日本における入管法改正について
日本における入管法改正について報告いたします。
入管法改正について
2018 年 12 月 10 日
One Asia Lawyers 東京事務所
1 改正入管法の成立
日本では,第 197 回臨時国会において,2018 年 12 月 8 日,出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」といいます。)の一部を改正する法律が成立し,2018 年 4 月 1 日に施行されることになりました。
改正入管法はこれまで高度専門職に限定していた外国人労働者の受入れ政策を実質的に転換するものであり,日本政府が指定した業種で一定技能が必要な業務に就く「特定技能 1 号」と熟練技能が必要な業務に就く「特定技能 2 号」の在留資格の新設などが主要な改正点になっています。日本政府は介護や建設など 14 業種を検討の対象とし,5 年間で最大約 345,000人の受入れを見込んでいますが,業種別受入人数や受入先に求める基準等の重要項目の多くは省令などで定めることとされているため,制度の全体像が定まるにはまだ時間を要する見込みです。
法務省入国管理局の調査によると,日本における在留外国人数の総数は 2017 年 12 月末時点で 2,561,848 人であり,うちアジア地域出身者が占める割合は 75%以上になります。ただし,上記の在留外国人のうち専門的・技術的分野の在留資格により在留している外国人数は238,412 人とされていることからすると,今般の入管法改正により日本における外国人労働者は大幅に増加し,日本の産業界に与える影響は大きいものと考えられます。
2 人材派遣国の政策にも留意が必要
他方で,東南アジア地域の国々では,全体として国外への人材派遣に積極的あるいは少なくとも否定的ではないといえますが,他方で国内において優秀な人材の流出による国力低下や人材の日本での職場環境に対する懸念も高まっていることから,国外への人材派遣を抑制する政策を採用している国もあります。例えば,マレーシアでは,海外で雇用されているマレーシア人を所得税の減税等のインセンティブをもってマレーシア国内での労働に誘導する政策を採用しており,今後はそのような国が増える可能性があります。
したがいまして,今般の入管法改正により日本側で外国人労働者の受入れが以前より容易になったと言えますが,実際に外国人労働者の受入れを検討・実施するにあたっては人材を送り出す側の国における制度の動向も注視する必要があると考えられます。