シンガポールにおける定年退職及び再雇用法についての改正法案について
シンガポールにおける定年退職及び再雇用法についての改正法案についてニュースレターを発行いたしました。
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シンガポール:定年退職及び再雇用法についての改正法案
2021年11月
2021年11月1日、シンガポール人材開発省(Ministry of Manpower、MOM)が定年退職および再雇用法 (Retirement and Re-employment Act) について改正案を発表[1]した。
本改正によって、シンガポールにおける定年が2030年までに65歳、再雇用年齢が70歳に、それぞれ引き上げられる。
1 改正法の概要
現状、シンガポールでは定年(minimum retirement age)が(最低)62歳、再雇用年齢(re-employmentが67歳となっているが、高齢労働者に関する三者間ワークグループの提言を受け、2030年までにそれぞれ65歳、70歳に引き上げることとした。
この改正を通じて、希望する高齢労働者がより長く働くことを可能とすることで退職後の生活の充実度の向上を狙う。なお、同ワークグループの合意によって、引き上げは段階的に行われることとなっており、最初の引き上げは2022年7月に63歳、68歳で行われ、最終的な引き上げは別途三者間の合意に従って時期を決定する。
定年年齢(下限) |
再雇用年齢 |
|
現在 |
62歳 |
67歳 |
2022年7月以降< |
63歳 |
68歳 |
2030年までに |
65歳 |
70歳 |
2 改正前の法令の概要
以下、改正前の定年と再雇用についての概要の説明である。
●定年 (minimum retirement age)[2]
退職・再雇用法(RRA)に基づき、定年未満での年齢を理由とする解雇は禁止されている。この保護はシンガポール国民、または永住権を持っており、55歳になる前に雇用された場合に適用される。
●再雇用 (re-employment)[3]
下記の要件を満たした者は、定年後に、最低1年を契約期間とし、再雇用年齢、または下記要件を充足しなくなるまで毎年更新が可能な再雇用契約を求めることができる。雇用主としては、定年日の6ヶ月前から対象の従業員との話し合いを開始し、3ヶ月前には再雇用契約を提示する必要がある。
①シンガポール国籍、または永住権がある
②62歳になる前に、現在の雇用主のもとで3年以上勤務している
③雇用主が十分な勤務実績があると評価している
④健康上、仕事の継続が可能である
⑤1952年7月1日以降出生であること
なお、以上の条件に該当するにもかかわらず再雇用をしない場合、代替として従業員の同意を得て再雇用義務を別の雇用主へ引き継ぐことができる。これに従業員が同意しない場合、または組織内で可能な限りの再就職の可能性を検討したものの、適した仕事を用意できなかった場合、代替雇用を探す期間の生活を支援することを目的とする雇用支援金(Employment Assistance Payment, EAP)の支払い義務を負う。
EAPは給与の3.5ヶ月分に相当する額で、最低$5,500、最高$13,000となるが、62歳から30ヶ月以上再雇用されている者に対しては、給与の2ヶ月分、最低$3,500、最高$7,500とすることができる。
3 日本との比較
なお、日本においては、2013年施行の高年齢者雇用安定法改正によって、定年が60歳から原則65歳へと引き上げられた。現在は経過措置期間であり、2025年4月から定年の引き上げか廃止、または継続雇用制度の導入が義務化される。定年を60歳以上65歳未満と定め、継続雇用制度を導入する場合は、希望者全員を対象とする必要がある。
1998年施行の改正で60歳定年が義務化されて以降、段階的に定年、及び再雇用年齢の引き上げが行われてきたが、2021年4月施行の改正では70歳までの継続雇用か定年の引き上げが努力義務として課されることとなった。
以 上
[1] https://www.mom.gov.sg/newsroom/press-releases/2021/1101-retirement-and-re-employment-amendment-bill-2021-and-cpf-amendment-bill-2021
[2] https://www.mom.gov.sg/employment-practices/retirement
[3] https://www.mom.gov.sg/employment-practices/re-employment#eligibility