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タイにおけるVAT 課税に関する歳入法の改正について

2021年08月24日(火)

タイにおけるVAT 課税に関する歳入法の改正について報告いたします。

VAT 課税に関する歳入法の改正について

 

 

 

タイにおけるVAT 課税に関する歳入法の改正について

 

2021年8月24日

One Asia Lawyersタイ事務所

 

1.はじめに

2021年2月9日、タイにおいて、海外から提供される電子サービスからの付加価値税(以下、「VAT」という)の徴収を規定した歳入法B.E.2481(1938)の改正を目的とした改正歳入法(No.53)B.E.2564(2021)(以下「法第53号」という)が成立した。2021年9月1日に施行される予定である。

以下、その改正点を詳述する。結論を先に述べると、改正によって、海外の「電子サービス」(下記の定義規定参照)をタイ国内で当該サービスを利用する個人消費者などの非VAT登録者に提供する事業者(以下「対象事業者」という)は、VAT登録の義務を負い、(仕入VAT及び売上VAT間の相殺を行わずに)VATを支払わなければならず、タックスインボイスの発行も禁止されることとなる。そして、「電子プラットフォーム」(下記の定義規定参照)運営者は、対象事業者がそのプラットフォームを通じて上記サービスの提供を行う場合、その対象事業者に代わってVAT支払い義務を負い、その義務と責任はその対象事業者と同等のものとされる。

2.納税関連文書等について

改正により、作成及び提出等の対象となる納税関連文書が明示的に拡大された。

これらの文書等については、改正前は「電子取引法で定める規則に準じて」作成及び提出することと定められていたのに対し、改正後は「省令で定める規則及び手続きに従って」(当該省令は、まだ発布されていない。)作成及び提出することと定められた。

これにより、改正後は、これらの文書等を改正前と異なる規則にしたがって、電子的方法によって作成及び提出することができるものとした。

 

第3条の16〔改正前〕

納税に関連する報告又は文書の提出、及びその他の歳入法に基づく文書の作成は歳入局長が定めた規則、手順、及び条件に従って電子的方法により行うことができる。この場合、電子取引法で定める規則に準じなければならない。

第3条の16〔改正後〕

召喚状、納税通知書、帳票、タックスインボイス、報告書、証拠書類、その他歳入法に基づいて入手、発行、使用しなければならない書簡、歳入局が納税者やその他の者と連絡を取るために使用しなければならない書類、証拠書類、書簡、又は納税者やその他の者が歳入局と連絡を取るために使用しなければならない書類、証拠書類、書簡は、省令で定める規則及び手順に従って電子的手段を用いて作成することができる。

第1項の省令は、電子取引に関する法律に準拠した文書の作成、提出、受領、保管のための関連規則及び手続きを定めるものとする。

 

3.定義

  • 「商品」について

改正により「商品」の定義から、インターネット又はその他の電子ネットワークを介して配信される無形の財産が明示的に排除された。

 

第77/1条9項〔改正前〕

「商品」とは、販売、使用、その他の目的の有無にかかわらず、価値を有し、所有することが可能な有形又は無形の財産を指し、すべての輸入品を含む。

第77/1条9項〔改正後〕

「商品」とは、販売、使用、その他の目的の有無にかかわらず、価値を有し、所有することが可能な有形又は無形の財産を指し、すべての輸入品を含む。ただし、インターネット又はその他の電子ネットワークを介して配信される無形の財産を除く。

 

  • 「電子サービス」及び「電子プラットフォーム」について

改正により、新たに「電子サービス」及び「電子プラットフォーム」が定義された。

 

〔改正前〕

規定なし

第77/1条10/1項〔改正後〕

「電子サービス」とはインターネット又はその他の電子ネットワークを介して配信される無形の財産の提供を含むサービスで、基本的に自動化され、かつ、情報技術を使用せずには提供することが不可能なサービスを指す。

第77/1条10/2項〔改正後〕

「電子プラットフォーム」とは、多くのサービス提供者がサービス受領者に電子サービスを提供するために使用するマーケット、チャンネル、その他の手続きを指す。

 

4.VAT課税について

  • 課税範囲と電子プラットフォームに課される義務について

改正により、従来の条項(以下「第1項」という)に加えて、第2項及び第3項が加えられた。

第2項によれば、対象事業者は、第1項の適用がなく、仕入VATを控除せずに売上VATを計算し、VATを支払わなければならない。そして確定申告書類を提出し、第83条にしたがって納税しなければならない。

第3項によれば、対象事業者が電子プラットフォームを通じて電子サービスを提供する場合に、電子プラットフォーム運営者はその対象事業者に代わってVATを支払う義務を負う。電子プラットフォーム運営者の義務と責任は、対象事業者と同等とされる。

 

第82/13条〔改正前〕

タイ国外の事業者が、第85/3項に基づくVAT登録を行わずに、一時的にタイ国内で物品の販売又はサービスの提供を含む事業を行っている場合、又は事業者がタイ国外からサービスを提供しそのサービスがタイ国内で使用される場合、事業者はVATを支払う義務がある。事業者は、納税義務が発生した時点で、第三部に基づく課税ベースと第80条又は第80/1条に基づく課税率から算出したVATの支払いを行わなければならない。

第82/13条〔改正後〕

第1項

タイ国外の事業者が、第85/3項に基づくVAT登録を行わずに、一時的にタイ国内で物品の販売又はサービスの提供を含む事業を行っている場合、又は事業者がタイ国外からサービスを提供しそのサービスがタイ国内で使用される場合、事業者はVATを支払う義務がある。事業者は、納税義務が発生した時点で、第三部に基づく課税ベースと第80条又は第80/1条に基づく課税率から算出したVATの支払いを行わなければならない。

第2項

第1項は、事業者が海外から電子サービスを提供しそのサービスをVAT非登録者がタイ国内で利用する場合には適用されない。この場合、当該事業者は仕入VATを控除せずに売上VATを計算することでVATを支払う必要がある。当該事業者は、確定申告書を提出し、第83条に従って納税しなければならない。

第3項

第2項の事業者が、電子プラットフォームを通じてサービスの提供、サービスの対価の受領、サービスの配信、及びその他歳入局長が定める行為からなる連続したプロセスで、電子サービスを提供する場合、当該電子プラットフォーム運営者は、各事業者のサービス提供内容を分類することなく、すべての事業者に代わってVATの支払義務を負う。また、当該電子プラットフォーム運営者は、第2項の事業者と同等の義務及び責任を負うものとする。

 

  • VAT支払い義務を有する主体について

改正により、第83/6条(2)に但書きを加え、(a)(b)同上

 

第83/6条〔改正前〕

商品やサービスの支払いが以下の事業者に対して行われた場合、支払いを行う者は事業者が支払い義務を有するVATを送金する義務がある。

(2)   海外からサービスを提供している事業者で、当該サービスがタイ国内で利用されている場合。

第83/6条〔改正後〕

商品やサービスの支払いが以下の事業者に対して行われた場合、支払いを行う者は事業者が支払い義務を有するVATを送金する義務がある。

(2)   海外からサービスを提供している事業者で、当該サービスがタイ国内で利用されている場合。ただし、以下の事業者に限る。

(a) 電子サービスをVAT登録者に提供する事業者

(b) 非電子サービスを全消費者に提供する事業者

 

  • VAT登録が不要とされる事業者について

改正により、第85/3条(2)に但書きを加え、(a)(b)の条項を加えたことによって、例外的事業者のみが、VAT登録が不要とされた。これにより、例外的事業者でない対象事業者は、VAT登録義務を負うことが確認された。

 

第85/3条〔改正前〕

以下の事業者はVAT登録を不要とする。

(2)   海外からサービスを提供している事業者で、当該サービスがタイ国内で利用されている場合。

第85/3条〔改正後〕

以下の事業者はVAT登録を不要とする。

(2)   海外からサービスを提供している事業者で、当該サービスがタイ国内で利用されている場合。ただし、以下の事業者に限る。

(a) 電子サービスをVAT登録者に提供する事業者

(b) 非電子サービスを全消費者に提供する事業者

 

5.タックスインボイス発行が禁止される事業者について

改正により、対象事業者はタックスインボイスの発行が禁止された。

 

第86/1条(1/1)〔改正前〕

規定なし

第86/1条(1/1)〔改正後〕

(1/1) 海外から電子サービスを提供している事業者で、当該サービスがタイ国内で非VAT登録者により利用されている場合。

 

6.おわりに

2021年6月10日に発行されたバンコク・ポスト紙の報道によれば、財務省財政事務局(Fiscal Policy Office)のクラヤ・タンティミット局長が、タイの法律では、タイに恒久的施設(PE)を持たない企業(以下、「オンライン企業」という)に法人税を課すことは認められていないため、現在、財政省では、タイでサービスを提供するオンライン企業に法人所得税を課す方法を検討していると発言した。その発言は、G7財務大臣協定における、各国が低税率を維持することによって多国籍企業の誘致競争を止めるべき旨の定めを受けたものである。このことから、今後、海外に拠点を有するオンライン企業に法人税を課すことに関する法改正が成立する可能性があるため、今後の動向を注視していく必要がある。

以上 

〈注記〉
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yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)