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ラオスにおける 森林関係法令違反者に対する罰則規定について

2024年09月22日(日)

ラオスにおける 森林関係法令違反者に対する罰則規定についてのニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

森林法令罰則規定について

 

ラオスにおける 森林関係法令違反者に対する罰則規定について

2024年9月22日
One Asia Lawyers Groupラオス事務所

1.背景
ラオスでは、大規模な伐採や近隣諸国への違法な輸出の急増を背景に、2016 年に「木材伐採・木材輸送・ 木材ビジネスの管理と監督の厳格化に関する首相令第 15号」が発令されて以降、未加工・半加工の木材製品の輸出は原則として禁じられています。その後、2019年に森林法が改正、2023年には「輸出可能木製品リスト」がアップデートされています。

また、黒炭に関しては、2022年に「海外輸出用の黒炭の輸送許可の停止に関する通知(詳細はニューズレターをご覧ください)」が発行されています。

今回、ラオス政府は、森林関係の法令に違反した者に対する罰則規定について定めた「森林に関する法令違反者に対する違約金及びその他の罰則に関する首相令(No365)(以下、首相令)」を2024年8月21日付で発行、2024年9月1日から施行されています。

森林法第170条に規定される違反者に対する罰則については「事案の重大性に応じて、警告、教育、懲戒処分、罰金、民事上の損害賠償、刑事上の処分を受ける」とあり、損害額が大きくない場合は、警告等を行ったうえで、「市場価格に応じた森林資源を含めた木材や木製品の損害額の3倍の罰金を科し、3回以上違反した場合は、その損害額の5倍の罰金を科す」ことが規定されています。

今回発行された首相令では、違反とみなされる具体的な行為10項目と罰金の額が記載されたため、違反者に対して、罰則が科せられる根拠を示すことが可能となり、全国統一的に運用されることが期待されます。

2. 違反行為と罰金について

(1)木材と木材以外の森林産物(非木材林産物[1])の切り出し

農林局指定の手続きや規定に従わずに木材及び非木材林産物を切りだした場合、以下のとおり、罰金が科せられます(首相令第6条)。

違反回数

罰金

1回目

市場価格に従った損害額の3倍

2回目

市場価格に従った損害額の4倍

3回目

市場価格に従った損害額の5倍

 

なお、木材と非木材林産物の切り出し事業許可証を他人が使用した場合は、損害額の3倍の罰金が科せられます。

また、木材と非木材林産物の切り出し事業許可を取得しないで実施し、損害額が5,000,000キープ[2]以下の場合についても、上記表と同じ罰金の額が設定されています。

(2)森林伐採、焼き払い又は森林破壊

許可を取得せずに不適切な方法で森林伐採、焼き払い又は森林破壊を行った場合、損害額が5,000,000キープ以下の場合、上記(1)の表と同じ罰金の額が設定されています(首相令第7条)。

(3)伐採、木、丸太、非木材森林産物の売買又は運搬

許可を取得せずに伐採、木、丸太、非木材森林産物の売買又は運搬した場合、上記(1)の表と同じ罰金の額が設定されています。

なお、非木材森林産物リストⅠ[3]で損害額が500,000キープ以下の場合も同様の罰金が科せられます(首相令第8条)。

(4)木材と非木材森林産物の輸出入、再輸出、通過

許可を取得せずに木材及び非木材林産物の輸出入、再輸出、国内通過の場合、上記(1)の表と同じ罰金の額が設定されています。

条件に従わず木材と非木材林産物の輸出入、再輸出、国内通過の場合、1回目の違反は10,000,000キープ、2回目の違反は20,000,000キープ、3回以上は30,000,000キープの罰金が科せられます(首相令第9条)。

(5)木材及び非木材森林産物の加工と保有

許可を取得せずに木材及び非木材林産物を加工及び保有するために切り出した場合、上記(1)の表と同じ罰金の額が設定されています(首相令第10条)。

(6)木材加工、非木材森林産物加工工場及び炭製造工場の稼働

許可を取得せずに製材工場、加工工場、家具工場、家族経営の家具工房、非木材森林産物加工工場及び炭製造工場を稼働させた場合、下記のとおり、罰金が科せられます(首相令第11条~第13条)。

 

工場の規模

罰金

家族経営

5,000,000キープ

小規模

20,000,000キープ

中規模

40,000,000キープ

大規模

100,000,000キープ

許可された事業内容のとおりに、製材工場、加工工場、家具工場、家族経営の家具工房、非木材森林産物加工工場及び炭製造工場を稼働していなかった場合、下記のとおり、罰金が科せられます(首相令第11条~第13条)。

 

工場の規模

違反回数

罰金

 家族経営

1回目

2,000,000キープ

2回目以上

5,000,000キープ

小規模

1回目

5,000,000キープ

2回目以上

10,000,000キープ

中規模

1回目

10,000,000キープ

2回目以上

20,000,000キープ

大規模

1回目

20,000,000キープ

2回目以上

50,000,000キープ

(7)森林区域の看板及び目印の移動、変更及び破壊

許可を取得せずに、森林区域の看板及び目印を移動させたり、内容の変更及び破壊した場合、以下のとおり罰金が科せられます(首相令第14条)。

 

違反回数

罰金

1回目

損害額の3倍

2回目

損害額の4倍

3回以上

損害額の5倍

(8)木材伐採用の機械の輸入と保有

許可を取得せずに木材伐採用の機械を輸入又は保有した場合、以下のとおり罰金が科せられます(首相令第15条)。

 

違反回数

条件

罰金

1回目

輸入

30,000,000キープ

保有

300,000キープ/個

2回以上

輸入

50,000,000キープ

保有

600,000キープ/個

 

[1] 非木材林産物とは、自然に生育する、または植林されたあらゆる種類の植物を指し、幹、茎、つる、塊茎、根、芽、新芽、葉、花、果実、穀物又は種子、樹皮、樹脂、ゴム、きのこ、蜂蜜、薬用植物など、その他の製品を含む(森林法第3条第17項)

[2] 5,000,000キープ=約230USD(2024年9月時点)

[3] 非木材森林産物リストⅠは、希少で薬効があり、絶滅の危機に瀕しており、特定の地域でのみ生育・栽培が可能で、成長速度が遅く、ワシントン条約の付属書に記載されている種を指す。例えば、つる性植物、ショウガ科の植物、ラン科植物など(森林法第3条第23項)

           以上

yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)