ナイジェリアの投資規制と法制度について

2021年07月13日(火)

ナイジェリアの投資規制と法制度について報告いたします。

ナイジェリアの投資規制と法制度について

 

 

 

ナイジェリアの投資規制と法制度について


                                    2021年7月15日

One Asia Lawyers

南アジアプラクティスチーム

インフラ輸出リーガルプラクティスチーム

0 はじめに

コロナ渦においても、多くの日系企業様より海外におけるインフラプロジェクトのご相談を継続的に受けており、アジア地域を越えてアフリカ地域へのご相談が増えております。また、アジア地域(主にインド)からアフリカ地域へのご相談も徐々に増加しており、インフラ輸出リーガルプラクティスチームと南アジアプラクティスチームが共同して、アフリカに関する情報発信を行うことに致しました。今後、アジア地域からアフリカ地域に関心のある日系企業や投資家様向けに継続的にアフリカ地域のニュースレターを発行して参ります。今回は、ナイジュリアに焦点をあてて、各種投資規制と法制度を紹介して参ります。

 

<ナイジュリアの概要>

国名

ナイジェリア連邦共和国

首都

アブジャ(Abuja)

ISO国名コード

NGA

面積

92.4万平方キロメートル

人口

2億96万人(2019年)[1]

言語

英語(公用語)、各民族語(ハウサ語、ヨルバ語、イボ語等)

民族

ハウサ、ヨルバ、イボ等

宗教

イスラム教(北部)、キリスト教(南東部)、伝統宗教(全土)

政治体制

政体:連邦共和制(大統領制)

国家元首:ムハンマド・ブハリ(H. E. Mr. Muhammadu Buhari)大統領(2019年5月就任、任期4年)

政府

(1)首相 なし

(2)外相 ジオフリー・オンエアマ外務大臣

議会:二院制(国民議会、上院)

通貨

ナイラ(Naira, NGN)

 

1. 地理

ナイジェリアは約92.4万平方キロメートル(日本の2.5倍)の国土面積を有し、ベナン、ニジェール、チャド、カメルーンと国境を接し、南は大西洋のギニア湾に面する西アフリカの国である。南部の熱帯雨林、中央部の広大なサバンナ、北部の乾燥したステップ、東部の高原地帯と幅広い気候帯に位置し、高い農業ポテンシャルを有すると言われる。また、後述のとおりアフリカ一の産油国でもある。

歴史的には、英国保護領であったナイジェリア北部と南部が1914年に合併してできた国土を継承しており、現在は36の州および連邦首都地区(FCT)から構成されている。

首都は、1991年にラゴスから遷都されており、現在のアブジャは1970年代から計画都市として整備が行われた。アブジャは地理的にナイジェリア中央に位置し、政治の中心であり政府組織や多くの大使館がある一方、ラゴスはナイジェリア南西端のベニン湾岸に位置し、工業・商業・文化の中心地であり、経済特区もラゴスに集中している[2]。もっとも、ラゴス・アブジャ間の国内線は通常時であれば1日20便前後の運行がある。

 

2.     人口

ナイジェリアの人口は2億人を超え、アフリカでは最大、世界でも第7位の人口規模を誇る。生産年齢人口は全人口の60.6%と、豊富な労働力を有する。
南部にはキリスト教徒が、北部にはイスラム教徒が多い。ハウサ人、ヨルバ人、イボ人が三大民族とされる、ナイジェリアには300以上の民族がいると言われ、地域、民族、宗教間の複雑な対立や軋轢による課題を抱えている。人口動態(1,000人)

1990

1995

2000

2005

2010

2015

2019

95,212

107,948

122,284

138,865

158,503

181,137

200,964

 

3.           国家・政治体制

1960年に英国から独立し、1963年に共和制に移行したナイジェリアの内政は、頻発する軍事クーデター(1993年までに7回)やビアフラ内戦(Biafran War、1967~1970年。イボ人を主体とした分離独立宣言を発端とし、石油利権等もからみ国際社会が干渉することとなった内戦)により、不安定な政情が続いた。
1999年の大統領選挙でオバサンジョ元国家元首(国民民主党PDP候補)が就任し、文民政府を発足、民政への移行を果たした。2003年の大統領選挙でも再立候補しており、再選されている。
なお、2期目立候補の際、それまで制憲議会で検討されていた大統領の「地域輪番制」に関しても議論がなされたが、現職大統領の再選を禁止する法規制がなかったため、連続2期目の大統領職に就任した。
この間、国民融和や国軍の脱政治化など政治・経済改革を推進したものの、反政府組織による武装闘争の頻発等、依然として治安は不安定な状態が続いていた。スンニ派過激組織ボコ・ハラムの活動が本格化したのもこの時期である。

2015年の大統領選では、最大野党であった全進歩会議(APC)へと政権交代が起こり、ブハリ大統領が就任、2019年に再選している。ボコ・ハラムやIS系のテロ組織対策を含む治安対策、汚職対策、石油依存からの経済多角化等の経済対策を優先課題として位置付けている。しかしながら、トランスペアレンシー・インターナショナルによる2020年の腐敗認識指数[3]では、ナイジェリアは180か国中149位である。2016年の136位から後退しており、改善に向け課題は多いと言わざるをえず、ビジネス進出においてはリスクを認識した上で必要な対策を充分に講じることが肝要となる。

 

各州の人口と、国家歳入に占める割合は以下のとおり。

 

State

州都

人口(2017年)[4]

国家歳入寄与率(2020年)[5]

Abia

Umuahia

3,714,024

1.1%

Adamawa

Yola

4,230,946

0.6%

Akwa Ibom

Uyo

5,451,278

2.4%

Anambra

Awka

5,506,577

2.1%

Bauchi

Bauchi

6,500,468

1.0%

Bayelsa

Yenagoa

2,268,582

0.9%

Benue

Makurdi

5,716,538

0.8%

Borno

Maiduguri

5,827,153

0.9%

Cross River

Calabar

3,850,352

1.2%

Delta

Asaba

5,635,041

4.6%

Ebonyi

Abakaliki

2,869,320

1.0%

Edo

Benin

4,220,455

2.1%

Ekiti

Ado-Ekiti

3,255,436

0.7%

Enugu

Enugu

4,391,700

1.8%

Gombe

Gombe

3,240,675

0.7%

Imo

Owerri

5,381,708

1.3%

Jigawa

Dutse

5,804,169

0.7%

Kaduna

Kaduna

8,216,037

3.9%

Kano

Kano

13,007,402

2.4%

Katsina

Katsina

7,796,844

0.9%

Kebbi

Birnin Kebbi

4,419,195

1.1%

Kogi

Lokoja

4,453,797

1.3%

Kwara

Ilorin

3,178,837

1.5%

Lagos

Ikeja

12,487,836

32.1%

Nasarawa

Lafia

2,512,286

1.0%

Niger

Minna

5,524,931

0.8%

Ogun

Abeokuta

5,189,990

3.9%

Ondo

Akure

4, 651, 129

1.9%

Osun

Osogbo

4,682,057

1.5%

Oyo

Ibadan

7,796,670

2.9%

Plateau

Jos

4,185,428

1.5%

Rivers

Port Harcourt

7,262,756

9.0%

Sokoto

Sokoto

4,976,087

0.9%

Taraba

Jalingo

3,054,208

0.6%

Yobe

Damaturu

3,274,478

0.6%

Zamfara

Gusau

4,492,846

1.4%

Federal Capital Territory

Abuja

3,421,848

7.0%

 

4.           法制度

ナイジェリアの法制度は、植民地時代の影響による英国法、ナイジェリアの立法府が制定した法律、慣習法(Customary Law)、イスラム法(Sharia、シャリーア法)で構成される。1999年ナイジェリア憲法が最高法規である。

司法機関の最上位はナイジェリア最高裁判所であり、下位裁判所として、控訴裁判所(Court of Appeal)、高等裁判所、治安判事を含む第一審裁判所がある。

なお、国際仲裁に関しては、後述するNIPC法により、紛争解決手続きのために国際仲裁機関を利用することができると定められている(同法26条)。

また、ナイジェリアは投資紛争解決国際センター(ICSID)条約の批准国であるため、紛争解決の際に同センターでの仲裁手続きを行った場合は、同センターの仲裁判断が、ナイジェリア最高裁判所の判決と同等の効力を持ち、裁判所への不服申立はできないと定められている。

また、憲法により、シャリーア法控訴裁判所(a Sharia Court of Appeal)または慣習法控訴裁判所(Customary Court of Appeal)を各州が必要に応じ設置できると規定されている(275条、280条)。

 

ビジネスに関連する主要な法規制には以下が挙げられる。

  • 2020年会社及び関連事項に関する法律(Companies and Allied Matters Act, CAMA、以下「会社法」)[6]
  • ナイジェリア投資促進委員会法(Nigerian Investment Promotion Commission Act, NIPC)法[7]
  • 外国人土地取得法(Acquisition of Lands by Aliens Law)[8]
  • 法人所得税法 (Companies Income Tax Act)

 

中でも、ナイジェリアでのビジネス実施において必須となる法人設立について規定する会社法は、2020年に30年ぶりに改正されており、外国投資の項で後述するとおり、ナイジェリアへのビジネス進出や法人の運営を容易にする方針で改定がなされている。

 

5.           通貨・経済状況

通貨はナイラ(Naira)、1USドル=409.67(2021年6月現在)[9]。
ナイジェリアの2019年のGDPは約4,481億ドルとアフリカ最大であり、サブサハラアフリカ全体のGDP(1.8兆ドル)[10]の25%を占める経済規模を有する。ただし、人口も最大であるため、1人当たりGDPは2019年に2,230ドルであり、いまだ世界銀行の低中所得国(Lower middle income)に分類されている。(なお、アフリカ第2の経済大国(2019年の名目GDP約3,500憶ドル)南アフリカの1人当たりGDPは6,000ドル前後で、高中所得国に分類されている。)

また、ナイジェリアは、2019年にアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)協定に署名している。AfCFTAは、アフリカ域内での貿易活性化等を目的とし、AfCFTA下では、センシティブ品目など一部例外を除き、加盟国間での物品、サービス、投資に対する関税が段階的に撤廃され、貿易ルールも共通化される。コロナ禍により運用開始が延期されていたが、2021年1月から開始された。ナイジェリアで製造や販売を行う場合は、アフリカ域内で原材料等を安価に調達することや、域内で市場を拡大できる可能性が大きくなる。

 

主な経済指標と推移は以下のとおり。

 

指標

2015

2016

2017

2018

2019

名目GDP(100万USドル)[11]

 486,803

 404,650

 375,746

 397,190

 448,120

1人当たりGDP(USドル)[12]

 2,687

 2,176

 1,969

 2,028

 2,230

GDP成長率[13]

2.7%

-1.6%

0.8%

1.9%

2.2%

 

6.           産業

アフリカ最大の石油生産国であり、主要産業は農業、情報通信サービス(Telecommunications & Information Services)原油・天然ガス。そのうち、農業がGDPの4分の1を占め、原油は7%前後である。GDPの11%を占める情報通信サービス産業は近年著しく成長しており、2020年には14.7%の伸びを記録している[14]。他方、総輸出額の約7割が原油であり[15]、外貨獲得手段の多角化は課題である。

 

主な産業

(詳細分類から主な産業を抽出)

名目GDP

2020年、ナイラ)

実質GDP成長率(2020年)

GDP寄与率

農林水産業

37,241,609

2.2%

24.4%

卸・小売り

21,106,384

△8.5%

13.9%

製造業

19,539,550

△2.8%

12.8%

情報通信サービス

16,808,637

12.9%

11.0%

建設

11,639,482

△7.5%

7.6%

鉱業(原油含む)

10,851,766

△8.5%

7.1%

不動産

8,678,134

△9.2&

5.7%

金融・保険

4,737,826

9.4%

3.1%

全体

152,324,071

△1.9%

100%

 

7.           外国投資

ナイジェリアには、2019年時点で47社の日系企業が拠点を設けている[16]。世界銀行の「Doing Business 2020」[17]では世界190カ国中131位、サブサハラアフリカ48カ国中では17位であり、ビジネス環境が整っているとは言い難い。しかしながら、2019年146位から順位を上げており、特に会社設立手続きに要する時間の短縮、オンラインプラットフォームの改善、建設許可の取得手続きの簡素化といった取り組みがなされている[18]。また、2020年の会社法改正により、外国投資家にとってビジネス進出の環境は徐々に改善されることが望まれる。

 

  • 進出形態

ナイジェリアの会社法上、ナイジェリア国内での事業を企図する外国企業(every foreign company having the intention of carrying on business in Nigeria)は、特定の国家プロジェクト実施等の場合を除き、必ずナイジェリア内国法人を設立する必要がある(法78条1項)。当該法人が設立されない限り、事業を行うこと、事業所(a place of business)を置くこと、(法人設立関連の文書受領目的を除く)手続きや郵送等のための住所を持つことは認められない。

そのため、本社のある外国籍のまま、ナイジェリアに「支店」や「駐在員事務所」を置くといった選択肢はなく、すべての企業はまず法人を設立することとなる。

同時に、会社法の定めを遵守し、ナイジェリア現地企業同様の法人運営が求められる。

法人の登録は商事委員会(Corporate Affairs Commission, CAC)に対し行う。

 

会社の形態は以下の6種類が規定されている。

 

  • 有限責任会社(Company Limited by Shares:Ltd)
  • 有限責任保証会社(Company Limited by Guarantee:Ltd/Gte)
  • 無限責任会社(Unlimited Liability Company)
  • パートナーシップ(Partnership)
  • 個人事業/商号(Business Names)
  • インコーポレーテッド・トラスティ(Incorporated Trustee)

 

なお、①、②、③は、非公開(Private)公開(Public)のいずれの形態もとることができる。

非公開会社と公開会社の主な要件は以下のとおり。

 

 

非公開会社

公開会社

発起人(株主)の人数

1名以上(法18条2項)

※2020年の改正により最低人数が2名から1名に緩和

2名以上(法18条1項)

株主人数の上限

50名未満(22条3項)

上限なし

株式の譲渡・売却

制限あり(22条2項)

以下は認められない。

  (i)   全株主の同意なく、会社資産の過半数を売却すること

 (ii)   他の株主に対する株式の買取の提案をせずに、第三者へ株式を売却すること

(iii)   第三者への株式の過半数を売却すること(株式を買い取る者が既存株主の持ち分を全て同じ条件で買い取ると申し出た場合を除く)

制限なし

最低株式資本額( amount of the

minimum issued share capital)(法27条2項(a))

10万ナイラ以上

※なお、2020年の改正により従来の「授権資本( authorized share capital)」[19]最低額の規制は廃止された。

※ただし、外国人割当て(Expatriate Quota)取得の際に株式資本1,000万ナイラが必要となる

200万ナイラ以上

※授権資本最低額の規制も左記同様に廃止

※左記同様

取締役(271条1項)

2名以上

(小規模会社は1名以上)

2名以上

ただし、3名以上の独立取締役の任命が必要(法275条)

監査役(Auditor)(法401条1項)

必須(1名以上)

※小規模会社は、年次会計監査が免除の特例あり(法402条)

必須(1名以上)

秘書役(Secretary)(法330条1項)

必須(1名)

※小規模会社は免除の特例あり

必須(1名)

株主総会の開催場所(法240条)

テレビ会議等の電子的会議開催も可能(同条2項)

※2020年の改正により容認

ナイジェリア国内での物理的開催

株主総会の書面決議(法259条)

可能

不可

 

また、非公開会社のうち、以下の条件を満たす会社は、「小規模会社(Small Company)」と定義され、コンプライアンス要件が緩和される(法394条)。ただし、株主が全員ナイジェリア人である必要があるため、活用する日系企業は限定的となる。

 

小規模会社の適格要件

ü  非公開会社であること

ü  売上高が1億2,000万ナイラ以下であること

ü  純資産が6,000万ナイラ以下であること

ü  株主に外国人(alien)がいないこと

ü  株主に政府系機関の任命者がいないこと

ü  取締役が株式の過半数を保有していること

 

小規模会社に対するコンプライアンス要件の緩和

ü  取締役の人数の下限を1名に緩和(法271条1項)

ü  年次株主総会開催の免除(法237条1項)

ü  秘書役任命義務の免除(法330条1項)

ü  少ない開示項目での財務諸表(modified financial statements)の提出(法393条1項)

ü  会計監査の免除(法402条1項)

 

会社の各形態の概要は以下の通り。

 

  • 有限責任会社(法21条1項(a)、27条1項(f)等)

株主が負担する債務はその保有株式のうち払込み前の資本に限られる形態。非公開の有限責任株式会社が、外国投資家に最も利用される。

 

  • 有限責任保証会社(法21条1項(b)、26条等)

主に非営利組織で利用される形態。会社の収入および財産が会社の株主に支払われたり、譲渡されたりせず、事業推進のためにのみ使用される場合は、有限責任会社ではなく、有限責任保証会社として登録する。

 

  • 無限責任会社(法21条1項(c)、27条1項(f)等)

株主が負担する債務が無制限である形態。無限責任会社の場合は、財務諸表を当局に提出する義務がなく(法388条4項)、また、公告する必要がない(398条)。

 

  • パートナーシップ(法746条~810条)

2020年の改正で導入された形態であり、Limited Liability Partnership(LLP)およびLimited Partnership(LP)の2種類がある。パートナーシップの形態は、これまでラゴス州でのみ登録が認められていたものの、連邦法やその他の州法の下では独立した組織体として見なされていなかったため、この改正により外国投資家による参入に際し、より柔軟な選択肢が増えたと言える。

LLPは、2名以上のパートナーにより組織体として登録ができる(法748条1項)。パートナーの国籍要件は明言されておらず、最低1名がナイジェリア居住者であればよいと規定されている(法749条1項)。

LPは、パートナー数が20名以下に限定され(法795条2項)、会社の全債務に対し責任を負う「ジェネラル・パートナー」を最低1名、その他の「リミテッド・パートナー」を最低1名置く必要がある(同条3項)。

 

  • 個人事業/商号(法814条)

個人(individual)であっても、個人事業の商号として登録することができる。商号は一人または複数の個人による保有が可能であり、最低資本金の定めはない。

 

  • インコーポレーテッド・トラスティ(法823条)

文化・宗教・教育・慈善活動等の目的で設立する団体や協会等の組織に活用される形態。2名以上の管財人(Trustee)を任命する。

 

なお、上記以外にも2020年の改正では以下のとおり変更がなされており、これから新規投資を検討する投資家にとっても、既に法人を設立している投資家にとっても、参入や経営上のメリットの大きい改正となったと言える。

 

  • 社印(Common Seal)の作成義務の撤廃(法98条)
  • 認証(authentication)が必要な文書への電子署名(electronic signature)の認容(法101条)
  • オンラインでの譲渡証書による株式譲渡(electronic instrument of transfer)の認容(法175条1項)
  • 登記当局に登録する書類(Any document required to be filed with the Commission for registration)のオンライン提出の認容(法860条)

 

  • 投資規制

会社法に基づき設立された法人は、ナイジェリア投資促進委員会法(Nigerian Investment Promotion Commission Act、以下「NIPC法」)[20]の規定により、100%外国資本であっても、ほとんどの分野においてナイジェリアの会社と同様にビジネスを行うことができる(NIPC法17条)。ただし、NIPC法において、以下の業種は、外国資本の有無に関わらず「ネガティブリスト」として投資が禁止される(法31条)。

なお、CACに加え、NIPCへも登録が必要である[21]

 

投資が一律禁止される業種

 (a)   武器・弾薬等の製造業

 (b)   麻薬および向精神薬の製造・販売業

 (c)   軍事・準軍事的な衣類および携行品の製造(警察、税関、出入国管理、刑務所業務に関する衣類および携行品を含む)

 (d)   その他連邦評議会(The Executive Council of The Federation)が随時決定する業種

 

出資比率については、NIPC法は制限を設けていないものの、分野ごとの規制により、外資の出資規制が定められている。

 

外国人による投資が認められない業種

 (a)   民間警備会社(Private Guard Companies)

 (b)   国内海上輸送業(Domestic Coastal Carriage Transport)

 (c)   法律サービス業(Legal Services)

 

外国人による出資比率が規制される主な業種[22]

石油・ガス

入札において、ナイジェリア人が51%以上の株式を保有する会社が優先される

技術コンサルティング

外資比率は45%まで

広告

外資比率は25%まで

国内海上輸送サービス(Domestic Coastal Carriage Services)

外資比率は40%まで(100%の現地資本が免除されたナイジェリア輸送会社のみ)

放送(Broadcasting)

外資比率は49%まで

 

  • 外国人労働許可

ナイジェリアにおいて設立した法人で外国人を雇用(日本本社からの駐在員派遣等)する場合は、外国人雇用枠を確保する必要がある。これは「Expatriate Quota(外国人割当)」と呼ばれ、内務省(Ministry of Interior)に対し発給を申請する。

ナイジェリアは政策としてナイジェリア人の雇用を奨励しており、そのため、内務省は、外国人割当の申請を受けても、当該ポジションに就くことができるナイジェリア人が存在すると判断した場合、外国人雇用を承認しないという絶対的な裁量権を有する。承認されない場合、当該ポジションに現地のスタッフを雇用することになるため、申請にあたっては、当該ポジションが外国人である絶対的な必要性を示す必要がある。

また、外国人割当を取得するために、1,000万ナイラ(約270万円)の最低資本金が必要となることが一般的である。これは、会社法27条の定める最低株式資本額(非公開会社であれば10万ナイラ)とは別であり、外国人雇用枠1人分につき1,000万ナイラ、4人分の場合は約2,000万ナイラなどと求められる。ただし、資本額に対する雇用枠の数についても、内務省の裁量により判断されることとなる。また、産業分野によってはさらに要件が厳しくなる場合もあり、例えば石油・ガス産業は、下級・中級幹部職(junior and intermediate cadres)にはナイジェリア人のみの雇用が義務付けられ、管理職のうち5%のみに外国人の雇用が認められる。

 

  • 優遇制度

ナイジェリアには、外資系企業のみに対する租税減免等の優遇措置はないものの、国の戦略的分野や指定地域への投資を促進するため、内国企業と同じ条件のもと、各種優遇措置の枠組みが設けられている。

主な制度は以下のとおり。

 

  • パイオニア・ステータス優遇制度

産業開発(所得税軽減)法(Industrial Development (Income Tax Relief) Act)に基づき、パイオニア産業・商品として認定された会社は、3年間の法人所得税免税(最長2年間延長可能)を受けられる[23]。この「パイオニア・ステータス・インセンティブ」制度は、99もの業種[24]が対象産業として指定されており、幅広い企業による活用が期待できる。

パイオニア産業は、A)農業、B)鉱業、C)製造、D)電力・ガス、E)廃棄物管理、F)建設、G)e-コマース、H)情報・通信、I)写真撮影、J)金融、K)管理サービスに分類され、各産業に対象となる業種(合計で99)と商品がリストされている。

 

  • 利益の非課税措置

法人所得税法 (Companies Income Tax Act、以下「CITA」)は、利益(profits)が非課税となる要件を定めている(23 条1項)。非課税となる主な利益は以下のとおり。

  • 製造業の小規模会社が操業開始後5年間に受け取る配当金
  • 輸出による収入がナイジェリアに送還され、原材料、工場、設備、予備部品の購入にのみ使用される場合の、輸出品に関する会社の利益
  • 輸出用製品の製造に必要なインプットのみを供給している会社の利益
  • 輸出加工区または自由貿易区の中で設立された会社の利益

 

  • 研究開発費の控除

CITAに基づき、商業化を目的とした研究開発事業費に対し、20%の投資税控除が認められる(26条)。

 

  • 農村地域への投資に対する優遇措置

CITAに基づき、会社が取引や事業を目的として、地方において電気、水道、舗装道路、電話等の設備投資行った場合、当該支出額の一定割合が「農村投資手当(Rural investment allowance)」として認められる(同法34条)。

当該措置の適用対象となる設備投資は、公共施設・設備から20km以上離れた場所であることが条件となる。

半径20㎞以内に以下の設備がない地域で、上記設備投資を行った場合の控除率は以下のとおり。

なお、控除は、適用となる設備投資が完了した年の利益に対して行わる。

 

  • 電気なし: 50%
  • 水道なし: 30%
  • 舗装道路なし: 15%
  • 電話なし: 5%
  • いずれの設備もなし: 100%

 

  • 産業分野別の優遇措置

農業・農業関連、鉱物資源、製造業、観光・ホスピタリティ、石油・ガスの分野に関しては、セクター個別の各種優遇制度が存在している。

例えば観光・ホスピタリティ産業では、5年以内に観光関連施設の建設・拡張に投資されることを条件に、交換可能通貨による所得の25%が課税免除となる(CITA37条)。

また、石油・ガス産業では、石油会社が支払うロイヤルティに対し、原油等の産出地域と価格に応じ二段階でのロイヤルティの率を規定している[25]。すなわち、ベースライン・ロイヤルティとして、水深200メートル以上での産出は10%のロイヤルティが適用され、フロンティアおよび内陸部での産出は軽減税率として7.5%が適用となる。ベースラインに加え、1バレルあたりの価格に基づき、以下のとおりロイヤルティが適用される。

 

20ドル未満:0%

20~60ドル:2.5%

61~100ドル:4%

101~150ドル:8%

151ドル以上:10%

 

  • 輸出加工区(EPZ)優遇措置

ナイジェリア輸出加工区庁法(Nigerian Export Processing Zones Authority Act、以下「NEPZA法」)に基づき、EPZへの進出企業は、法人所得税・関税等のすべての税金が免除される(8条)。また、輸出のための原材料・設備輸入にかかる関税も免除となる(12条)。さらに、前述の外国人雇用割当についても、EPZ進出企業においては規制適用外となり、必要な雇用許可を申請することで、外国人を雇用することができる(18条1項h、20条)。現在運営されているEPZは10州で25区ほどあり、うち13区がラゴスに設置されている[26]

 

  • 州独自の投資優遇措置

外国投資に関する規制や、為替管理、法人設立等の規制はすべて連邦政府が管轄するが、いくつかの州では、州独自の投資促進機関やユニットを設置し、投資家が州内に投資を行うためワンストップ窓口の提供や、関係機関との連携を行う。

ラゴスでは、The Office of the Sustainable Development Goals & Investment(通称Lagos Global)を設置し、住宅、小売り、ICT、電力、運送、ヘルス、観光、環境の8分野を投資奨励分野と位置付けており、例えば住宅分野では、PPP参加者への法定費用の補助や、土地の権利書のファスト・トラックでの発行といったインセンティブを提供している[27]

[1] 国連世界人口推計2019年 https://population.un.org/wpp/Download/Standard/Population/

[2] ナイジェリア輸出加工区庁 (Nigerian Export Processing Zones Authority) https://www.nepza.gov.ng/index.php/free-zone/active-free-zones

[3] https://www.transparency.org/en/cpi/2020/index/nga

[4] Nigerian Investment Promotion Commission “Book of States 2020” : https://nipc.gov.ng/wp-content/uploads/2021/04/Book-of-States-final.pdf?

[5] ナイジェリア統計局 “Internally Generated Revenue At State Level (Q4 & Full Year 2020)” https://nigerianstat.gov.ng/elibrary

ナイジェリアの2020年度国家歳入約1.3兆ナイラ(約3.5億円)に対する、各州内歳入が占める割合

[6] https://www.cac.gov.ng/wp-content/uploads/2020/12/CAMA-NOTE-BOOK-FULL-VERSION.pdf

[7] https://investmentpolicy.unctad.org/investment-laws/laws/234/nigeria-nigerian-investment-promotion-commission-act

[8] http://extwprlegs1.fao.org/docs/pdf/nig150979.pdf

[9] ナイジェリア中央銀行 https://www.cbn.gov.ng/rates/ExchRateByCurrency.asp

[10] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.CD?locations=ZG&most_recent_value_desc=true

[11] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.CD?locations=NG

[12] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.PCAP.CD?locations=NG

[13] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.KD.ZG?locations=NG

[14] ナイジェリア国家統計局 Nigerian Gross Domestic Product Report (Q1 2021)

[15] ナイジェリア国家統計局 Foreign Trade in Goods Statistics (Q1 2021)

[16] 外務省 https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page22_003410.html

[17] 世界銀行 https://www.doingbusiness.org/en/reports/global-reports/doing-business-2020

[18] 世界銀行 “Doing Business 2020: Nigeria” https://www.doingbusiness.org/en/data/exploreeconomies/nigeria

[19] 「authorised share capital(授権資本)」は、定款に記載された、会社が発行することのできる株式の総数であり、廃止された1990年会社法では、その最低額が、非公開会社は1万ナイラ、公開会社は50万ナイラと規定されていた(旧法27条2項a)。授権資本のうち、会社の設立時には25%以上を発行する必要があった(同項b)。言い換えると、会社は将来の割り当てのため、未発行の株式を保持することができていた。なお、会社設立以降は、取締役会の決議により(株主総会の決議を経ずに)授権資本の範囲で株式を発行することができた(旧法117条)。

[20] https://investmentpolicy.unctad.org/investment-laws/laws/234/nigeria-nigerian-investment-promotion-commission-act

[21] NIPCワンストップ投資センターにおいて、会社設立に関連する手続きを行える。https://www.nipc.gov.ng/

[22] 世界銀行 “2019 Investment Policy and Regulatory Review: Nigeria” https://openknowledge.worldbank.org/bitstream/handle/10986/33596/Nigeria-2019-Investment-Policy-and-Regulatory-Review.pdf?sequence=1&isAllowed=y

[23] https://www.nipc.gov.ng/pioneer-status-incentive/

[24] 2017年8月付で通知されたパイオニア産業リストhttps://www.nipc.gov.ng/ViewerJS/#../wp-content/uploads/2019/01/Gazetted-List-of-Pioneer-Industries-and-Products.pdf

[25] ロイヤルティの率は、以前は産出する海域の水深に応じて設定されていた(オンショア:20%、水深1,000メートル超:0%等)が、2019年の法改正(深海・内陸沿岸部生産分与契約法(Deep Offshore and Inland Basin Production Sharing Contract (Amendment) Act)により、価格と生産量に基づく二段階方式のロイヤルティ制度に変わっている。

[26] https://www.nepza.gov.ng/index.php/free-zone/active-free-zones

[27] https://lagosglobal.org/incentives

以上 

〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化にともない、本資料は変更となる可能性がございます。
・ 本資料の使用によって生じたいかなる損害についても当社は責任を負いません。

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
info@oneasia.legal