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日本における相続土地国庫帰属制度の概要について

2021年12月09日(木)

日本における相続土地国庫帰属制度の概要についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

相続土地国庫帰属制度の概要

 

相続土地国庫帰属制度の概要

2021年12月9日
One Asia Lawyers 東京事務所
弁護士 松宮浩典

 2021年4月28日に「民法等の一部を改正する法律」(以下「民法等一部改正法」といいます。)及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(以下「相続土地国庫帰属法」といいます。)が公布され、2023年4月までには「相続土地国庫帰属制度」(以下「本制度」といいます。)の運用が開始される見込みです。

1 背景

 都市部への人口移動や人口減少・高齢化の進展等により、土地の所有意識の希薄化・土地利用のニーズの低下、また、相続登記の申請は義務ではなく、申請を行わなくても不利益を被ることは少ないこと等の理由により、所有者不明土地が発生しています。所有者不明土地が今後ますます増加し深刻化するおそれがあるため、発生を抑制する方策として今回本制度が創設されました。

 本ニュースレターでは、本制度について解説します。

2 概要

 本制度は、所有者不明土地の発生を抑制するため、相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限られます。)により土地の所有権を取得した相続人が、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする制度になります。

 管理コストの国への転嫁や土地の管理を疎かにするモラルハザードが発生するおそれを考慮して、一定の要件(下記に記載)を設定し、法務大臣が要件審査を行います。要件審査を経て法務大臣の承認を受けた者は、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費相当額の負担金を納付します。国庫に帰属した土地は、主に農用地や森林として利用されている土地は農林水産大臣が管理・処分し、それ以外の土地は財務大臣が管理・処分します。

3 手続の流れ

 本制度の手続の流れは、以下の通りです。

(1) 承認申請
 申請書と一定の添付書類を提出し、審査手数料を支払う。

(2) 法務大臣(法務局)の要件審査及び承認
 要件を全て満たした場合、法務大臣より承認の通知がされる。
 ただし、①承認申請の権限がない者からの申請の場合、②要件に該当しない土地、申請書や添付書類、負担金の規定に違反している場合、③事実の調査に協力しない場合に該当する場合、申請は却下される。

(3) 申請者が負担金を納付
 負担額は、承認と合わせて法務大臣より通知される。また、承認の通知を受けてから30日以内に納付しない場合は、承認の効力が失われる。

(4) 国庫への帰属
 土地の所有権は、申請者が負担金を納付した時点で国庫に移転する。

4 要件

 土地所有者が承認申請をする場合は、以下のいずれにも該当しないことが要件となります。

(1) 却下要件(相続土地国庫帰属法第2条第3項)
 承認申請はその土地が次の各号のいずれかに該当するものであるときは、することができない。
 ①建物の存する土地
 ②担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
 ③通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
 ④土壌汚染対策法第2条第1項に規定する特定有害物質により汚染されている土地
 ⑤境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

(2) 不承認要件(相続土地国庫帰属法第5条第1項)
 法務大臣は、承認申請に係る土地が次の各号のいずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属について承認をしなければならない。
 ①崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
 ②土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
 ③除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
 ④隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければならない通用の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
 ⑤前各号に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの

 以上の各要件を満たさなければ、承認申請は認められません。

 さらに、承認申請の審査のために、必要があると認められるときは、法務局職員による当該土地の実施調査を行うことができる規定が設けられています(相続土地国庫帰属法第6条第1項、第2項)。正当な理由がないにも関わらず、調査に応じない場合は、申請が却下されることがあり、また、調査妨害等を行うと6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金処分も規定されています(相続土地国庫帰属法第4条第1項第3号、第17条)。

 また、承認を受けて土地が国庫に帰属した場合であっても、申請者が偽りその他不正の手段により承認を受けたことが判明したときは、法務大臣は承認を取り消すことができます(相続土地国庫帰属法13条)。そのほか、承認時に申請者が却下要件や不承認要件に該当する事由があることを知りながらそれを告げずに国に損害が生じた場合は、その申請者は国に対し損害賠償責任を負います(相続土地国庫帰属法14条)。

以上