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フィリピン:SEC、サステナビリティ及び気候関連開示に関する国際基準に整合した報告基準及びガイドラインを採択

2026年03月16日(月)

「SEC、サステナビリティ及び気候関連開示に関する国際基準に整合した報告基準及びガイドラインを採択」についてニューズレターを発行いたしました。こちらの内容は以下のPDFからもご覧いただけます。
SEC、サステナビリティ及び気候関連開示に関する国際基準に整合した報告基準及びガイドラインを採択

SEC、サステナビリティ及び気候関連開示に関する国際基準に整合した報告基準及びガイドラインを採択

2026年3月
One Asia Lawyers Philippines Team
日本法弁護士 難波 泰明
フィリピン弁護士 Razel Ann P. Esteban

1. 概要

2025年12月22日、証券取引委員会(SEC)は、2025年シリーズ第16号通達を発出し、フィリピン財務報告基準(PFRS)S1「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する一般要件」及びPFRS S2「気候関連開示」を採択しました。これらは、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が公表した国際財務報告基準(IFRS)S1及びS2に対応するものです。
SECは併せて、上場会社及び大規模非上場会社(大規模非上場会社)向けのサステナビリティ報告ガイドラインを公布し、PFRS導入に向けたロードマップも定めました。
本ガイドラインは、持続可能な事業慣行を促進し、企業開示を国際基準に整合させることで、環境・社会・ガバナンス(ESG)を重視する投資家の誘致を目的としています。これに伴い、従来のSEC通達第4号(2019年シリーズ)は廃止されました。

2. 対象会社

従来は上場会社のみがサステナビリティ報告書の提出義務を負っていましたが、本ガイドラインにより、大規模非上場会社にも提出義務が課されることとなりました。
以下の要件を満たす大規模非上場会社は、上場会社と同様に年次報告書と併せてサステナビリティ報告書を提出する必要があります(証券規制法第17.2条、本ガイドライン第1.1条)。

・総資産5,000万ペソ以上
・100株以上保有する株主200名以上

これに該当しない大規模非上場会社は、監査済財務諸表と併せて提出します。
いずれの場合も、報告書は取締役会の審査及び承認を受ける必要があります。

3. 報告基準の統一

従来はGRI、IIRC、SASB、TCFDの4つの国際基準に基づいていましたが、本ガイドラインによりPFRS S1及びS2が正式に採用されました。
他の国際基準に整合する追加開示も可能ですが、重要情報を不明瞭にせず、PFRS S1及びS2と矛盾しないことが条件とされています。

4. 移行及び実施スケジュール

2026年度以降、以下のTierに分けて段階的にPFRS S1及びS2の導入が開始されます。それまでの間、上場企業は、旧ガイドラインに従った報告を継続する必要があります。一度下記要件に該当した企業は、以降、条件を満たさなくなった場合でも報告を継続する必要があります。

Tier

基準適用年度

報告年度

要件

Tier 1

2026年

2027年

時価総額500億ペソ超(2025年末時点)の上場会社

Tier 2

2027年

2028年

時価総額30億~500億ペソ(2025年末時点)の上場会社

Tier 3

2028年

2029年

・時価総額30億ペソ以下(2025年末時点)の上場会社
・フィリピン債券取引所(PDEx)のみに上場している上場会社
・年間売上150億ペソ超(直前会計年度)の大規模非上場会社

5. 外部保証の義務化

旧ガイドラインでは外部の第三者保証を取得することは求められていませんでしたが、本ガイドラインでは、Scope1及びScope2の温室効果ガス排出量について、PFRS S1及びS2の導入から2年後以降、公認会計士等の独立した専門家から、限定的保証を取得する必要があります。

Tier

外部保証導入年度

Tier 1

2028年

Tier 2

2029年

Tier 3

2030年

将来的には合理的保証へ移行することが予定されています。外部保証はISSA5000に準拠する必要があり、今後、ガイドラインが公表される予定です。

6. 移行措置

 旧ガイドラインでは、いわゆる「comply or explain」アプローチが採用されており、上場企業は同通達の施行後最初の3年間について、サステナビリティ報告書を年次報告書に添付する義務を負うものの、まだデータが入手できない項目についてはその理由を説明することが認められていました。
本ガイドラインでは、基準に基づく以下の経過措置について、限定的な延長が認められています。なお、特定の開示要件に関しては、「報告日時点において過度の費用又は労力をかけることなく当該企業が入手可能な、合理的かつ裏付け可能な情報」を用いることが可能です。

経過措置

適用期間

気候関連のリスク及び機会に関する情報のみの開示

Tier1及びTier2: 1年間
Tier3:2年間

財務諸表公表から下記の一定期間遅れたサステナビリティ報告書の提出
a) 第2四半期又は半期(Q2)の中間財務諸表と同時提出
b) 中間財務諸表を発行しない場合、報告期間終了後9か月以内の提出

全Tier: 1年間

比較情報の非開示

全Tier: 1年間

GHG排出量の算定について、GHGプロトコル「企業向け会計及び報告基準(2004年)」以外の方法を使用すること

全Tier: 1年間

Scope3のGHG排出量の非開示

全Tier: 2年間

7. 免除規定

以下を全て満たす大規模非上場会社は免除可能です。
(1) 親会社が適切なサステナビリティ報告を実施していること
(2) 子会社の情報が親会社報告書に含まれていること
(3) 免除証明書を財務諸表に添付すること

8. 罰則

未提出又は不遵守の場合、罰則が科されます。

違反回数

内容

初回

警告

2回目

30,000ペソ+1日500ペソ

3回目

60,000ペソ+1日1,000ペソ

新基準導入により違反カウントはリセットされます。

9. 企業が取るべき対応

フィリピンにおける上場会社又は大規模非上場会社に該当する外国企業は、PFRS S1及びS2への対応が必要です。特にTier1企業は2026年から適用され、2027年に報告義務があるため、早急に開示体制を整備する必要があります。また、導入から2年以内に温室効果ガス排出量について、監査対応ができるよう準備する必要があります。