現状の企業登録書には、それぞれ別の数字が付与されています。しかしながら、ガイドラインでは、企業識別番号と納税者番号は同じものであり、会社と納税システム(Tax RIS)をリンクさせていることから、納税者番号が、企業識別番号であると説明しています。今後発行される企業登録書は、企業識別番号が省略される可能性がありますので、留意する必要があります。
(4)手数料及びサービス料
以前は、企業登録書の取得時に手数料及びサービス料を支払うことになっていましたが、企業登録書を発行しても取りに来ない会社が増えたことにより、企業登録申請書を提出した日に、同時に手数料及びサービス料を当局へ支払うルールへと変更になりました。
3.企業登録情報の変更について
改正会社法第24条では、企業登録内容に変更が生じた場合、事業者は、会社内で内容変更についての合意を得てから30日以内に、企業登録書の発行元へ、企業登録情報変更申請を行う義務があることが規定されています。
ガイドラインでは、各会社の形態に基づき、変更手続きに必要となる書類を記載しています。なお、変更の内容には問わず、以下の書類を揃えて、企業登録書の発行元へ提出します。
(1)企業登録情報内容変更申請書(所定の書式あり)
(2)企業登録書の原本(返却のため、オンラインで登記手続きした場合は除く)
(3)変更に関する書面による合意書
上記、(3)の合意書については、株式会社及び公開会社の場合は、株主が合意し、署名した「株主総会決議書」が必要となります。なお、資本金未払いの株主は、議決権はありません。
また、株主が法人の場合は、その法人の代表取締役又は代表取締役から書面にて委任された人が決議書へ署名する必要があります。
株主が一人であり、社外取締役がいる場合、社外取締役からの合意書が必要となります。
(4)その他の必要書類
上記、(1)から(3)の他に、変更する企業登録情報によって、以下の通り必要な書類が規定されています。
|
変更内容 |
必要書類 |
1 |
取締役、事業主、株主以外の人が変更申請手続きをする場合 |
委任状、委任者及び受任者のIDカード、ファミリーブック等の写し(外国人の場合は、パスポートの写し) |
2 |
取締役、株主、事業主の変更の場合 |
新しい取締役、株主、事業主のIDカード、ファミリーブック等の写し(外国人の場合は、パスポートの写し) |
3 |
個人事業主の変更の場合 |
公証済みの事業譲渡契約書又は営業権譲渡に関する書面 |
4 |
株主の変更、株式の保有比率の増減 |
・公証済みの株式譲渡契約書(ただし、増資による株主の増員の場合は除く) ・増資による株主の増員の場合は、株主総会決議書が必要。 ・新しい株主が法人の場合は、その法人の株主リストとともに企業登録書(事業体証明書)の写しが必要。 |
5 |
死亡した個人事業主、株主から権利を相続した場合 |
公証済みの相続証明書 |
6 |
資本金未払いによる株主の変更(会社法第102条[1]) |
・取締役又は資本金払込み済みの株主発行の公証済み資本金未払い証明書(株主が法人の場合は、その法人の取締役又は委任者が署名した株主総会決議書) ・株主が変更になる場合は、新しい株主が署名した株主総会決議書 |
7 |
減資による登録資本金の変更 |
減資することを新聞又は国の企業登録データベースウェブサイトへ少なくとも3回[2]公告したことの証拠書類 |
[1]改正会社法第102条 出資金未払いによる弊害
株主総会で合意した期日までに資本金を支払わない株主は、議決権、配当金の制限を受ける。まったく支払わない場合は、株主から抹消可能。未払いの場合、支払い期限日から60日以内に、登記情報の変更手続きをすること(減資、株主変更、株保有率変更、会社の形態変更、閉鎖等)。取締役が未払いの場合は、株主から請求、提訴することが可能
[2] 実務的には、1回の掲載期間は2か月間(5回/月)。
以上
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