カンボジアにおける労働省2020年3月23日付「労働者の電話番号に関する更新の要請」に関する通達について

2020年03月25日(水)

カンボジアにおける労働省2020年3月23日付「労働者の電話番号に関する更新の要請」に関する通達について報告いたします。

カンボジアにおける通達について

カンボジア労働法令アップデート

2020年3月16日
3月27日追記修正
OneAsiaLawyers カンボジア事務所
(JBL Mekong Co., Ltd / Mar & Associates)
日本法弁護士 村上 暢昭
同 吉田 重規

・新型コロナウイルス感染症の影響による原料不足のため操業困難な工場についての労働契約停止に関する指導(2020年2月28日付け指導14号)
・共同の医務室の設置または既存の医療機関の利用についての通知(2020年2月21日付け通知第4号)

・特別休暇の補填労働に関する指導(2020年2月21日付け労働省指導10号)

1.新型コロナウイルス感染症の影響による原料不足のため操業困難な工場についての労働契約停止に関する指導(2020年2月28日付け労働省指導14号)

 現在、カンボジアにおいて、中国等の諸外国での新型コロナウイルス感染症が発生している影響により、原材料を輸入できず、操業に困難を来たしている製造業者が多く見られます。こうした状況を受けて、カンボジア労働省は、当該状況下での労働契約停止についての指導を発行しました。

 下記の通り、本指導の対象は縫製業などの一部業種に限られています。もっとも、労働法上、不可抗力に該当する場合は最長で3か月(71条1項10号)、企業が深刻な資材不足な自体など特別に稀な困難な事態により操業を停止せざるを得ない場合は労働監督官の管理に基づき最長で2か月(71条1項11号)、労働契約の停止が可能とされています。本指導は、後者の71条1項11号を前提としたものと思われますが、下記の対象業種以外についても、労働省の判断により、本指導の対象業者に類似する労働契約の停止が認められる可能性は残されていると思われます。(3月27日追記:期間の関係の記載について一部修正しております。)

(1)対象業種

 繊維・縫製・履物(縫製産業)、旅行用品および鞄の製造工場を対象業種としています。

 カンボジアにおいて、主幹産業である縫製産業は様々な特別法の対象となっています。また、対象業種は、EUの特恵関税停止措置の影響が懸念される業種であることも関連していると思われます。

(2)労働契約停止中の労働者に対する手当

 労働法上、労働契約の停止が認められた場合は、使用者は賃金を支払う必要がないとされています(72条1項)。もっとも、本指導は、最低賃金190USDの40%の手当を労働者に支払うものとしています。

 また、労働者は、下記の国家雇用庁(National Employment Agency)が提供する技能研修に参加することにより、カンボジア政府からの手当として、最低賃金190USDの20%を受給することができるとされています。

(3)労働契約停止のための手続き

 使用者は、まず、①労働省の所管当局に申請をするものとされています。申請用紙は労働省のホームページから取得可能です。そして、②労働者に対し、労働契約の停止とその間の手当(最低賃金190USDの40%)について説明するものとされています。また、③当該手当の支払い手続について、労働者代表と書面で契約をすることが求められています。最後に、④労働契約を停止する労働者の名簿を作成するものとされています。

 そして、これを受けた労働省所管当局は、申請後24営業時間以内に工場を訪問し、関係者に手続を説明し促進すること。労使の契約締結を含むすべての手続きが完了した後、24時間以内に労働契約停止の許可書を発行するものとしています。

(4)研修について

 労働契約停止中、国家雇用庁が労働者に技能研修を提供するものとしています。

 使用者は、従業員の技能研修への登録に協力すること、工場において研修の場所を提供することなどを求められています。

3月27日追記(縫製産業以外の業種について、労働省聞き取り結果について)

 3月26日に労働省担当官にヒアリングをしたところ、下記の回答が得られました。

(1)本指導の対象業種以外についても、71条1項11号を根拠として、労働契約の停止が認められうる。

(2)停止に際しては、労働省の承認が必須。その際には、操業を停止せざるを得ない事態に陥っているか、その理由などが判断基準となる。労働者のヒアリングなども行う。

 71条1項11号には、労働契約の停止を労働監督官が管理する、という記載があるのみですが、従来からの実務運用としても、労働省の承認が必要とされてきたようです。労働省の承認がない労働契約の停止について労働仲裁で争われた事案でも、そのような契約の停止は有効なものとして認められず、使用者は賃金・手当の全額を支払うべきとされています。

2.共同の医務室の設置または既存の医療機関の利用についての通知(2020年2月21日付け労働省通知第4号)

 従来、50人以上の労働者が勤務する事業所について、医務室を設けることが求められていました。

 医務室は、20平方メートル以上であることを要し、労働者数に応じ、一定のベッド数や看護師・医師等を配置することが義務付けられていました(労働法242条、2000年労働省・保健省共同省庁令330号)。もっとも、企業にとって負担が大きく、実態として遵守されていない場合も見受けられました。

 この点に関して、2020年2月21日付け労働省通知4号により、複数企業により共同の医務室を設置することが明示的に認められました。また、一定の条件下では、既存の医療機関を利用することが可能となりました。その具体的条件は、下記の通りです。

(1)共通条件

 各事業所について、下記①②の双方が必要となります。

 ①救急室の設置と看護師1名の配置
 ②労働者の事故または疾病発生時に備え、共同医務室または医療機関への適切な搬送手段を確保しておくこと

(2)共同医務室

 下記①②のいずれかを満たす場合、共同利用可可能となります。

 ①企業の集合地に所在し、相互に1キロ以上離れていない企業間
 ②SEZ内の企業間

 いずれも、一つの共同医務室について、労働者数の上限は10,000人とされています。

(3)既存の医療機関の利用

 事業所の2キロ以内に、保健省に認定されている医療機関がある場合、労働省の担当部門にその旨と住所を通知することにより、医務室の設置に代えることができます。

3.特別休暇の補填労働に関する指導(2020年2月21日付け労働省指導10号)

 特別休暇とは、労働者本人の結婚式、妻の出産、子供の結婚、配偶者・子・両親の病気または死亡に際して、1年に7日を限度として認められる休暇です。使用者は、未使用有給がある場合、これを使用させることができるとされています。また、未使用有給がない場合、労働者に対して、休暇取得時間相当分の補填労働を求めることができるとされています。

 本指導は、補填労働について、以下としています。

 ・補填労働は特別休暇使用後90日以内に限って認められること
 ・補填労働については、所定勤務日になされるものとし、1日の労働時間は10時間、1週間の労働時間は54時間を超えることができない。1週54時間を超過した場合、時間外手当の割増し賃金の支払いが必要となる。

 上記は、基本的に従来の法解釈・実務運用から外れるものでなく、本件指導は、主として確認的な趣旨で発行されたものと思われます。もっとも、1週54時間の上限労働時間は、従前は許される上限時間であるとも考えられていました。割増し賃金の支給を記載することにより、週54時間以上(通常60時間まで)の勤務が時間外労働として許されることについても含める趣旨とも考えることができます。

以上