外国投資(PMA)企業に100億ルピアの払込済資本金を義務付けるインドネシア投資調整委員会(BKPM)の新規則について

2021年06月21日(月)

外国投資(PMA)企業に100億ルピアの払込済資本金を義務付けるインドネシア投資調整委員会(BKPM)の新規則についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

外国投資(PMA)企業に100億ルピアの払込済資本金を義務付けるインドネシア投資調整委員会(BKPM)の新規則について

 

外国投PMA)企業に100ルピアの込済資本金を義務付けるインドネシア投資調整委会(BKPM)の新規則について

2021年6月
One Asia Lawyers Indonesia office
日本法弁護士
馬居 光二
インドネシア法弁護士
Prisilia Sitompul

1.最初に

インドネシア投資調整委員会(BKPM)は2021年6月、以下の新規制を公布致しました。

・統合リスクベースライセンスの電子システムに関する規制2021年第3号(BKPM規則20213)
・リスクベースのライセンスと投資施設のガイドラインと手続きに関する規則2021年第4号 (BKPM規則20214)
・リスクベースライセンスの監督のためのガイドラインと手順に関する規則2021年第5号(BKPM規則20215)

 本規則の目的は、2021年4月に施行されたリスクベースのビジネスライセンスの実施に関する政府規則2021年第5号を実施することです。

 なお、上記規則に基づいたリスクベースのビジネスライセンスが2021年6月2日からオンライン・シングル・サブミッション・システム(OSSシステム)に実装される予定でしたが、後述のように2021年7月2日に延期されております(BKPM回書2021年14号)。

本稿においては、インドネシアにおける上記の変更点について解説いたします。

2.主な変更点

(1)BKPM規則2021年3号

       本規則は、簡易、迅速、正確、透明性があり、説明責任を果たすことができるリスクベースのビジネスライセンスの実施を実現することを目的としております。

  BKPM規則2021年3号は、主にOSSシステムの機能と技術的側面に関する規定を定めております。

  また、下記のようにBKPM規則2021年4号及びBKPM規則2021年5号は、外国企業が投資する会社(PMA企業)によるインドネシアへの投資要件にいくつかの重要な変更を導入しています。

(2)BKPM規則2021年4号

 a. PMAの最低必要本金と払込資本金

 BKPM 規則2021年4号では、インドネシアの法令で特段の定めが規定されていない限り、PMA企業は少なくとも100ルピア(7700万円)の払込資本が必要である旨が規定されております(BKPM規則2021年4号第12条6、7項)。本規則発行前は25億ルピア(約1925万円)の払込資本のみが必要とされており、新規則ではおよそ4倍近くもの資本金が求められることになります。本規則にはこれが既存のPMAに遡って適用されるのかについて明記されておりません。一般的には、特段の明示がない以上いわゆる「グランドファザールール」にしたがって適用はされないと考えられますが、今後の運用を注視していく必要があります。

 上記払込資本金の要件は、特に新たなスタートアップ企業やグリーンフィールド投資(新たに法人を設立する形態の投資)を企図する投資家にとって極めて不利なものとなります。

 また、同規則では、インドネシア標準産業KBLI)の5桁のコドごとに土地建物を除いて100ルピア以上の投が必要である旨が規定されております(BKPM規則2021年4号第12条1、2項)。すなわち、複数の産業分類にわたるビジネスを行うためには、そのビジネスラインごとに100億ルピアを支払わなければならない可能性があり、更なる資本金の積み増しが求められることになります。こちらは本規則以前も規定されておりましが、以下のように同規則第12条3項において上記規定の例外が定められております。

 

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ビジネスセクター

最低投資額

卸売業
KBLIコードの最初の4桁ごとに、土地・建物以外を除いて100億ルピア(約7700万円)
飲食業
KBLIコードの最初の2桁ごとに、土地・建物を除いて100億ルピア
建設サービス(建設コンサルテーションサービス、建設施行サービス、または統合建設施行サービス)
KBLIコードの最初の4桁ごとに、1件のプロジェクトについて土地・建物を除いて100億ルピア
1つの生産ラインで異なる5桁コードのKBLIに分類される複数の異なる製品を生産する製造業
1つの生産ラインにおけるKBLIの5桁ごとに土地と建物を除いて100億ルピア以上
不動産業:
a.    建物全体や集合住宅への投資
土地と建物を含めて100億ルピア
b.    建物全体や集合住宅以外への投資
土地と建物を除いて100ルピア

 

 また、BKPM規則2021年4号第13条は、(a)駐在員事務所および(b)外国事業体に対して前述の最低投資額要件及び最低払込済資本金要件を免除しております。駐在員事務所及び外国事業体の定義は以下の通りです。

 a. 駐在員事務所:インドネシアの個人、外国籍の個人、またはインドネシア共和国の領土内で事務所設立の承認を得た外国人起業家の代表である事業体(BKPM規則2021年4号第9条3項)

 b. 外国事業体:インドネシア共和国の領土外で設立され、特定の分野で事業や活動を行っている外国の事業体(BKPM規則2021年4号第9条4項)。

 *上記外国事業体は少なくとも以下の構成要素からなると規定されております(BKPM規則2021年4号第9条11項、12項)。

 a. 外国のフランチャイザー
 b. 外国の先物取引業者
 c. 外国の民間企業の電子システムプロバイダー
 d. 恒久的な事業形態(石油および天然ガス部門で事業活動を行うために設立された駐在員事務所を含む)

 b. PMA企業の子会社がPMA企業に移行するための要件

 BKPM規則2021年4号の第 57条7項に基づき、国内投資(PMDN)会社としてのステータスを持つPMA企業の子会社は、OSSシステムを通じてデータを更新することにより、1年以内にそのステータスをPMA企業に変更しなければならないとされています。

 上記ステータス変更の結果、関連子会社が外国投資に対して閉鎖または制限されている活動を行っている場合にはその活動を直ちに中止する必要があります。

 c. ダイベストメントの要件

 BKPM規則2021年4号においてはPMA企業はBKPM規則2021年4号以前に発行された投資ライセンスに基づいて売却要件が要求されている場合、当該売却義務があることが再確認されております(BKPM規則2021年4号第14条)。

 ただし、BKPM規則2021年4号では、以下の条件を満たす場合、ダイベストメントの要件を免除することができます。

 a. 当該会社のインドネシアにおけるローカル株主が株式売却を必要としない場合(14条8項a)

 b. 株主が100%外国企業(個人)のPMA企業の場合で、インドネシア国内のいかなる者とも株式を売却する約束や合意をしていない場合(14条8項b)

 こちらのダイベストメント規定は2007年に制定された現行の投資法において撤廃されているため、それ以降に設立された会社には適用がございません。同法制定以前に設立された現地法人を所有する会社は上記株式の売却義務の適用がある可能性がありますので確認をすべきかと存じます。

(3)BKPM規則2021年5号

 BKPM規則2021年5号では、PMA企業がBKPMに投資活動報告書(Laporan Kegiatan Penanaman Modal (LKPM))を提出する旨が規定されております。報告書には、投資の実現に関する報告や、投資を実行する上で直面している問題等を含むものとされております。

 OSSシステムは、関連する政府機関(分野別の省庁や機関、地域政府、経済特区の管理者など)のシステムとも統合されていますので、このシステムを使って提出します。統合されたシステムでは、これまで各関連官庁に個別に提出していた報告手続きが簡素化されることが期待されております。

3.リスクベースのライセンスのOSSへの実装の延期

 PM規則に基づくOSSシステムのアップデートは2021年7月2日に延期されております。

 これにより、各事業者によるビジネスライセンスの申請は7月2日まで現行のOSSを通じて行われるとされております(回書5項bの1))。

 また、いまだコミットメントを達成していないビジネスライセンスを有する事業者は、6月25日までにOSSシステムにこれを提出し、6月30日までに有効なビジネスライセンスを取得するよう求められています(回書5項bの2))。

 上記の期限を過ぎてコミットメントの履行及び新規のビジネスライセンの申請をした場合には、政府規則2021年5号やBKPM規則2021年4号に規定されたリスクベースのビジネスライセンスに関する条項にしたがって処理されるとされております(回書5項bの3))。

4.最後に

 本BKPM規則は、本年3月に施行された大統領規則2021年10号で大幅に外資規制が緩和されたこととのバランスを取る趣旨で外国企業による投資へ一定の制限をかけるもの考えられます。インドネシア政府の外資融資促進への姿勢を否定するものではありませんが、これからインドネシア進出を検討する企業は上記の点を十分に検討する必要がございます。

 この点について、上記のようにインドネシアにおいては法令及び規則の実施も流動的となっております。現地法律事務所等と連携して各規則の実施状況を確認しつつ手続きを行うことが推奨されます。