バングラデシュ、パキスタン、ネパール、スリランカのPPP法制について

2021年02月09日(火)

バングラデシュ、パキスタン、ネパール、スリランカのPPP法制についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

南アジアにおけるPPP法制について

 

 

バングラデシュ、パキスタン、ネパール、スリランカのPPP法制について

2021年2月9日

One Asia Lawyers

南アジアプラクティスチーム

 

世界において巨大なインフラニーズが存在する中、世界銀行のPrivate Participation in Infrastructure (PPI) Databaseによれば[1]、2005年頃からPublic Private Partnership(以下、「PPP」)が増加しており、特に、南アジアにおける案件が活発となっています。もちろん、傾向として、財政基盤が脆弱であり、慢性的な財政赤字と対外債務が膨張していたり、また、予算制度が十分に機能していなかったり、行政当局の縦割行政が著しく政府内での見解が異なったりするようなケースが散見されますが、①外資を含めた民間による資金投下が必須であること、②脆弱な制度上の問題が生じていることを鑑み、南アジアにおいては、外資を活用したPPPによるインフラ整備投資への期待から、制度整備が急激に進んでいます。今後、さらに成長が見込まれる南アジアのPPP分野における事業展開の可能性を踏まえて、今回はバングラデシュ、パキスタン、ネパール、スリランカのPPP法制について解説します。

        バングラデシュのPPP法制について

バングラデシュ政府は、「ビジョン2021」を戦略ペーパーとして作成し、PPPを通じたインフラ整備を最優先課題の一つとしています。政府は、民間投資を持続的に誘致するための環境を整備するため、2004年、バングラデシュプライベート・セクター・インフラ・ガイドライン(PSIG)を発行し、2009年6月には、PPPに関する「PPP-Public Private Partnershipによる投資イニシアティブ活性化」を発表、そして「官民パートナーシップのための政策と戦略」が2010年に公表されています。それらに加えて、複数のセクターにおけるPPP投資を強化するために明確な規制および手続き上のガイドラインが制定され、首相府が直轄するPPP事務局(PPPO)が設立されています。PPPOにより、各セクターの手続きとガイドラインに関する文書が、定期的に公表されています。そして、ついに2015年9月16日にバングラデシュ初のPPP法が成立しました。

PPP法は、全49条から構成されています。第9条では、PPPOの権限および責任が詳細に規定されており、政策、規制、ガイドライン策定の責任を負っています。また投資家の手続き上の負担軽減を目的として、関連文書の作成を簡略化するためのサンプル文書を作成し提供することもその義務となっています。パートナーの選定、プロジェクト入札、契約調印、インセンティブ等の提供や海外での研修、セミナー、学習ツアーを手配する義務も明記されています。また、PPP法13-18条では、PPPプロジェクトの選定と承認に関して規定されており、第17条に従って、投資家に対してインセンティブを付与することができると規定されています。ただし、本規定自体は非常に簡潔な内容に留まるため、具体的な手続きに関しては、今後の細則等の発表が待たれます。

また、PPP法では、民間事業者の選定方法(第19条)、当事者間の合意に際するプロジェクト会社設立の必要性(第22条)、汚職および利益相反(第24条および第25条)に関する規定を定めており、汚職および利益相反の申し立てが生じた場合は、バングラデシュの調達法や汚職防止よりに対応されることが明記されています。また、第26条2項に基づき、法的関係、リスク配分、両当事者の権利および義務は、プロジェクト契約に準拠するとされ、第26条3項は、契約期間、保険、準拠法等のプロジェクト契約に含める必要のある規定が明示されています。

        パキスタンのPPP法制について

2億人強の人口を抱えるパキスタンにおいては、膨大なインフラ需要が存在しています。実際に、1990年初頭から道路、高速道路、バス等の交通インフラ、通信、空港、病院、水力発電等のプロジェクトについて、Public Private Partnership(以下、「PPP」)が活用されています。パキスタンにおけるPPP政策は、2007年に承認され、2010年にPublic Private Partnership Policyが閣議決定されました。その後、2017年3月31日にPublic Private Partnership Authority Act(PPPA法)が成立しています。同法では、PPPプロジェクト実施に際して、迅速性と透明性の確保、インフラ投資の推進、規制緩和等が規定されています。なお、州レベルにおいてもPPP規則が制定されています。

また執行監視機関として、財務省傘下のインフラプロジェクトユニット内に、Infrastructure Project Development Facility(以下、「IPDF」)というPPPユニットが存在し、PPPプロジェクトの誘致、推進、監視機能を担っていましたが、2017年に解散し、PPPA法第25条に基づき、Public Private Partnership Authority(以下、「PPPA」)として、より大きな権限を与えられています(PPPA法第2章以下)。

同法において、公共部門はインフラサービスのニーズを特定し、国、州、地方の各部門に特化した政策を策定し、それらを監督し、PPPアジェンダを提供することになっています。他方、民間部門の投資家は、プロジェクトを特定し、構想・精査した上で実行し(PPPA法第13条2項)、入札書類やプロジェクト提案書を理事会の承認のために提出する(PPPA法第13条3項)等を担っています。投資家は、PPPAの承認後、PPP契約に基づいてプロジェクトを実施する必要があります。また、PPP契約については、第4章において記載必須事項が定められており、紛争解決規定については、当事者間の合意により自由に設定可能となっています(PPPA法第18条)。

なお、会計年度終了後、120日以内に、PPPAに対して、PPP契約の履行状況、進捗状況等を記載した年次報告書を提出する必要があるので、留意が必要です(PPPA法第28条)。

3     ネパールのPPP法制について

ネパールにおいては、特に1990年初頭から水資源を活用した水力発電等のインフラプロジェクトと電力輸出が国家的産業となっており、ネパール政府は民間投資を活用したプロジェクトのさらなる発展を期待しています。また、近年においては、水力発電や国際送電に加えて、道路、空港、市内公共交通整備プロジェクト等が進んでいます。

このような背景を踏まえ、1992年に水力発電、電力外国投資移転法(Hydropower Policy Electric Act, Foreign Investment & Technology Transer Act、2017年改正)、1999年に道路分野に関するBOT政策(BOT Ploicy on Road Sector)、2001年水力発電政策(Hydropower Development Policy)、公共インフラ、2001年BOT政策(Public Infrastructure Build Operate and Transfer Policy)、2003年民間インフラ投資に関する条例(Private Investment in Infrastructure Build and Operate Ordinance)、2006年インフラ整備・運営民間資金法(Private Financing in Build and Operation of infrastructure Act, BOOT Act)、民間投資法(Private Investments in Infrastructure Act)、2011年投資委員会法(Investment Board Act)、2018年電力規制委員会法(Electricity Regulation Commission Act)等が整備されています。

特に、2015年に閣議決定されたPublic Private Partnership Policy(以下、「PPP政策」)は、PPP契約に関する明確な規制枠組みとガイドラインの必要性を提示しています。また、ネパール財務省は、既存のインフラ整備・運営民間資金法に代わるPPP法案を作成し、2019年3月27日に遂にPPP法(Public Private Partnership Act)が成立。さらに2020年にPPP規則(Public-Private Partnership and Investment Regulations)が成立しています。

PPP法によれば、第2章において、PPPプロジェクトに関する実施監査委員会、その傘下のPPPユニット、投資ユニット、専門家ユニット等の機能、選任方法、等が明確に規定されています。また、第3章においては、PPPの種類(BT、BOT、BOOT、BTO、LOT、LBOT等)等、投資の承認実施手続き等について具体的に規定しています。さらに、第5章では、PPP契約の記載内容、実施や監視内容について規定しています。第6章では、投資家保護、恩典、用地や施設利用等について、規定がなされています。

       スリランカのPPP法制について 

 スリランカにおいては、膨大なインフラ需要がありますが、Public Private Partnership (以下、「PPP」)に関する法令は存在していません。直近では、2016年にスリランカ投資委員会(BOI)傘下のインフラ投資事務局内に、PPPユニットが設置され、PPPに関する取り組みを促進、調整する機能を有しています。

また、スリランカ政府は成長戦略において、PPPを推進する意思表示をし、国内インフラへの国内外の民間投資を奨励しています。

実際に、民間投資家による携帯電話サービス、無線ローカル線システム、公衆電話ネットワークなどの電気通信サービス分野では、すでに事例が存在しています。また、水力発電システムから大規模発電所までの電力セクターへの投資や港湾セクター等への投資も行われており、インフラ投資の機会は、高速道路、公共交通、環境分野など多岐に渡って拡充してきています。今後、PPP 投資アプローチが広く利用されることが期待されるプロジェクトは、運輸、航空、酪農、観光、飲料水供給などといわれており、民間投資奨励のための規制緩和等が検討されています。

PPPプロジェクトは、Build-Own-Operate(BOO)、Build-Own-Transfer(BOT)、またはBuild-Own-Operate-Transfer(BOOT)等のスキームで実施されていることが多くなっています。

ただし、具体的なPPP政策や包括的な法律は制定されておらず、現時点に1998年に発布された民間セクター・インフラ・プロジェクトに関するガイドラインにおいて手続き等が少し触れられている程度であり、こちらが現在のPPPガイドラインに代わるものとして利用されており、個別の条件等は基本的には政府との交渉や契約によると考えられます。

当ガイドラインによれば、インフラプロジェクトに関連する調達プロセスは、民間事業者からの提案依頼書の発行から開始されます。もしくは、民間投資家がスリランカ政府の公募型プロジェクトに提案書を提出することも可能となっています。当該提案書は、インフラプロジェクトを所轄する委員会で評価、審査され、インフラプロジェクトの必要性を検討し、必要性が認められた場合において、その後、関係政府機関によって、公式に入札プロセスに入ることになり、スリランカの公共調達委員会が発行している公共調達マニュアル(Public Procurement Manual)に従って、手続きを進める必要があります。

 

以 上

[1]  https://ppi.worldbank.org/en/ppi

 

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