シンガポール法人のVoluntary Winding Up (任意清算)の手続きについて

2020年12月15日(火)

シンガポール法人のVoluntary Winding Up (任意清算)の手続きについてニュースレターを発行しました。
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シンガポール法人のVoluntary Winding Up (任意清算)の手続きについて

 

シンガポール法人のVoluntary Winding Up (任意清算)の手続きについて

One Asia Lawyers Group
Focus Law Asia LLC

1 Voluntary Winding Up(任意清算)の種類及び、根拠条文について

(1)任意清算の種類
 任意清算の方法には以下の2種類の方法がシンガポール法上存在する。
 • Creditor’s Voluntary Winding Up:債権者による任意清算
 • Member’s Voluntary Winding Up:株主による任意清算
(2)Voluntary Winding Upの根拠となる条文の概要
 Voluntary Winding Up(任意清算)にかかる規制は、Insolvency, Restructuring and Dissolution Act 2018 (No. 40 of 2018)1(IRDA)に定められている。
 • IRDA 第119条から第123条、第186条から第244条は、全てのWinding Up に適用される条文である。
 • IRDA第160条から第163条、第171条から第185条は、全てのVoluntary Winding Upに適用される条文である。
 • IRDA164条から第165条は、Member’s Voluntary Winding Upに適用される規定である。
 • IRDA第166条から第170条は、Creditor’s Voluntary Winding Up に適用される条文である。

2 Voluntary Winding Up(任意清算)にかかる一般条項

 以下の事項は債権者および株主による任意清算いずれにも適用される。
(1)任意清算の決議
 任意清算は、以下の場合に申請することができる。
 • 定款に規定された会社の法人としての存続期間を渡過し、株主総会普通決議(一般的には過半数)で解散の議案について可決した場合
 • 会社定款で解散の条件について定めており、かかる条件を満たした時に株主総会普通決議で解散の議案について可決した場合、または
 • 株主総会特別決議(一般的には76%超)によって、任意清算の実行を決議を
した場合(⇒一般的にはこの方法が用いられる)

(2)届出・広告
任意清算を行う企業は、
 • 清算の決議後7 日以内に、かかる決議について会計企業規制庁(ACRA)に提出しなければならない。
 • 清算の決議後10 日以内に、官報及び一社以上の英語表記の現地日刊新聞にて、かかる決議が行われたことについて広告しなければならない。

(3)暫定清算人の選任、権限等
 ① 取締役が、 (a) 企業が、負債を理由として事業を継続することができないこと、(b) Statutory Declaration 作成日から30 日以内に開催する株主総会及び債権者集会の招集を行ったこと、の記載のあるStatutory Declaration を、管財人(OfficialReceiver)及びACRA に提出した場合には、取締役は、Insolvency Practitionarを暫定清算人として選任しなければならない。
 ② 暫定清算人は、原則、清算人(Liquidator)に付与される全ての権限を行使できる。任期は、選任後30 日間(又は管財人が許可する延長期間)を限度に、清算人が選任されるまで継続する。暫定清算人の選任後14 日以内に、選任の通知及び上述①のStatutory Declarationを、官報及び一社以上の英語表記の現地日刊新聞にて広告しなければならない。
 ③ 暫定清算人は、会社の資産を保護するためなど、一定の例外に該当する場合を除き、債権者集会が開催される前は、権限を行使することができない。

(4)清算手続きの開始
 任意清算の手続きが開始するのは、以下の時点である。
 • 清算の決議がなされる前に暫定清算人が選任された場合は、上述(3)①のStatutory Declaration がACRAに提出された時
 • その他の場合は、任意清算の決議がなされた時

(5)事業活動の禁止
 会社は、任意清算が開始した時から、清算人が有益な清算において必要と認めない限り、事業活動を行うことができない。もっとも、企業の権能は、定款の反する規定かかわらず、継続する。清算開始後の株式の移管及び株主の状態の変更は、清算人の認めるもの以外、無効である。

(6)Solvency Statement
 株主による任意清算の場合、清算の決議が行われる株主総会の招集通知が送付される日より前に、取締役会において、過半数の取締役により以下の宣誓書(Solvency Statement)を作成し、ACRAに登記しなければならない。
 ① 会社の財政状態について調査をしたこと
 ② 取締役会にて、会社の清算手続き開始後12ヶ月以内に債務を完済することができるとの意見を形成したこと。

 なお、Solvency Statementには、偶発資産を含む会社の資産、債務、及び清算の概算費用を記載した財政状態計算書(Statement of Affairs)を添付する必要がある。Statement of Affairsは、可能な限りSolvency Statementの作成日に近い最新の情報が記載されたものである必要がある。また、Solvency Statementは任意清算の決議前の5週間以内に作成されなければならない。
 合理的根拠がないにもかかわらずSolvency Statementを作成した取締役は、刑事責任を負い、最高で5,000シンガポールドルの罰金、12か月の禁固刑、又はその両方が課される。実際に清算手続き開始後12か月以内に債務が完済されなかった場合は、かかる合理的根拠がなかったと推定されるため、Solvency Statementの作成は慎重に決定する必要がある。

(7)その他特筆事項
 清算人の選任手続きや資格の不備の有無にかかわらず、清算人の処分行為は有効である。また、善意の第三者の保護についても定められている。清算人は会社の資産の処分・債務の弁済について幅広い権限が与えられている。会社の譲渡についても、株主の特別決議により権限が付与されれば可能である。
 清算に1年以上継続する場合は、1年経過ごとに株主総会(債権者集会)を招集し、手続きの進捗状況を説明しなければならない。
 裁判所へ支払い不能による清算の申し立てが行われた場合は、裁判所の許可がない限り、任意清算の決議をしてはならない。

 IRDA第185条には、株主総会・債権者集会のデフォルトの招集通知期間、招集通知の送付方法、債権者集会の定足などの細則が規定されている。


3 Member’s Voluntary Winding Up(株主による任意清算)
(1)清算人について
 ① 清算人は、株主総会の普通決議にて選任され、選任後は、清算人又は清算人の承認を得て株主総会により別段の決定がされない限り、取締役の権限は消滅する。清算人は、Contributoryが特別通知により招集した株主総会において特別決議により解任することが可能である。
 ② 清算人が、清算手続き開始後12か月以内に債務を完済できないと認めた場合、30日以内に、7日以上の通知期間をもって債権者集会を招集し、資産負債表(Statement of Assets and Liabilities)を提示する。債権者集会において、債権者は、既存の清算人に代わる新たな清算人を選任できる。債権者集会以降は、当該清算手続きは、後記4に詳述する債権者による任意清算(Creditors’ Voluntary Winding Up)として進められる。
(2)手続きの流れについて
 ① 取締役会において、任意清算実施の決議のための臨時株主総会招集について決定し、Solvency Statementの作成を行う。前記2(6)の通り、Solvency StatementにはStatement of Affairsを添付する。Solvency Statementは、臨時株主総会招集の通知を発送する前にACRAに登記する必要がある。
 ② 上記①のSolvency Statementの作成後5週間以内に、臨時株主総会を招集し、任意清算の特別決議を行う。
 ③ 上記②の7日以内に決議をACRAへ登記する。また、上記②の10日以内に官報及び一社以上の英語表記の現地日刊新聞にて広告を行う。
 ④ 清算人を選任する。清算人は、その選任後14日間以内に、選任についてACRA及び管財人に通知する。
 ⑤ 清算人は、資産・負債の処分、納税処理、残余財産の分配を実施する。
 ⑥ 株主総会を開催し、清算人が清算結果を報告する。開催の30日前までに官報及び一社以上の英語表記の現地日刊新聞にて広告を行い、複写を管財人へ送付しなければならない。
 ⑦ 上記⑤の7日以内にACRAへ清算結果を届出る。
 ⑧ 上記⑥から3か月後に法人の登記が抹消される。


4 Creditor’s Voluntary Winding Up(債権者による任意清算)
(1)概要
 債権者による任意清算は、前期3(2)①のSolvency Statementが作成できなかった場合、又は3(1)②の通り清算人が判断した場合の清算方法であり、債権者による申し立ての清算ではない。
(2)清算人について
 清算人は会社により選任されるが、債権者は、債権者集会において候補を選任することができ、会社との間で清算人の選任で競合した場合、又は債権者が選任をしなかった場合は、会社の選任した者が清算人となる。
(3)監査委員会(Committee of Inspection)について
 債権者集会において、債権者は、監査委員会を設置することができる。監査委員会は、会社の選任する債権者、Contributoryなどの最高5人で構成される。
(4)手続きの流れについて
 ① 株主による清算(Members’ Voluntary Winding-up)において、清算人がSolvency Statementの通りの支払いができないと判断した場合は、前記3(1)②の通り手続きを進める。
 ② 上記①以外の場合(Solvency Statementの作成ができないが任意清算を実施する場合)は、取締役会において任意清算実施の決議のための臨時株主総会招集について決定する。
 ③ 株主総会の招集と同時に債権者集会を招集する。債権者集会の開催日は、清算の決議を行う株主総会の開催日又はその翌日とする。債権者集会の招集通知には全債権者の名前及び債権額を記載し、債権者集会開催の10日前までに送付する。債権者集会開催の7日前までに官報及び一社以上の英語表記の現地日刊新聞にて広告を行う。 ④ 取締役は資産の評価方法を記載した完全な財政状態計算書(Full Statement of Affairs)を作成し、債権者集会にて開示する。 ⑤ 株主総会決議後7日以内に決議をACRAへ登記する。10日以内に官報及び一社以上の英語表記の現地日刊新聞にて広告を行う。
 ⑥ 清算人を選任する。清算人は、その選任後14日間以内に、選任についてACRA及び管財人に通知する。
 ⑦ 清算人は、資産・負債の処分、納税処理、残余財産の分配を実施する。
 ⑧ 株主総会及び債権者集会を開催し、清算人が清算結果を報告する。開催の30日前までに官報及び一社以上の英語表記の現地日刊新聞にて広告を行い、複写を管財人へ送付しなければならない。
 ⑨ 上記⑧の7日以内にACRAへ清算結果を届出る。
 ⑩ 上記⑨から3か月後に法人の登記が抹消される。