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日本からベトナムへの越境 EC 法制②

2021年10月14日(木)

日本からベトナムへの越境 EC 法制②についてニュースレターを発行いたしました。 PDF版は以下からご確認ください。

日本からベトナムへの越境 EC 法制②

 

<日本からベトナムへの越境 EC 法制②>

2021 年 10 月 14 日
One Asia Lawyers ベトナム事務所

前号に引き続き、以下において日本からベトナムへの越境EC法制についてご紹介いたします。

目次

1 ベトナムにおける越境ECの法的位置づけ

2 ECPFサービスに関する投資条件

(以上、前号)

3 商工省への登録

4 プラットフォームに関するその他の条件

(以上、本号)

5 日本の販売者に課せられる条件と商品損害賠償責任

6 代金の支払い方法

7 E-ロジスティック輸入税

3 商工省への登録
CPFサービスを提供する事業者は、ECPFサービスの開始前に、サービスに使用するECPFを商工省へ登録する必要があります(政令52号54条4項)。登録の際、ECPFサービスにおいて使用するEC契約のひな形、ECPF運営規則およびビジネスプランを作成し、当局へ提出する必要があります。以下それぞれについて概要を紹介します。

なお、ここで想定しているビジネスモデルは、取引契約が売主と買主間で直接締結される形式(純粋にECPFのみを提供する形式)ではなく、売主⇔ECPFサービスを提供する事業者⇔買主という形で、取引契約が締結されるビジネスモデルです。純粋にECPFのみを提供するビジネスモデルについては、別途の法規制がございます点ご留意ください。

(1)EC契約ひな形の作成

ECPFにおいて使用される、日本の販売者とECPFサービス事業者との間の取引契約およびベトナムでの購入者とECPFサービス事業者との間の取引契約のひな形を作成し、産業貿易省に登録する必要があります(電子商取引サイトの管理に関する通達No.47/2014/TT-BCT(以下「通達47号」といいます)第5条14項)。

(2)ECPF運営規則の作成

ECPFサービスを提供する事業者は、主に以下の内容を含む運営規則を作成し、ECPF上に表示する必要があります(政令52号第38条および通達47号第14条4項)。

政令52号第38条 ECPFの運営に関する規定

  1. ECPFの運営規則は、ウェブサイトのトップページに表示しなければならない。
  2. ECPFの運営規則は、以下の内容を含まなければならない。

a/ ECPFサービスを提供する事業者の権利および義務

b/ ECPFサービス利用者の権利および義務

c/ ECPFで行われる可能性のある取引の種類ごとに、取引プロセスを説明すること

d/ ECPFサービスを提供する事業者がECPF上で法律違反行為を発見した場合、運営・対応能力についてレビューすること

dd/ ECPF上の取引における当事者の権利と義務

e/ ECPF上の取引におけるECPFサービスを提供する事業者の責任制限

g/ ECPF上の情報の安全性と管理に関する規定

h/ ECPF上の取引に関連する当事者間の苦情および紛争を解決方法

i/ 政令52号第69条に定めるECPFサービス利用者の個人情報保護に関する取り扱い規則

k/ ECPF上の消費者の利益を侵害する行為への対応措置

l/ ECPFの運営規則違反行為への対応方針

  1. 前項に定めるいずれかの内容に変更があった場合、当該変更の適用の5日前までに、ECPFサービスを提供する事業者は、ECPFサービスのすべての利用者に対して、その旨の通知を行う

(3)ビジネスプランの作成

ECPFサービスを提供する事業者は、ECPFについて(i) サービスの提供、オンライン・オフラインでのプロモーションおよびマーケティングを含む運営組織モデルおよび(ii) ECサービスを提供する事業者およびサービス利用者の権利と責任について規定するビジネスプランを作成し、産業貿易省に登録する必要があります(政令52号第54条3項および通達47号第14条)。

以上のとおり、EC契約ひな形、ECPF運営規則、およびビジネスプランの作成に関して法令にしたがったフォーマットで作成した申請書をECPFサービスを提供する事業者が産業貿易省に対して提出した場合、産業貿易省は当該ECPFサービスについて、オンラインプラットフォーム登録証明書を付与します。ECPFサービスを提供する事業者は、付与されたオンラインプラットフォーム登録証明証をECPFのトップページに表示しなければなりません。

4 プラットフォームに関するその他の条件

(1)ユーザーの個人情報保護

ECPFサービスを提供する事業者は、以下の内容を含む消費者の個人情報保護に関する取り扱い規則(以下「プライバシーポリシー」といいます)を作成する必要があります(政令52号第69条)。プライバシーポリシーは、ECPF上に表示する必要があります。

(i) 情報取得の目的

(ii) 情報利用の範囲

(iii) 情報保持期間

(iv) 情報へのアクセス権者の範囲

(v) 自己の情報取得および利用に関する問い合わせ方法、情報取得者・管理者の住所

(vi) 情報保有者がオンラインで自己の情報にアクセスし、情報を修正する方法およびそのためのツールの提供

また、ECPFサービスを提供する事業者は、ECPF上のオンライン機能、電子メール、メッセージその他の両者が合意した方法で個人情報を取得し、利用する前に、消費者の事前の同意を得たうえで、合意した目的の範囲で情報を利用しなければなりません(政令52号第69条)。

(2)ECPFにおける取引が制限される商品および提供が禁止されるサービス

ECPFにおいては、取引が制限される商品および提供が禁止されるサービスが定められているため(通達47号第30条)、そういった商品・サービスがECPF上に取引されていないかを確認する必要があります。なお、取引が制限される商品の例は、以下のとおりです。

(i) 銃・弾丸、武器、戦闘用装備

(ii) タバコ、葉巻

(iii) アルコール飲料

(iv) 希少な野生動物種

(3)サイバースペースにおける児童[1]保護

「ASEANにおけるあらゆる形態のオンライン搾取・虐待からの子どもの保護に関する声明」に基づき、2019年より、ベトナムはサイバースペースにおける児童保護の取り組みを推進しています。このほか、サイバースペースにおける児童保護に関する規程がサイバーセキュリティ法No.24/2018/QH14第29条にも規定されており、サイバースペース全般、特にECPFサービスを提供する事業者は、そのシステムやサービス上の情報が児童に有害でなく、児童の権利を侵害していないことを確認し、児童に有害な情報や児童の権利を侵害している情報・コンテンツをブロック・削除する責任があります。

例えば、ECPFサービスを提供する事業者および日本の販売者は、ECPF上に卑猥な画像・動画や、暴力的な画像・動画を表示したり、それらを使用したりすることが禁止されています。

(4)ECPFサービスを提供する事業者のサービス利用者に対する責任

ECPFサービスを提供する事業者がサービス利用者、つまり日本の販売者とベトナムの購入者に対して負う基本的な責任は以下のとおりです(政令第52号第4条)。

(i) ECPFにおける取引が制限される商品および提供が禁止されるサービスが取引されることを防止し、ECPF上から排除すること

(ii) 偽造品、違法に輸入された商品、知的財産権その他法令に違反している商品の情報を発見した場合、またはそのような情報に関する真正な報告を受けた場合、ECPF上から排除すること

(iii) ECPFサービスを利用する販売者が、当該商品・サービスに関して必要な許認可を取得していることを証する書面の提出を求める。ただし、本条件が日本の販売者にも適用されるかは、法的根拠が無く、不明確です。この点についても、現在進められている越境電子商取引に関するルール策定によって明確化されることを期待するほかありません。

なお、ECPFサービスを提供する事業者は、ECPF上に日本の販売者が掲載した商品またはサービスに関する情報および日本の販売者によるベトナムの購入者に対する違反行為についての責任を負いません(政令52号第37条2項)。

 

(③へ続く)

 

[1] 児童とは、16歳未満のものをいいます(児童法No.102/2016/QH13第1条)。