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シンガポールCOVID-19暫定措置法における救済措置の延長について

2020年12月15日(火)

シンガポールCOVID-19暫定措置法における救済措置の延長についてニュースレターを発行しました。 PDF版は以下からご覧ください。

シンガポールCOVID-19暫定措置法における救済措置の延長について

 

シンガポールCOVID-19暫定措置法における救済措置の延長について

2020年12月

One Asia Lawyers シンガポール事務所

1、イントロダクション
2020年11月17日の法務大臣の命令 に基づき、シンガポール法務省 は、COVID-19(Temporary Measures) Act Part2 Part3(契約を履行できない場合の一時的な救済、救済の通知) に定められた救済措置について、同年11月19日から2021年1月31日または3月31日に期間を延長することを発表しました 。これは、同法に基づいて賃料の支払い期限の延期等が定められ、法的措置や仲裁手続きが停止させられた企業の一時的な救済を図ることが目的とされています 。

2、概要
法では、通常の救済措置と、特定の契約(非居住用不動産の賃貸借契約、リースまたはライセンス契約 、商用機器の購入、リース契約、商品の供給に関する契約、サービスの供給に関する契約)に対する追加の救済措置が定められています。2020年11月16日の法務省の発表で、シンガポール政府に対して賃料補助などを求めるための救済措置の一部について、救済期間(法のPart2、Part3の適用がされる期間 )の延長が同年11月19日から2021年1月31日または3月31日に定められました。

・商用機器の購入、リース契約
“Re-Align Framework”(以下、「再調整フレームワーク」)の下では、販売者、賃貸人は未払いの延滞金の分割払いの方法を採用することができ、この返済方法を採用するには契約が継続していることが必要であり、そのため再調整フレームワークの開始前に契約の終了や法的執行を回避する必要があります。
シンガポール金融管理局 の規制を受ける銀行または金融会社との間で締結した契約ではないことが要件となります。
売買契約については2021年3月31日まで、リース契約については同年1月31日まで、救済期間が延長されます。
・住宅、商業施設、工業施設の売買契約
一般に支払いに時間がかかることから、買主、特に銀行ローンではなく売主に直接支払う買主を支援し、開発者、売主のキャッシュフローへの影響を抑えることが目的 とされています。
救済期間が2021年3月31日まで延長され、この間に訴訟手続きによることが制限されることになります。
・その他の契約
救済期間は延長されません。
特に商品の供給に関する契約、サービスの供給に関する契約、非居住用不動産の賃貸借、リースまたはライセンス契約についても救済期間は2020年11月19日に終了しています。
もっとも、再調整フレームワークの対象となっている非居住用不動産の賃借人は、同日を経過してから契約が終了しても再調整フレームワークの適用による救済を受けることができます 。

以上は、契約に対して政府が家賃免除などを定めた救済措置に関するものですが、これとは別に再調整フレームワークによる救済も可能です。以下では、非居住用不動産の賃貸借、リースまたはライセンス契約について、フレームワークの適用によって契約を終了するための手続きについて言及します。
再調整フレームワークを用いる方法とは、COVID-19 (Temporary Measures) 3rd Amendment (“Re-Align Framework”)に基づく方法です 。この方法を用いるには、まず契約の相手方、保証人がいればその保証人、当事者の肩書の承継人を含む譲受人に対して交渉の通知を提供する必要があります 。契約相手方は交渉の通知を受け取ると、交渉を拒むことができません。交渉の通知を受け取った相手方から異議がなく調整救済査定人 に調整の通知を発出するか、当事者間で合意が成立したときに契約は変更ないし終了します。
ただし、再調整フレームワークを採用するためには、
① 2021年1月15日から2月26日の6週間内に相手方に通知すること、
② 2019会計年度の年間収益が3000万Sドルを超えていないこと、および
③ 2019年7月から12月と2020年7月から12月を比較して収入が少なくとも70%減収していること
の要件がCOVID-19 (Temporary Measures)の補助法で定められることが法務省から発表されています 。

3、まとめ
コロナ暫定措置法で定められていた期間が2020年11月19日から延長され、救済を受けられる契約当事者が増えると考えられます。期間延長された契約については、同法に従って柔軟に交渉することが求められます。
一方で、非居住用建物の契約については家賃免除を受けるための救済期間が同年11月19日のままであり、延長されていません。しかし、再調整フレームワークの適用は受け得るため、賃料の減額や契約解除など柔軟に交渉することができ、相手方は交渉を拒むことができません。契約を終了する場合、終了時点までに生じている債務を支払えば、それ以降に発生する賃料等を支払わずに解除することができます。
この再調整フレームワークは、2021年1月15日から6週間の間のみ(同年2月26日までに通知が必要)利用できます。開始日が近づいているため、再調整フレームワークを前提にした交渉を開始すること、少なくとも期限までに相手方へ通知を行うことが推奨されます。