シンガポール金融庁主催「グローバルCBDCチャレンジ」コンペのご紹介
シンガポール金融庁主催「グローバルCBDCチャレンジ」コンペのご紹介について報告いたします。
シンガポール金融庁主催「グローバルCBDCチャレンジ」コンペのご紹介
2021年7月13日
One Asia Lawyers シンガポール事務所
デジタル先進国シンガポールらしいユニークな取り組みをご紹介します。
先般エルサルバドルがビットコインを法定通貨に採用する一方で、世界の約90%の国が独自のデジタル通貨(CBDC)の発行を検討中で、昨年だけで世界の14%の国がCBDCのパイロット版をリリース。実際に、10月からバハマとカンボジアでCBDCの正式運用が開始されています。
シンガポールでも2016年から「プロジェクト・ウビン」 でCBDCの実証実験を重ね、同プロジェクトは2020年に完了し、今月、フランス中央銀行との間で、CBDCの国際決済の試験運用を成功させるなど念入りに準備を進めています。
そんな中、シンガポール金融庁(MAS)が面白いイベントを開催します。
それは、CBDCのリテール導入に立ちはだかる「12の課題」の解決策を世界中の民間企業から募集して、その中から3社の受賞者を決定する、名付けて「グローバルCBDCチャレンジ」というイベントです。
11月8日にシンガポールで開催予定の世界最大のフィンテックイベント「フィンテック・フェスティバル」でコンペを開催します。
MASが挙げる12の課題は、まさにCBDCの導入の必要性と問題点を端的に表しているものなので、以下に整理しています。
日系企業も応募できますので、我こそはというFinTechスタートアップは応募してみてはいかがでしょうか。
応募期限は、7月23日です。
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課題1(新機能vs包括性)
スマートフォン(その他の高価で複雑なハードウェア)の使用なく、基本的な送金以上の追加機能を組み込むことができるか。
課題2(セキュリティvsアクセシビリティ)
使いやすさを損なうことなく、高齢者、未成年者、障害者などの多様なニーズに対応する安全なシステムを構築できるか。
課題3(利用可能性vs紛争リスク)
インターネットに接続できない地域でのオフライン取引が可能か。二重支出や偽造を防いでオフラインでの支払いに関する紛争を最小化できるか。
課題4(回収可能vs匿名性)
ウォレット、カード、機器などの盗難、破損、紛失があった場合に、取引を適切に追跡し、損失を抑制し、紛失した資金の回収をサポートすることができるか。
課題5(シームレスな利用 vs コントロール)
銀行預金からCBDCへの多額かつ急激な資金流出のリスクを最小限に抑えつつ、CBDCの利用を可能な限りシームレスにできるか。より安価で高速なクロスボーダー決済に使用されることを可能にし、 かつ国家間の資本の流れを不安定にするリスクを軽減できるか。
課題6(個人情報保護 vs システム統合)
個人者の取引データを保護すると同時に、マネロン等ネットワーク上の不正行為を監視・検知・防止することができるか。
課題7(アクセス拡大 vs データ独占防止)
参加企業が決済データを利用して、ユーザーに金融サービスを提供することを可能にする一方で、データ独占による消費者への望ましくない影響を長期的に回避できるか。
課題8(共存 vs 統合の複雑性)
各国の決済システムなどの既存のものを活用しつつ、コストを抑え、市場の混乱を最小限に抑えられるか。異なる決済システムのユーザー間の支払いを、追加の仲介業者の介在、カスタマイズや統合を必要とすることなく処理できるか。
課題9(分散化 vs 説明責任)
単一障害点に対する耐障害性を高めるために分散化されたインフラに対して説明責任を明確にした安全で安定した持続可能なガバナンスモデルをどのように開発することができるか。
課題10(拡張性 vs 耐障害性)
運用性能やシステムの脆弱性などの面での追加負担なく、プログラマブルな機能を集中的に使用し、新しい機能を追加できる柔軟性と堅牢性を備えているか。
課題11(プライバシー保護 vs パフォーマンス)
高速応答や低遅延性、スケーラビリティを備えた高パフォーマンスを維持しながら、プライバシー保護機能を組み込むことができるか。
課題12(相互運用性 vs 標準化)
クロスボーダーと国内の両方で、より良く、安く、速い決済を可能にするために、CBDC以外のシステムやCBDC以外のデジタルマネーとも相互運用できるか。
<お問い合わせ先>
森 和孝
One Asia Lawyers パートナー弁護士(シンガポールオフィス)フィンテックチームヘッド
日本法弁護士、シンガポール外国法弁護士
Kazutaka.mori@oneasia.legal