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英国における気候関連財務情報開示の新たな義務化について

2021年12月09日(木)

英国における気候関連財務情報開示の新たな義務化についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

英国における気候関連財務情報開示の新たな義務化

 

英国における気候関連財務情報開示の新たな義務化

2021年12月
One Asia Lawyers Group
コンプライアンス・ニューズレター(日本語版)

英国政府は2021年10月29日に、英国で登録されている大企業に対し、2022年4月6日より気候関連財務情報開示を義務化することを発表しました。英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省は、2006年会社法(Companies Act 2006)を改正するための規則案(「The Companies (Strategic Report) (Climate-related Financial Disclosure) Regulations 2021」、以下「規則案」)を発表しました[1]。 本規則案は、議会の承認を経て発効します。

新開示義務の対象となる企業

以下の企業が新開示義務の対象となります。

 ・非財務情報報告書(Non-Financial Information Statement)の作成が義務付けられているすべての英国企業(すなわち、従業員数500名以上で英国の規制市場において取引が認められている譲渡可能な証券を保有する英国企業、銀行または、保険会社(「Relevant Public Interest Entities」[2]))
 ・従業員数500人以上で、ロンドン証券取引所の「AIM」(Alternative Investment Market)[3]に証券を上場している英国の登録企業
 ・上記カテゴリーに含まれない英国登録企業で、500 人以上の従業員と 5 億ポンド以上の売上高を有する企業
 ・500 人以上の従業員と 5 億ポンド以上の売上高を有する有限責任パートナーシップ

気候関連財務情報開示の内容 

新規則案にて、「気候関連財務情報開示」は以下の種類の情報が含まれると定義しています。

① 気候関連のリスク・機会の評価と管理に関連する会社のガバナンス体制の説明
② 会社がどのように気候関連のリスク・機会を特定、評価、管理しているかについての説明
③ 気候関連のリスクを特定、評価、管理するためのプロセスが、企業の全体的なリスク管理プロセスにどのように統合されているかについての説明
④ 以下の事項の説明
(a) 会社の事業に関連して発生する主な気候関連のリスク・機会
(b) それらのリスク・機会が評価される際に参照される期間
⑤ 主要な気候関連のリスク・機会が会社のビジネスモデルと戦略に及ぼす実際・潜在的な影響の説明
⑥ 異なる気候関連シナリオを考慮した、会社のビジネスモデルおよび戦略の回復力に関する分析
⑦ 気候関連のリスクを管理し、気候関連の機会を実現するために会社が用いている目標と、それらの目標に対する実績の説明
⑧ 気候関連のリスクを管理し、気候関連の機会を実現するための目標に対する進捗状況を評価するために用いられる主要業績評価指標、およびそれらの主要業績評価指標の根拠となる計算についての説明[4]

気候関連財務情報開示の報告場所について

これらの新法の対象となる企業および有限責任パートナーシップは、戦略報告書 (Strategic Report) の一部を構成する非財務情報報告書 (Non-Financial Information Statement)[5] において、気候関連の財務情報を報告することが求められます。ただし、現在非財務情報報告書の作成が義務付けられていない有限責任パートナーシップは、エネルギー・二酸化炭素報告書(Energy and Carbon Report)の中でこの情報を報告することが求められます[6]

以上

[1]規則案は以下のリンクからアクセス可能です:https://www.legislation.gov.uk/ukdsi/2021/9780348228519

[2] 関連する公益事業者

[3] Alternative Investment Market(AIM)は、新興ベンチャー企業向けのロンドン証券取引所(London Stock Exchange)の下位市場のことです。

[4] 規則案に記載されている通り、この新しい定義は2006年会社法第414CB条に含まれる予定です。

[5] 「非財務情報報告書」(Non-Financial Information Statement)は、今後、戦略報告書で求められる情報をよりよく考慮して、「非財務およびサステナビリティ情報報告書」(Non-Financial and Sustainability Information Statement) に名称を変更することを提案されています。

[6] 英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省。「 Consultation Response: Mandatory climate-related financial disclosures by publicly quoted companies, large private companies, and LLPs」。(2021年10月)。ページ11〜12。以下のリンクからアクセス可能です:

<https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/1029354/tcfd-consultation-government-response.pdf>