フィリピン小売業に関する外資規制の改正について

2021年06月04日(金)

フィリピン小売業に関する外資規制の改正の最新情報についてニュースレターを発行しました。
PDF版は以下からご確認ください。

フィリピン小売業に関する外資規制の改正の最新情報(2021年6月)

 

フィリピン小売業に関する外資規制の改正の最新情報(2021年6月)

2021年6月
One Asia Lawyers Group代表
シンガポール法・日本法・アメリカNY州法弁護士
栗田 哲郎 

 2021年には、フィリピン経済がASEAN諸国の中で最悪のパフォーマンスを示すことが明らかになったため、ドゥテルテ政権はコロナウイルス規制に阻まれながらも国の経済を維持するために取り組んでいる。

 2021年4月には、ドゥテルテ大統領は、小売業自由化法(Retail Trade Liberalization Act of 2020)の改正案の事業分野における外資規制の緩和を早急に検討すべき指の指示がなされている。これは、同法が制定されることで、より多くの外国人投資家に経済が開放され、パンデミックによる不況からの回復につながることを期待してのことである。

 2021年5月には、フィリピン上院は、小売業自由化法の改正条項を関する上院法案(第1840号)を承認し、現在、上下両院の矛盾した条項を調整するために両院協議会議にかけられている。登録された法案がいつ完成し、大統領の承認を得るために送られるかのスケジュールについて確たる予想をすることは難しいものの、その緊急性を考慮すると、近いうちに法律として成立することが期待されている。

第1      小売自由化法の概要

(1)払込資本金などと外資による出資の可否

 小売業とは、一定の例外を除く、物品を公衆に直接販売する活動を行うものと幅広く定義されている。             

 そして、現状、小売自由化法においては、払込資本金額がUSD2,500,000(約2億6,000万円)未満の小売業は、外国資本による出資は不可能とされており、多額の資本金を出資しなければ、外資はフィリピンの小売業に進出することができないものとされている。

 そして、小売業の外資規制における外資企業とは、外国資本が少しでも入った段階で外資企業と認定されてしまうため、USD2,500,000 以未満の小売業の場合は、100%がフィリピン資本でなければならなかった。

 他方、払込資本額がUSD2,500,000以上の場合は、外資出資比率に関する制限は存在しない。このため、この金額を超えた場合は、現状でも、外国資本による100%出資も可能であった。

(2)外国投資家に求められる要件

  もっとも、外国資本は、既にフィリピン国外で小売業の実績がある大規模な事業者が想定されており、以下の要件を満たさなければならないこととされている。

 1.純資産がUSD200,000,000(約210億円)以上であること
 2.フィリピン国外においては5つ以上の店舗又はフランチャイズを有する、またUSD2,500,000ドル以上の資本を有する店舗を1つ以上有すること
 3.5年以上の小売業の実績があること
 4.フィリピン国民が小売業を行うことを認めている国から投資を行うものであること

 以上に加え、外国資本の出資を受けた小売業者は、仕入の30以上をフィリピン国内で調達することが求められたり(内国調達義務)、外資出資比率が80%を超える小売業者は、事業開始から(事業開始後に外資出資比率が80%を超えた場合は当該超過時からとする)8年以内に、その株式の30以上をフィリピン国内市場において公開しなければならない(上場義務)など、厳しい制限がかされており、2000年小売自由化法においては、外国資本が小売業を行うためには、厳しい制限が課されていた。

 

第2 小売自由化法の改正の最新情報

 今般、両院協議会において審議中承認済みの上院法案(第1840号)においては、フィリピンにおける小売業の外国投資をより容易にするために、条件が緩和されることが期待されている。

 上院法案(第1840号)の主なポイントは、以下のとおりである。

 ・外資が出資するために必要な払込資本金額の要件が、現行のUSD2,500,000からPHP50,000,000(約1憶1,500万円)に大幅に引き下げられる可能性がある。
 ・純資産がUSD200,000,000(約210億円)以上であることと、フィリピン国外においては5つ以上の店舗又はフランチャイズを有することと、5年以上の小売業の実績があることの要件はいずれも撤廃される見込みである。
 ・1つ以上の店舗の許した資本が、USD2,500,000ドル以上のからPHP25,000,000(約5,700万円)に大幅に引き下げられる可能性がある。
 ・外資系企業の場合、フィリピンから事業撤退する場合を除き、払込資本金をPHP50,000,000以上の金額で維持し続けなければならない。

 さらに、前稿にて紹介した、外国投資家に求められる特別要件である、株式公開義務、国内調達義務は、いずれも撤廃される見込みである。

 以上の通り、外国投資家がフィリピンの小売業の参入するハードルは相当に高いのが現状であった。この緩和が新法によって実現された場合は、フィリピンに投資を検討する外資企業・日本企業にとって追い風となる可能性が高いと言えよう。