欧州ビジネス法務通信 2026年10月号 EUの最新法務トピック3選 ― CBAM(炭素国境調整メカニズム)の本格運用/データ法(Data Act)/欧州アクセシビリティ法(EAA)
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欧州ビジネス法務通信
2026年10月号 EUの最新法務トピック3選 ― CBAM(炭素国境調整メカニズム)の本格運用/データ法(Data Act)/欧州アクセシビリティ法(EAA)
2026年10月
One Asia Lawyers Group
弁護士(日本・フランス)・弁理士
広瀬 元康
今号では、欧州で製品の輸出入や、データ・ウェブサービスの提供を行う日本企業の皆様向けに、いま実務上の確認が必要になりつつあるEUのルールを3つ、簡潔にお届けします。いずれも新しい規制というよりも、適用の段階に入り「対応状況の確認」が論点となっているものです。
1. CBAM(炭素国境調整メカニズム)― 2026年から本格運用の段階に
CBAM(規則(EU)2023/956。2025年の改正規則(EU)2025/2083により簡素化されています)は、2026年1月1日から本格運用(definitive regime)の段階に入りました。報告のみが求められた移行期間(2023年10月〜2025年末)とは異なり、対象品目を一定量を超えて輸入する場合には、認定CBAM申告者(authorised CBAM declarant)の地位が求められるとされています。対象品目は、鉄鋼・アルミニウム・セメント・肥料・水素・電力です。
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- ・年間の輸入量が50トン(正味重量・暦年ごとの合計)以下にとどまる場合は、少量(デミニミス)免除の対象とされています(水素・電力を除く)。
- ・CBAM証書の購入・提出が始まるのは2027年2月以降とされ、2026年分に関する初回の年次CBAM申告の期限は2027年9月30日とされています。
- ・このため、2026年中の主な論点は、証書の購入そのものよりも、申告者の地位の要否と排出量データの把握体制にあると整理することもできます。
実務ポイント:自社(または取引先であるEU域内の輸入者)が対象品目をどの程度輸入しているかを早めに確認し、認定申告者の地位や排出量データの収集が必要かを点検しておくことが重要と考えられます。日本の輸出者としても、EUの顧客から排出量データの提供を求められる場面が増えるという見方もできます。
2. データ法(Data Act)― コネクテッド製品の「設計段階」の義務が2026年9月に加わる
データ法(規則(EU)2023/2854)は、2025年9月12日から適用されています。これに加えて、2026年9月12日より後にEU市場へ出されるコネクテッド製品(IoT製品)等については、製品が生成するデータに利用者が原則としてアクセスできるよう設計・製造する義務(第3条(1))が適用されるとされています。
- ・対象は、ネットワーク接続やデータ生成を伴う「コネクテッド製品」と関連サービスとされ、製造業を中心に幅広い事業者が関わり得ます。
- ・企業間(B2B)のデータ利用に関する不公正な契約条項の規律や、クラウド等のデータ処理サービスの乗り換え(スイッチング)に関する規定も設けられており、切替手数料は2027年1月12日以降に原則として撤廃されるとされています。
実務ポイント:2026年9月以降に新たにEU市場へ出す製品については、データへのアクセスを前提とした設計になっているかを確認しておくことが重要と考えられます。なお、データ分野では簡素化に向けた見直しが議論されているとも報じられており、最新の状況を確認しておくことが有益と思われます。
3. 欧州アクセシビリティ法(EAA)― EU向けのEC・アプリ等に求められるアクセシビリティ
欧州アクセシビリティ法(EAA、指令(EU)2019/882)は、2025年6月28日以降にEU市場へ出される対象製品、または提供される対象サービスに適用されています。対象には、パソコンやスマートフォン等の一部の機器のほか、電子商取引(EC)、消費者向けの銀行サービス、電子書籍、電気通信サービスなどが含まれるとされています。
- ・EU域外の企業であっても、EUの消費者に対象サービスを提供し、または対象製品をEU市場に出す場合には、適用の対象となり得るとされています。
- ・サービスについては、従業員10人未満かつ年間売上高200万ユーロ以下の零細(マイクロ)企業の適用除外などが定められています。
実務ポイント:EU向けのECサイト・アプリや消費者向けサービスを提供している場合には、自社が対象に当たるか、またアクセシビリティ要件(関連規格としてEN 301 549が参照されることが多いとされています)への対応状況を確認しておくことが重要と考えられます。
4. おわりに
今号で取り上げた3つは、いずれも「新しい規制」というよりも「適用段階に入ったルールの現状確認」が論点となっているものです。まずは自社の製品・輸出入・データ・ウェブサービスのうち、どれが、どのルールの対象となり得るかを棚卸ししておくことが有益と考えられます。個別のご相談やセミナーのご依頼など、お気軽にお問い合わせください。
※本稿は2026年10月時点で公開されている情報に基づく一般的な情報提供であり、個別の法的助言ではありません。記載のうち、施行日・規則番号・条文上の枠組み等は公表資料に基づくものですが、運用の細部や解釈、今後の改正の動向には流動的な部分が含まれます。具体的なご対応にあたっては、最新の一次情報をご確認のうえ、個別にご相談いただくことをお勧めします。

