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ASEAN News Letter ラオス投資奨励法の官報掲載

2017年04月17日(月)

ラオス改正投資奨励法のアップデートについて解説致します。
→ ラオス新投資奨励法の官報掲載

 

ラオス新投資奨励法の官報掲載

2017 年 4 月 16 日
One Asia Lawyers ラオス事務所
藪本 雄登
内野 里美

1 背景状況
 ラオスでは、昨年より改正投資奨励法草案の起案、修正および国民議会での協議が行われていました。今までは、2016 年 10 月 11 日時点の草案が最新版(以下、「最終草案」といいます。)として、国民議会に提出されていました。議会での手続きを経て、遂に 2017 年改正投資奨励法(以下、「新投資法」といいます。)が官報に掲載され、新投資法が 2017 年 4 月 19 日より施行する予定となっています。総条文数は、第 1 条から第 109 条までとなっており(現行投資奨励法は、第 99 条まで)、また最終草案から内容が一部大きく変更されています。以下の通り、2017 年新投資法の内容をご紹介致します。
 なお、経過規定によれば、旧投資法により既に恩典を受けていた投資家や企業等については、そのまま旧投資法の内容が適用されることになっております。もし当該投資家が新投資法上の優遇措置を受けることを希望する場合は、当局に対して、新投資法の施行後、120 日以内に申請を行う必要があります(新投資法第 109 条)。
2 新規制の概要
1. 新投資法上の投資形態
 ラオスにおける投資奨励法上の投資形態として、現行法上は、①国内資本あるいは外国資本による単独投資、②国内資本と外国資本の合弁投資、③契約に基づく業務提携の 3 つの形態のみ規定されておりました。今回の改正で、④国有企業と民間企業の合弁投資、⑤官民連携による投資の 2 つが追加され、計 5 つの投資形態に分類されています(新投資法第 26 条)。
 新投資法上における④の国有企業と民間企業の合弁投資とは、国有企業と民間企業がラオスの法律に従い、新たな現地法人を設立し、共同の運営権と所有権を持つ投資形態と規定しています(同法第 30 条)。また、⑤官民連携は、新規建設プロジェクト、インフラ整備、公共サービス分野のプロジェクト実施のため、ラオス政府と民間企業による合弁契約に基づく投資形態とされています(同法第 31 条)現時点ではラオス語版のみ存在しており、英語版の作成が待たれます。
 今回の改正により、今まで明確でなかった官民連携(Public-Private Partnership(PPP))での投資が明確な投資形態と定められ、今後、国有企業・政府と外国民間企業との共同出資による投資
をさらに促進したいという方針だと思われます。ただし、官民連携に関する細則の整備が進んでおらず、今後細則の発布等の動向を注視する必要があります。
2. コンセッションに関する改正
(1)コンセッションに関する分類
 現行投資奨励法上において、3 つ事業形態(一般事業、コンセッションを伴う事業、経済特区開発事業)が存在しておりましたが、新投資法上では、一般事業とコンセッション事業の 2 つに変更されています(新投資法第 32 条)。最終草案では、コンセッションに関して、①天然資源の開発を含むコンセッション、②天然資源の開発を含まないコンセッション、③官民連携に基づくコンセッション、④経済特区開発に関するコンセッションという 4 つの分類が分けられる流れとなっていました(草案第 15 条)が、今回の新投資法では、当該分類については言及されていません。
(2)コンセッション事業者に対する要件
 今回の新投資法では、コンセッション事業における投資家の条件が以下の通り規定され、適格な投資家に対してのみコンセッションを付与するような設計となっています。条件は以下の通りです(新投資法第 43 条)。
 1.法人であること
 2.投資事業分野に対する十分な経験と実績を有すること
 3.国内外の金融機関等により資金が承認され、確保されていること
 4.関連する法律が定めるその他条件を満たしていること
(3)コンセッション期間に関する改正
 現行の投資法奨励法上のコンセッション付与期間は 99 年間ですが、コンセッション付与期間が長すぎるとの意見があり、最終草案の内容と同様に、50 年間へ短縮されています(同法第 42条第 1 項)。
3. 駐在員事務所について
 今までヴィエンチャン日本人商工会所などを通じて、交渉および議論を続けてきた駐在員事務所の許可期限の問題(現行法上、駐在員事務所の許可は 1 年更新で、2 回しか更新できない)については、今回の改正により修正・削除されることも期待されましたが、新投資法では特段、許可期限に関する言及はなく、新投資法第 56 条第 3 項にて記載される駐在員事務所に関する細則での修正が待たれることになります。
4. 支店での進出
 現行法においては、外国企業は、ラオス国内で支店を通じて事業を行うことも可能でしたが、今回の改正により支店に関する規定が削除されております。現在、ラオス国内での支店形態は、航空会社、銀行、保険、国際コンサルタントの 4 業種に限定されており、利用事例は限定されています。今後、支店という形態が利用できるか否かは、当局に確認を行う必要があります。
5. Special Economic Zone (SEZ)への進出
 今回の新投資法では、これまで「特別経済区」と「特定経済区」に概念上分けられていた、いわゆる経済特区の概念を「Special Economic Zone(以下、「SEZ」という。)」に統一しています。昨年より議論されていた経済特区法草案でも同趣旨の内容がありましたが、経済特区法草案は次回の国民議会に提出されていない状態です。そのような状況に鑑み、当該草案の内容が一部先行して反映されたかたちとなっています。今後、経済特区法が成立するか否かについては、その動向に注目していく必要があります。
 また、現行法では、SEZ 開発や SEZ 内での事業については、「ビジネスにおける競争力強化」という観点のみで記載がなされていましたが、今回の改正では、より具体的な内容、つまり高技術、持続的発展・環境に良好な農産品生産、クリーンな生産活動、天然資源節約・省エネルギーに関する技術革新の利用などに関連する投資誘致を奨励することを明確に規定しています(新投資法第 57 条)。
6. 投資インセンティブ内容の改正
 投資インセンティブについて、最終草案では、基本的にゾーン制は廃止される流れとなり、投資優遇業種によって、法人税免税期間に関して、第 1 奨励レベルについては 8 年間、第 2 奨励レベルは 5 年間、第 3 奨励レベルは 3 年間、貧困地域への投資については、前述の免税期間に加えて、プラス 5 年間の恩典を与える方針となっていました(草案第 43 条)。
 しかしながら、今回の新投資法では、最終草案の内容から大きく変更され、現行法上のゾーン制が維持される内容となっています。
(1) 奨励業種
 新投資法第 9 条では、奨励業種を以下の通り規定しており、高度技術産業、省エネ、研究開発(R&D)、医療機関などが奨励業種として追加されたことが新しい点といえます。
 ア 高度で最先端な技術、科学技術の研究、研究および開発、テクノロジーの使用、環境に優しい天然資源エネルギーの節約に資する事業
 イ クリーンな農業、無農薬、品種生産、家畜改良、工芸作物栽培、森林開発、環境および多様性の保護、地方開発、貧困削減に資する事業
 ウ 環境に優しい農業生産物の加工、国の伝統・独自の加工品、手工芸品の生産
 エ 環境に優しく持続可能な自然、文化、歴史観光産業

 オ 教育、スポーツ、人材開発(人的資源開発)、職業技術、職業訓練所、教材およびスポーツ用品の生産
 カ 高度な医療施設、医薬品および医療器具製造工場、伝統医薬品の製造と治療施設の開発
 キ 都市の渋滞緩和、居住地域整備のための公共サービス・インフラ施設への投資運営開発、農業、工業用インフラ建設、商品輸送サービス、越境サービス
 ク 銀行融資を受けることが難しい貧困地域およびコミュニティに対する貧困解決のための政策銀行、マイクロファイナンス事業
 ケ 国内製造および世界的に有名なブランドの販売促進のための近代ショッピングセンター開発運営、工業、手工芸品、農業分野の展示場の開発運営
(2) 地域に基づく優遇
 新投資法第 10 条では、以下の通り、地域(ゾーン)の定義を定めています。
 ゾーン 1 貧困地域、遠隔地、投資に対する社会経済インフラ整備されていない地域
 ゾーン 2 投資に対して社会経済インフラ整備がある程度進んでいる地域
 ゾーン 3 SEZ への進出
(3) 投資奨励分野および地域に基づく法人税優遇措置
 新投資法では、現行法と同様に、奨励業種とゾーンによる基準により、法人税免税の恩典内容を判断する内容となっています。
<ゾーン 1 貧困地域、遠隔地、投資に対する社会経済インフラ整備がされていない地域>
 ゾーン 1 への進出:法人税が 10 年間免除されます。同法第 9 条で規定されるイ、ウ、オおよびカの分野への投資について、さらに追加で 5 年間免税措置を受けることができます。
<ゾーン 2 投資に対して社会経済インフラ整備がある程度進んでいる地域への投資>
 ゾーン 2 への投資:法人税が 4 年間免除されます。同法第 9 条で規定されるイ、ウ、オおよびカの分野においては、さらに 3 年間免税されます。
<ゾーン 3 SEZ への進出>
 SEZ への投資:法人税の免税優遇措置は、各 SEZ での規制に則り、適用を受けることができます。
 なお、法人税免除期間は売上が発生した時点から算出されます(同法第 11 条)。上記に示す法人税免除期間が終了した後は、税法に従い法人税(24%)を納める必要があります。
<現行法における法人税優遇措置の判定方法>

ゾーン インフラ整備 奨励業種のレベル 法人税免除期間
ゾーン1 未整備な地域




10年
6年
4年

ゾーン2 部分的に整備された地域




6年
4年
2年

ゾーン3 十分に整備された地域




4年
2年
1年

<新投資法における法人税優遇措置の判定方法>

ゾーン インフラ整備 法人税免除期間 法人税免除期間
ゾーン1 貧困地域、遠隔地、投資に対する社会経済インフラ整備がさせていない地域

10年

(第9条に定められる奨励業種への投資)

追加5年間

(・クリーンな農業、無農薬、品種生産、家畜改良、工芸作物栽培、森林開発、環境および多様性の保護、地方開発、貧困削減に資する事業

・環境に優しい農業生産物の加工、国の伝統・独自の加工品、手工芸品の生産

・教育、スポーツ、人材開発(人的資源開発)、職業技術、職業訓練所、教材およびスポーツ用品の生産

・高度な医療施設、医薬品および医療器具製造工場、伝統医薬品の製造と治療施設の開発)

ゾーン2 投資に対して社会経済インフラ整備がある程度進んでいる地域

4年

(第9条に定められる奨励業種への投資)

追加3年間

(・クリーンな農業、無農薬、品種生産、家畜改良、工芸作物栽培、森林開発、環境および多様性の保護、地方開発、貧困削減に資する事業

・環境に優しい農業生産物の加工、国の伝統・独自の加工品、手工芸品の生産

・教育、スポーツ、人材開発(人的資源開発)、職業技術、職業訓練所、教材およびスポーツ用品の生産

・高度な医療施設、医薬品および医療器具製造工場、伝統医薬品の製造と治療施設の開発)

ゾーン3 SEZへの投資 SEZ関連法令によって判断  


(4) 恩典を受けるための条件
 新投資法第 9 条で規定される優遇措置分野への投資に関しては、最低でも 1,200,000,000 キープ(約 1,800 万円、約 15 万米ドル)の投資総額、または、ラオス人技術者を最低 30 名以上雇用する、もしく労働契約を 1 年以上締結するラオス人労働者を 50 名以上雇用することが条件となっています(新投資法第 9 条第 2 項)。
 上記で定めた資金や労働力を確保することが難しい中小規模の事業は、関連する規定や法律によって規定される奨励優遇を受けることができると規定されています。
 今後、新投資法の施行、運用に向けて通達などが発布される可能性があり、引き続き情報をアップデートしていきます。また、その他詳細な恩典内容(関税・付加価値税や土地利用に関する音声)については、別途ご紹介致します。