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シンガポールにおける認証不要条約によるアポスティーユによる公文書認証手続の簡易化について

2021年02月24日(水)

シンガポールにおける認証不要条約によるアポスティーユによる公文書認証手続の簡易化についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

認証不要条約によるアポスティーユによる公文書認証手続の簡易化について

 

シンガポール
認証不要条約によるアポスティーユによる公文書認証手続の簡易化

2021年2月
One Asia Lawyers Group代表
シンガポール法・日本法・アメリカNY州法弁護士
栗田 哲郎 

1 条約の加盟前

 シンガポールは、外国公文書の認証を不要とする条約(The Hague Convention of 5 October 1961 Abolishing the Requirement of Legislation for Foreign Public Documents (Apostille Convention))(認証不要条約)に加盟していなかった[1]

 このため、シンガポール政府機関から発行された書類の原本(公文書:例えば、結婚証明書、出生証明書、現地政府認定教育機関の証明書など)は、①シンガポール法曹協会(Singapore Academy of Law)および②在シンガポールの各国大使館(日本の場合、在シンガポール日本大使館)によって認証されてからはじめて、日本等のシンガポール国外での使用が可能であった。シンガポール政府が発行していない書類(私文書)でも、認証が必要な書類については、まず①公証人(Notary Public)の認証が必要であり、その公証人での認証後に、②シンガポール法曹協会(Singapore Academy of Law)の認証を得たのちに、更に③在シンガポールの各国の大使館の認証を得る必要があった。

 他方、日本国内で発行された公文書・私文書(公文書の翻訳した文書も含む)を、シンガポール国内の企業・団体・政府に提出をする際には、①日本の外務省で公印確認を受けた後、②在日シンガポール大使館(東京都港区六本木)での領事認証が求められることとなっていた[2]

2 条約の加盟

 今般、2021年1月19日、シンガポールの法務省(Ministry of Laws)は、上記の認証不要条約に加盟したことを発表した[3]

 これによって、シンガポール政府機関から発行された公文書を、日本等の認証不要条約加盟国に提出する場合には、①シンガポール法曹協会が発行するアポスティーユと呼ばれる付箋をもって、公印確認・領事認証に代えられることとなり、公印確認及び領事認証の手続が不要となった。すなわち、他国で取得する許認可手続、シンガポール法人が絡むクロスボーダーのM&Aなどの取引において、シンガポールの公文書を提出する必要がある場合には、シンガポール外務省や提出先国の在シンガポール大使館での認証手続が必要であり非常に煩雑であったが、今後は①シンガポール法曹協会のアポスティーユのみ(私文書で認証が必要な場合は①公証人(Notary Public)の認証と②シンガポール法曹協会のみ)で足りることとなり、時間・コストの軽減が期待できる。

 更に、既に本条約の加盟国(日本を含む)であるシンガポール以外の国の公文書を、シンガポールにおいて使用する場面においても、同様にアポスティーユのみで足りることとなる。具体的には、日本の公文書をシンガポールに提出する必要がある場合においては、①日本外の外務省での認証のみで問題なく、②在日シンガポール大使館での領事認証手続は今後は省略可能になる。

 

[1] 2020年10月時点で、世界101か国が本条約の締約国となっているものの(日本は1970年に批准)、シンガポールは未加盟国であった。

[2] なお、シンガポール大使館の領事部においては、日本の外務省の公印確認を受けた書類に関して領事認証をするため、日本の外務省の公印確認を受けた書類とシンガポール領事部宛に現地での書類の提出先と使用目的を記載したカバーレターも提出する必要がある。

[3] 本条約の批准に必要な法案(Apostille Bill)は国会を通過し、2021年9月16日から本条約が発効する予定である。