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ラオスのPPP首相令の施行について

2021年01月22日(金)

ラオスのPPP首相令の施行についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

ラオスのPPP首相令について

 

ラオスのPPP首相令について

 

2021年1月22日

One Asia Lawyers ラオス事務所

インフラ輸出プラクティスチーム

ラオスにおける官民連携プロジェクト(Public Private Partnership、以下、「PPP事業」)は、2020年6月28日付「ラオスPPP法草案の概要について」にて解説した通り、法整備等が十分に整備されないまま実行されてきました。

昨年末に開通したヴィエンチャン―ワンビエン間のラオス発となる高速道路は、中国企業による50年間のコンセッション事業であり、BOT(Build Operate Transfer)方式によるインフラプロジェクトとなっています。また、医療分野においては、「早期診断・治療による疾病予防」という国が掲げる目標を達成するために、国営の製薬会社と民間企業との連携が重要であるとしている一方で、保健省副大臣は、医療保健分野における、PPP事業の法的な枠組みや立て付けが明確でないため、PPP事業の推進のための法整備の拡充が必要だと述べています。

以上のように、ラオスの新聞や経済ニュース等では、最近、PPPという言葉を目にすることが多くなっており、ラオス政府は、ラオス国内の資金のみでの対応が難しい分野やラオス国内の高度な人材が乏しい分野において、積極的に(外国企業を含む)民間企業との連携を推進すること推奨しています。

2015年頃から検討が始まったPPP法ですが、ようやく2021年1月13日に官報に掲載、掲載後15日後に「官民連携等に関する首相令(以下、「首相令」)」として施行される予定となっています。2020年6月28日付「ラオスPPP法草案の概要について」では、国会審議前の草案の概要を説明致しましたが、大枠の内容については特に大きな変更はありませんでしたが、今回、PPP事業の定義、政府の方針及びPPP事業の承認プロセスについての新たな規定が確認できましたので、それらの点についてご紹介します。

 

  • 1. PPPの定義
  • 定義については、草案と比較すると、対象となる分野について一部修正がありました。首相令第2条によれば、PPP事業とは、「一定の期間において、PPP契約のもと実施される政府と民間の連携事業、又は、民間が政府のプロジェクト[1]に全投資する事業(民間による直接投資[2])をいう。例えば、新規建設プロジェクト、インフラ整備、公共サービス関連事業、その他、観光、農業、エネルギー、鉱山等の開発事業」と定義しており、今回、具体的な事業内容が追加されており、ラオス政府のPPP事業における具体的な重点分野や産業が明らかになったといえます。

 

  • 2. PPP事業に関する政府の方針 (4)
  • 草案には政府の方針は示されていませんでしたが、以下の通り、PPP事業を推進するために、PPP事業に対する恩典付与の可能性について言及しています。政府は、連携する国内外の民間企業を積極的に支援する方針としており、例えば、関税、税金、労働力、土地使用権、資金源、条件や環境の整備等についても、特別な措置を講じる可能性があると規定しています。

 

  • 3. PPP事業の承認機関について
  • 草案には記載はありませんでしたが、案件別による監督・承認機関が定められています。下記に記載されている案件は、一例となっており、これら以外の案件については、既存の法令等と鑑みて、最終的な監督承認機関が決定されますが、承認に関する一定の基準を示したことは評価できるといえます。

 

1)国会の承認が必要な案件(第28条)

  • 事業規模が3億米ドルを超える案件
  • 政府の出資額が200億キープ(約200万米ドル)以上
  • 原子力発電所の建設案件
  • 国の保護林及び保全林に影響する案件
  • 自然環境に大きな影響を与える案件(自然の水循環経路への影響、500家族以上の住民移転、1万ha以上の土地コンセッション事業など)
  • 特別な措置が必要な案件

 

2)県レベルの国民議会の決議が必要な案件(第28条)

  • 政府の出資額が200億キープ以下の案件
  • 100ha以下の荒廃林地に影響する案件
  • 1事業につき30~200haの不毛林地に影響する案件
  • 150ha以下の荒廃林地を最大30年間、リース又はコンセッションする案件
  • 自然環境に影響する案件

 

3)政府が承認する案件(第28条)

  • 政府が出資しない案件
  • 国の保護林及び保全林に影響しない案件
  • 自然環境に大きな影響を与えない案件及び500家族以下の住民移転など
  • 事業規模が3億米ドルを超えない案件
  •  

[1] 自然資源、政府の資産及び利権を使用した既存のインフラ開発や公共サービスの提供又は新規開発プロジェクト(Green field投資)

[2] 案件ごとに法令の規定に従い、政府または国民議会の承認または県議会の合意のもと、プロジェクトの経済・技術的実施可能性評価調査結果に従い、政府のプロジェクト開発において、民間セクターが投資の全責任を持つかたちで参入し、政府から支援を受ける投資形態。

 

 

以 上

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)