• Instgram
  • LinkeIn
  • Lexologoy

タイにおける贈収賄規制について

2018年12月11日(火)

タイにおける贈収賄規制について報告いたします。

→贈収賄規制について

 

タイにおける贈収賄規制について

2018 年 12 月 10 日
One Asia Lawyers タイ事務所

1 はじめに

 タイでは 2018 年 7 月 21 日に贈収賄規制に関する新法の「Act Supplementing the Constitution Relating to the Prevention and Suppression of Corruption B.E.2561(2018)」が官報に掲示され、翌 22 日から施行されています。今回の改正内容について、以下に概要を記載します。その他詳細について情報が必要な方は別途ご連絡下さい。

2 贈賄者の定義変更

 最も重要な改正点は、贈賄者の定義を拡大し「外国法人」が含まれるようになったことといえます。旧法(Organic Act on Counter-Corruption B.E.2542(1999))においては含まれていなかった「外国法人」を定義に含めることにより、より広い範囲で贈収賄を規制、防止するのが狙いと考えられます。これにより、日本企業も対象となるため、より一層コンプライアンス体制の強化が求められます。

3 捜査能力の強化

 今 回 の 改 正 に よ り 、 国 家 汚 職 防 止 委 員 会 (National Anti-Corruption Commission(NACC))が、外国の調査機関や司法機関と協力できるようになりました。また、旧法では、NACC には政治家に対してのみ財産状況開示請求権が認められていましたが、新法では、政治家に加えて、裁判官、検察官、行政府の高官等にまでその対象が拡大されました。これにより、取締りがより一層厳格になると考えられます。

4 内部統制ガイドライン

 NACC は、贈収賄防止に向け、以下の8原則からなる内部統制ガイドラインを規定し、これらを満たす内部統制システムの導入と実施を法人に義務付けました。
 ① 汚職防止に関する経営陣トップからの強力かつ明確な政策・支援
 ② 贈賄のリスクを効果的に認識し、評価するためのリスク査定
 ③ ハイリスクかつ脆弱な分野のための強力かつ詳細な対策
 ④ ビジネスパートナーに対する汚職防止策の適用
 ⑤ 正確な帳簿及び会計記録の作成
 ⑥ 贈賄防止策を補完する人事管理政策
 ⑦ 贈賄の疑惑の報告を促す内部通報制度
 ⑧ 贈賄防止策とその効率性の定期的な見直し及び評価

5 法人が処罰の対象となる場合

 ① 法人の従業員、代理人、その他法人代表者等が、贈賄行為を行ったこと、② ①の行為が法人の利益のために行われたこと、③ 法人が「汚職防止のための適切な内部統制措置」を取っていなかったこと、この3つの要件を満たすとき、法人も処罰の対象となります。但し、「汚職防止のための適切な内部統制措置」を取っていたことを立証できた場合には、法人は免責されます(個人のみ処罰の対象となる)。すなわち、4で触れました8原則を満たす内部統制システムの導入と実施を立証できれば法人は免責されることになるため、この内部統制システムの導入と実施が法人のリスク回避にとって大変重要になってきます。

6 贈賄罪の罰則

 新法における贈賄罪の罰則は、贈賄行為を行った個人に対しては、5年以下の懲役、又は、10万バーツ以下の罰金、又はその併科(両方が科される)、法人に対しては、当該行為により生じた損害額又は当該法人が享受した利益額の1倍以上、2倍以下の罰金が科せられる旨規定しています。

7 新法の規制内容のまとめ

  個人 法人
贈賄罪により処罰される要件 ①公務員に財物または利益を供与、申し出または供与することを約束した者
② 公務員がその職務に反して
③ 作為、不作為、または遅延するようにするために
④ 不正な意図をもって、見返りを求めて行うこと
❶⇦左の①〜④の行為を、法人 (外国法人も含む)関係者
が行ったこと
❷ ⇦①〜④が法人の利益のために行われたこと
❸ 法人が「汚職防止のための適切な内部統制措置」を取っていないこと
✳︎ 但し、「汚職防止のための適切な内部統制措置」を導入していたことを立証できた場合免責される
罰則 5年以下の懲役、又は、
10万バーツ以下の罰金、又は
その併科
当該行為により生じた損害額又は当該法人が享受した利益額の1倍以上、2倍以下の罰金

以 上