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ベトナムにおけるPPP(官民パートナーシップ)投資法の成立について

2020年07月06日(月)

ベトナムPPP法が2020年6月18日に国会にて可決されました。過去のベトナムのPPP法の変遷とその内容について一部ご紹介致します。

ベトナムPPP投資法の成立について

 

ベトナムでPPP(官民パートナーシップ)投資法が成立

                                    2020年7月5日                             One Asia Lawyers ベトナム事務所

1 はじめに  ベトナム国会は6月18日、「官民連携方式(PPP)による投資法案」[1](以下、「PPP法」または「本法」といいます。)を可決しました。  本法は2021年1月1日に発効する予定ですが、本稿を執筆している7月5日時点では、まだ、成立した法律の全文が一般公開されていないため、本ニュースレターでは、まず、ベトナムにおける旧来のPPP関連法規を俯瞰的に整理しつつ、入手しうるPPP法草案[2]と、地元紙等で報じられている成立した法律の主なポイントを見ていきたいと思います。

2 PPPにかかるベトナムの過去の法規  ベトナムの法制度上で「PPP」という文言が登場するのは今から10年前の2010年のことで、このときは、あくまで、試験的なPPPプロジェクトに対して試験的に適用する規則という位置づけでした[3]。  その後、2015年に政令化され、2018年に政令が全面改正されるなどして少しずつ法令の内容拡充が図られ、今回法律化されました。法律化されたということは、つまり、ベトナムでこの10年のあいだに、PPP事業がより重要性を増したともいえると考えます。

3 過去の法令の比較  主なポイントだけに絞ってみても、過去の法令を比較すると、定義や対象、国の出資比率などの規定がかなり変化していることがわかります。  PPP事業の対象として、2015年、2018年政令では国家機関庁舎の整備や農業などまで網羅していたものの、今回法律化されるにあたっては、対象が2010年の試験的規則程度にまで整理されたことなども、興味深い点かと思います。次の通り、過去のPPP関連法令の変遷内容を共有致します。

【PPP関連法令の概要比較】

 

試験的規則71/2010/QD-TTg)

2015年政令

15/2015/ND-CP)

2018年政令

63/2018/ND-CP)

2020年PPP法

(草案・報道ベース)

制定年 施行年 2010年11月9日 2011年1月15日 2015年2月14日 2015年4月10日 2018年5月4日 2018年6月19日 2020年6月18日 2021年1月1日
「PPP方式の投資」の定義 プロジェクト契約に基づき、国と投資家が連携してインフラ開発、公共サービス提供事業を実施すること (第2条1項) インフラ、公共サービス提供プロジェクトの実現、管理、運営を行うための、所管国家機関と投資家、プロジェクト企業とで締結される契約に基づき実現される投資形式 (第3条1項) インフラ施設の建設、改造、運営、経営、管理、公共サービスを提供するために、所管国家機関、投資家、プロジェクト企業とで交わされるプロジェクト契約に基づき実現される投資形式 (第3条1項) インフラ施設・システムの建設、国家に提供責任のある公共サービス・商品を提供する投資に参加する民間投資家を誘致することを目的とした、PPPプロジェクト契約の締結と履行による、国家と民間投資家の有期限の協力によって実現される投資方式 (第3条1項)
対象 1道路、橋梁、トンネル、フェリー乗り場 2鉄道、鉄道橋梁、鉄道トンネル 3都市交通 4空港、海港、河港 5上水道 6発電所 7医療(病院) 8環境(廃棄物処理工場) 9首相が決定するその他のインフラ開発、公共サービス提供事業 (第4条) a)交通運輸インフラ施設・関連サービス b)照明システム、上水道供給システム、排水システム、下水・廃棄物の回収・処理システム、社会住宅、再定住住宅、墓地 c)発電所、送電線 d)医療、教育、訓練、職業訓練、文化、スポーツインフラ施設および関連サービス、国家機関の庁舎 đ)商業、科学技術、水文・気象、経済区、工業団地、ハイテクパーク、集中IT区インフラ、IT応用 e)農業・農村インフラおよび農業商品の加工・消費を伴う生産連携開発サービス g) 首相が決定するその他の分野 (第4条) a)交通運輸 b)発電所、送電線 c)公共照明システム、上水道システム、排水システム、下水・廃棄物の回収・処理システム、公園、自動車・車両・機械設備の駐車場・置き場、墓地 d)国家機関庁舎、公務用住宅、社会住宅、再定住住宅 đ)医療、教育・育成・職業訓練、文化、スポーツ、観光、科学技術・水文・気象、IT応用 e) 商業インフラ、都市区・経済区・工業団地・産業クラスター・集中IT区インフラ、ハイテクインフラ、インキュベーション施設、技術施設、中小企業を支援するコワーキングエリア g) 農業・農村開発、農業商品の加工・消費を伴う生産連携開発サービス h) 首相が決定するその他分野 (第4条) a)交通 b)送電網・発電所 c)利水、上水道、下水道、下水処理、廃棄物処理、 d)医療、教育・訓練 đ)ITインフラ (第4条1項)
PPP事業として認められる投資額 規定無し 200億VND以上 (第15条1項đ) (公共投資法の規定に基づき、国家重要、A、B、Cグループ分類) 規定無し (公共投資法の規定に基づき、国家重要、A、B、Cグループ分類) <style=”text-align: left;”>2,000億VND以上(医療、教育・訓練は1,000億VND以上) <style=”text-align: left;”>(第4条2項a,b)
国の参加比率 投資総額の30%まで (第9条2項) 規定無し 規定無し 投資総額の50%まで (第71条2項)
主な契約類型 プロジェクト契約 (類型の定め無し) (第2条) BOT(建設・運営・移転) BTO(建設・移転・運営) BT(建設・移転) BOO(建設・所有・運営) BTL(建設・移転・リース) BLT(建設・リース・移転) O&M(運営・保守) (第3条) BOT BTO BT BOO BTL BLT O&M 上記の組み合わせ (第3条) BOT BTO BOO O&M BTL BLT 上記の組み合わせ (第3条)
投資優遇

プロジェクト企業:法人税優遇

プロジェクト用の輸入品:関税優遇

プロジェクト企業:土地使用料/賃貸料の免除

(第41条)

投資家、プロジェクト企業:法人税優遇

プロジェクト用の輸入品:関税優遇

投資家、プロジェクト企業:土地使用料/賃貸料の減免

投資家、プロジェクト企業:その他法定の優遇

(第55条)

投資家、プロジェクト企業:法人税優遇

プロジェクト用の輸入品:関税優遇

投資家、プロジェクト企業:土地使用料/賃貸料の減免

投資家、プロジェクト企業:その他法定の優遇

(第59条)

投資家、プロジェクト企業:土地使用料、土地賃貸等に関する優遇、および税や土地、投資、その他関連法で定めるその他の優遇 (第81条)

 

4 2020年PPP法による主な改正点

 10年の歳月を経て法律化された本法ですが、冒頭にも触れたように報道ベースではありますが、主な改正点としては、投資対象が大きく整理されたこと、契約類型としてBT方式が削除されたこと、PPP事業の収⼊が想定を25%下回った場合に政府側取り分を減らす(25%増加した場合は政府側取り分を増やす)保証制度が盛り込まれたことなどが挙げられます。  本法については、法律全文が一般公開された段階にて、改めて詳しくアップデートします。

[1] ベトナム語は「Luật Đầu tư theo phương thức đối tác công tư(PPP)」

[2] 第7次草案 http://duthaoonline.quochoi.vn/Pages/dsduthao/chitietduthao.aspx?id=1618

[3] その前はBTO、BOTなどの契約類型に特化した法令があるだけだった。

                                      以上

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