改正ベトナム労働法におけるセクシャルハラスメントに関する事項の細則について

2021年02月09日(火)

改正ベトナム労働法におけるセクシャルハラスメントに関する事項の細則についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

改正ベトナム労働法におけるセクシャルハラスメントに関する事項の細則について

 

<改正ベトナム労働法におけるセクシャルハラスメントに関する事項の細則>

2021 年2 月4 日
One Asia Lawyers ベトナム事務所

【政令145 号によるセクシャルハラスメントに関する規定の補足】

 2021 年1 月1 より、改正労働法(Law No.45/2019/QH14)が施行されました。改正内容は多
岐にわたりますが、そのうち、実務上注目されているのが、改正労働法において新たにセクシ
ャルハラスメントに関する規定が設けられていることです。
 旧法においては単にセクシャルハラスメントを禁止することが規定されていただけであると
ころ、改正労働法においては、使用者がセクシャルハラスメントの防止方法を作成し、実施す
ることや就業規則へセクシャルハラスメントの防止や違反時の手続などについて記載すること
が求められるなど、具体的に対応が要求されることとなっています。しかし、改正労働法それ
自体の規定は漠としており、実際にどのような対応を行えばよいのかが不明確でした。
 上記について、2021 年2 月1 日に改正労働法の細則であるDecree No.145/2020/ND-CP(以
下「政令145 号」という)が施行されており、この中に、セクシャルハラスメントの防止措置等
について補足する規定が追記されています。
 本ニュースレターでは、政令145 号に記載されたセクシャルハラスメントに関する補足内容を
紹介いたします。

1 職場におけるセクシャルハラスメントの定義・具体的行為

 改正労働法は、職場におけるセクシャルハラスメントを禁止しています。そして、「職場」と
は、使用者との合意又は業務分担に従って労働者が実際に働くあらゆる場所と定義し、「セクシ
ャルハラスメント」とは、他者に対する性的な性質を有する行為であって、その他者が望まず、
承認しないものをいう、と定義しています(改正労働法3 条9 項)。
 政令145 号84 条は、改正労働法3 条9 項に関連して、上記定義の補足やセクシャルハラスメ
ントに該当する行為を列挙しています。
 以下、図表1-1 においてその概要をまとめていますのでご参照ください。

 【図表1-1 政令145 号による労働法3 条9 項の補足】

セクシャル

ハラスメント

【定義の補足】

・業務に関連する何らかの利益と性的関係との交換を提案、要求、暗示、脅迫、強制すること

・上記のような交換を目的としない場合であって、職場環境を不快かつ不穏にし、セクハラを受けた者の肉体、精神、業務効率や生活に損害を惹起し得る、性的な性質を有する行為

(政令145号84条1項)

 

【セクシャルハラスメントに該当する行為の列挙】

a)行動、身振り、性的な身体接触、作用、または性的暗示を含む身体的行為

b)言語によるセクハラには、性的な内容や性的暗意を持つ直接の、電話または電子的手段を介した言葉を含む

c)言語によらないセクハラには、ボディランゲージ、性的または性的活動に関連する視覚的資料を直接または電子手段を介して表示、説明するものを含む

職場

【定義の補足】

使用者との合意又は業務分担に従って労働者が実際に働くあらゆる場所であり、社会活動、セミナー、トレーニングなどの業務に関連する場所や空間、正式な出張、食事、電話での会話、電子手段による応対、使用者が手配した住居から職場へ、またはその逆の往来手段、使用者が提供する住居、および使用者が規定したその他の場所を含む

 

2 就業規則への記載事項

 改正労働法において、使用者は、就業規則において職場のセクシャルハラスメントの予防、
防止、セクシャルハラスメントがあった際の処分フローなどを規定しなければなりません(改
正労働法118 条2 項d))。
 改正案成立時は、具体的にどのような内容を定めればよいか不明確であったところ、政令145
号85 条によれば、上記就業規則に記載すべき内容には、以下、図表1-2 に定めるものを含める
こととなります。
 したがって、改正労働法に沿った就業規則の改訂作業の際には、以下の内容が含まれている
かを確認する必要があります。

 【図表1-2 就業規則に記載すべき内容】

セクシャルハラスメントの

予防、防止にかかる事項

a)職場におけるセクハラ行為を厳禁すること

b)業務と職場の性質、特徴に合致した、職場におけるセクハラ行為について、詳細かつ具体的に規定すること

c)苦情や告発、苦情や告発および関連する規定を解決する責任、期限、手順、手続きを含む、職場におけるセクハラ行為に対する内部処理の責任、期限、手順、手続き

d)違反行為の性質と度合いに応じた、セクハラ行為者または虚偽の告発を行った者に対する懲戒処分の形式

dd)被害者に対する損害賠償と是正措置

セクシャルハラスメントがあった

(そのおそれがある)場合の

処分・手続に関する事項

a)迅速、適時であること

b)被害者、苦情・告発をした者およびそれを受けた者の秘密、名誉、信頼、人格および安全を保護すること


3 セクシャルハラスメントに関する使用者及び労働者の義務

 改正労働法において、使用者は、セクシャルハラスメントの防止方法を作成・実施しなけれ
ばなりません(改正労働法6 条2 項d))。
 政令145 号86 条は、以下、図表1-3 記載のとおり、当該義務の内容について補足しており、
あわせて労働者及び社内労働組合の義務と責務についても規定しています。

 【図表1-3 セクシャルハラスメントに関する使用者・労働者の義務及び社内労働組合の責務】

使用者の義務

a)職場におけるセクシャルハラスメントの防止、対策に関する法令を実行し、その実行を監督すること

b)労働者に対する、職場におけるセクシャルハラスメントの防止、対策に関する法令、規定の宣伝と普及教育の実施

c)職場におけるセクシャルハラスメント行為について苦情や告発が生じた場合、速やかに阻止、処理し被害者、苦情・告発をした者、それを受けた者の秘密、名誉、信頼、人格安全を保護する対策をとること

労働者の義務

a)職場におけるセクシャルハラスメントの防止、対策に関する規定を遵守すること

b)セクシャルハラスメントのない職場環境の構築に参加すること。

c)職場におけるセクシャルハラスメント行為の阻止と告発。

社内労働組合の責務

a)職場におけるセクシャルハラスメントの防止、対策に関する規定の策定、実行、実行の監督に参加すること

b)セクシャルハラスメントを受けた労働者、セクシャルハラスメント行為があったとして苦情・告発を受けている労働者に情報提供し、助言し、代表すること

c)職場におけるセクシャルハラスメントの防止、対策に関する規定の宣伝、普及、訓練を行うこと


以 上
〈注記〉
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