• Instgram
  • LinkeIn
  • Lexologoy

エチオピアの投資規制と法制度

2021年12月08日(水)

エチオピアの投資規制と法制度についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

エチオピアの投資規制と法制度について

 

 

エチオピアの投資規制と法制度

2021年12月6日

One Asia Lawyers 南西アジアプラクティスチーム

インフラ輸出リーガルプラクティスチーム

 

インド等経由でのアフリカ進出のご相談や、海外インフラプロジェクトに関する相談が増えてきているため、南西アジアプラクティスチームおよびインフラ輸出リーガルプラクティスチームが共同して、アフリカに関する情報発信を行っています。

今回は第3弾として、エチオピアの各種投資規制と法制度を紹介して参ります。

第一弾のナイジェリアhttps://oneasia.legal/7141)、第二弾の南アフリカhttps://oneasia.legal/7734)も公開しています。

【エチオピアの概要】

国名

エチオピア連邦民主共和国

首都

アディスアベバ

ISO国名コード

ET、ETH,

面積

109.7万平方キロメートル

人口

1億1,496万(2020年)[1]

言語

アムハラ語、オロモ語、英語等

民族

オロモ族、アムハラ族、ティグライ族、ソマリ族等約80の民族

宗教

キリスト教、イスラム教他

政治体制

政体:連邦共和制

元首:大統領(ゼウデ大統領、2018年10月就任、任期6年)

議会:二院制

政府:

首相 アビィ・アハメド・アリ

外相 デメケ・メコネン・ハッセン

通貨

ブル(BIRR)

会計年度

7月8日~7月7日

 

1.地理

エチオピアは、約109.7万平方キロメートル(日本の約3倍)の国土面積を有し、エリトリア、ソマリア、ケニア、南スーダン、スーダン、ジブチと国境を接するアフリカ大陸東部の「アフリカの角」と呼ばれる地域に位置する国である。中東の市場に近いという地理的優位性を有しているものの、1993年に紅海に面した旧州であるエリトリアが分離独立したことによりエチオピアは内陸国となり、過去20年間はジブチの主要港を利用してきている。国境をめぐり対立してきたエリトリアとの2000年の和平合意および2018年の外交関係再開により、エリトリアのアサブ港とマッサワ港の利用を再開することで合意しており、国際貿易の拡大が期待される。

首都のアディスアベバは標高が約2,400メートルある高地に位置するため、特に雨季は冷涼な気候となる。アフリカ連合(African Union: AU)やアフリカ経済委員会(Economic Commission for Africa: ECA)がアディスアベバに本部を設置しており、アフリカにおける政治的な中心地としての役割を持つ。

2.人口

人口1億1,496万人と、アフリカではナイジェリア(2億614万人)に次ぎ第2位、世界12位の人口規模を有する国である。全人口の56.5%が生産年齢人口(15~64歳)にあり、豊富な労働力を有する。

【人口動態(1,000人)】

1990

1995

2000

2005

2010

2015

2020

47,888

57,048

66,225

76,346

87,640

100,835

114,964

 

3.国家・政治体制

エチオピアは、他の多くのアフリカ諸国と異なり、短期間のイタリアによる占領(1936年~1941年)期間はあったものの、ヨーロッパ諸国に統治されたことのない、アフリカで最も古い独立国である。

軍事革命による王政廃止と社会主義政権発足(1974年)、エリトリアの分離・独立(1993年)と同国との武力闘争勃発・和平合意成立・国境線確定(1998年~2002年)、連邦民主共和国樹立(1995年)などの情勢不安はあったものの、他のアフリカ周辺諸国との比較において、エチオピアは政治的に安定していると言われてきていた。

しかしながら、約80の民族を抱える同国では、少数民族であるティグライ人が30年にわたり政治経済を支配していたこともあり、最大民族であるオロモ人を始め、民族間対立や衝突はたびたび発生していた。2018年にオロモ出身者として初のアビィ首相が選出され、エリトリアとの外交関係再開や民族間融和に取り組んできたが、これに対し一部の国民の反感を招いてもいた。2020年11月に勃発した国防軍と旧支配層であるティグライ人民解放戦線(TPLF)の武力衝突、今年6月のTPLFによる州都メケレ制圧、その後の首都方向への南下、11月の非常事態宣言の発令と、情勢は深刻化しており、解決が望まれている。

以下の9つの州と2つの特別市がある。

州・特別市

州都

アファール

セメラ

アムハラ

バハルダール

ベニシャングル・グムズ

アソサ

ガンベラ

ガンベラ

ハラール

ハラール

オロミア

アダマ

ソマリ

ジジガ

ティグライ

メケレ

SNNPR (Southern Nations, Nationalities, and Peoples’ National Regional State)

アワッサ

アディスアベバ市

アディスアベバ

ディレ・ダワ市

ディレ・ダワ

 

4.法制度

エチオピアの法制度は、大陸法の法体系であり、最高法規となる憲法の下に、議会で可決する布告等(Proclamation)、閣僚会議が制定する規則(Regulation)、各省庁が制定する施行令(Implementing Directives)がある。エチオピア憲法は、憲法が最高法規である(憲法9条)としつつ、宗教法・慣習法(religious or customary laws)や、宗教裁判所・伝統裁判所(Religious and customary courts)を認めており(憲法34条5項、78条5項)、複数の法制度が存在していると言える。

投資やビジネスに関連する法令を始め、すべての法律、規則、施行令は、官報(Gazette、またはNegarit Gazeta:ネガリット・ガゼタ)にて公布される。

投資、ビジネスに関連する主要な法規制には以下が挙げられる。

投資法(Investment Proclamation No. 1180/2020)

投資規則(Investment Regulation No. 474/2020)

商法(Commercial Code Proclamation No.1243/2021)

所得税法(Income Tax Proclamation No. 979/2016)

関税法(Customs Proclamation No. 859/2014)

労働法(Labor Proclamation No. 1156/2019)

中でも、エチオピアにおける法人設立や運営、清算・撤退等に関して規定する商法は、2021年に、62年ぶりとなる改正がされており(2021年12月現在、未施行)、組織形態に一人会社(One-person Company)や有限責任事業組合(Limited Liability Partnership: LLP)が新設されるなど、変更点の確認が必須となる。

5.通貨・経済状況

通貨はブル、1USドル=47.25(2021年11月現在)。世界銀行の低所得国(Lower Income Countries)に分類される。

エチオピアのGDPは、コロナ禍の影響により減速したものの、過去10年間(2010-2020年)は年平均9.4%の高い成長率で推移しており、2019年の名目GDPは107.6億ドルと、アフリカではモロッコ(119.7億ドル)やケニア(95.5億ドル)と、アジアではスリランカ(84億ドル)と同程度の経済規模である。ただし、1人当たりの所得が936ドルと最貧国の一つでもあり、政府は2025年までに低中所得国になることを目指し、外国投資や工業団地を通じた民間セクターの役割拡大に積極的となっている。

主な経済指標と推移は以下のとおり。

 

指標

2016

2017

2018

2019

2020

名目GDP(10億USドル)[2]

74.3

81.8

84.3

95.9

107.6

1人当たり名目GDP(USドル)[3]

717

769

772

856

936

GDP成長率[4]

9.4%

9.6%

6.8%

8.4%

6.1%

 

6.産業

エチオピアの産業構造は、アフリカの多くの国同様に、GDP全体に占める農業セクター(第1次産業)の割合、および生産年齢人口全体に占める農業従事者の割合が高く、その割合が低下する一方、サービスセクター(第2次産業)の割合を伸ばしている。また、政府が成長を推進しつつも10%台で停滞していた工業(第2次産業)は、2011/12年(11.5%)から急成長し、2018/19年にはGDPの3割近くを占めている。主な輸出品目は、コーヒー、オイルシード(油糧種子)、金、豆類、園芸、畜産、繊維、皮革製品等。

 

産業ごとのGDP寄与率[5]は以下のとおり。

産業

2016/17

2017/18

2018/19

農業

36.4%

34.9%

33.3%

工業

25.9%

27.0%

28.1%

サービス

38.8%

39.2%

40.0%

 

7.外国投資

エチオピアには、2020年時点で11社の日系企業が拠点を設けている[6]。世界銀行の「Doing Business 2020」[7]では世界190カ国中159位、サブサハラアフリカ48カ国中29位[8]であり、政府によるビジネス環境改善の取り組みはなされているものの、いまだ課題は多いと言える。

アジアと比して人件費が高いと言われるアフリカ諸国の中で、エチオピアは人口規模が大きく労働賃金が極めて低廉であるため、製造業等の労働集約型産業にとっては、幾多の課題をクリアするだけのコストをかける価値があると判断されている。ただし、労働力が豊富であっても、均一な生産性を確保するための人材育成および労務管理に時間とコストを要することも併せて検討する必要がある。

なお、JETROの調査[9]によると、エチオピアは、在アフリカ日系企業の「今後の注目国」の第4位にランクされ、ケニア、南アフリカ、ナイジェリアといったアフリカ経済大国に並び、ビジネス投資先として注視されている。

外国企業がエチオピアで事業を行う際の投資促進機関として、エチオピア投資委員会(Ethiopian Investment Commission)が設置されており、投資に必要となる投資許可証や事業許可証の申請受付・発行、投資家への支援等を担っている。

2021年1月には、会社登録や商号確認、投資許可証や事業許可証の取得と更新等をオンライン上で行える「eTradeプラットフォーム」(etrade.gov.et)が開設されるなど、ビジネス環境の改善が図られている。

 

(1)投資規制

エチオピアで投資に関わる主要規定として投資法およびその下位規則が存在し、2020年4月2日には新投資法(Investment Proclamation No.1180/2020)[10]が、2020年9月2日には、新投資規則(Investment Regulation No.474/2020)[11]が公布されている。

投資法は、外資、内資を問わず、鉱物および石油の探鉱・探査・開発への投資を除き、エチオピアで行われるすべての投資に適用される。

エチオピアにおける投資規制は従来、投資分野として明示的に記載されたセクターに限定するいわゆる「ポジティブリスト」方式であったが、現在は「ネガティブリスト」方式に変更されている。これにより、外国人投資家は、明示的に規制されている分野を除き、いかなる分野にも投資することができるようになったこととなる。

投資規則では、投資形態により、外国投資が禁止・制限される分野が以下のとおり規定されている。

 

政府との共同事業(Joint Investment with the Government)に限定される投資分野(規則3条)

武器・弾薬・爆発兵器の製造

電気エネルギー(electrical energy)の輸出入

国際航空事業

高速バス事業

郵便事業(クーリエサービス(国際宅配便)を除く)

 

国内投資家(Domestic Investor)のみに開放される投資分野(規則4条)

銀行業、保険業、小規模金融事業(資本財金融業(capital goods finance business)は除く)

国内統合送電網による電力送配電事業

初期・中等レベルのヘルスサービス

卸売業、石油・石油製品、国産自社製品の卸売(電子商取引による卸売業は除く)

小売業(電子商取引による小売および国産自社製品の小売は除く)

輸入貿易業(液化石油ガスおよびビチューメンを除く)

生豆コーヒー、チャット(覚せい作用のある植物)、油料種子、豆類、鉱物、皮革、天然林産物、家畜の輸出

第1等級(Grade 1)未満の建設・掘削事業

格付等級に達しない、あらゆる宿泊業

格付等級に達しない、あらゆる飲食業、ナイトクラブ、ケータリング業

旅行代理店業、旅券販売取引補助サービス(auxiliary services)

旅行催行業

機器・機械・車両のオペレーティングリース業(重機・特殊車両は除く)

輸送業(鉄道輸送、ケーブルカー輸送、低温輸送、25トンを超える輸送、政府や国内投資家との合弁が義務付けられている輸送サービスを除く)

伝統的医薬品調合業

国内市場向けパン、洋菓子(pastries)製造業

製粉業

理容・美容業、鍛冶業、服飾仕立て業(縫製工場をによるものを除く)

維持管理・修理業(航空機のものを含む。ただし、重工業機械と医療機器は除く)

航空産業の地上業務

製材業、半完成木材製品の組立業

メディアサービス

通関業

レンガ製造業

採石業

宝くじ・スポーツ賭博業

ランドリーサービス業(大規模なものは除く)

通訳・翻訳業、秘書業

警備サービス業

仲介業(brokerage services)

弁護士業・法務コンサルタント業

雇用仲介業(船員など高い専門性や国際経験を要する分野の仲介は除く)

 

国内投資家との共同事業(Joint Investment with Domestic and Foreign Investors)に限定する投資分野(規則5条)

貨物輸送、船会社代理業

国内航空輸送サービス業

座席数45席超のバスを使う外国との公共交通業

輸送力の大きな都市交通サービス業

広告・宣伝サービス業

映像・音声ソフトの製造・流通業

会計・監査業

 

これらがいわゆる「ネガティブリスト」であり、その他の分野は、原則としてすべて外国投資に開放されている(法6条3項)。なお、新法では、政府が独占的に保有するセクターが廃止されている点は特徴的と言える。

出資比率は、政府との共同事業に限定される分野については具体的な規定はない。国内投資家との共同事業に限定される分野については、外資比率の上限は49%までと定められる(規則5条2項)。

外国投資家による最低資本金は、分野や投資形態に応じ、5万米ドル~20万米ドル(法9条)を拠出することが義務付けられている。原則として、一つの投資プロジェクトに対し20万米ドルの最低資本金が求められる(同条1項)が、国内投資家との合弁の場合は15万米ドル(同2項)、設計・エンジニアリング、技術コンサルタント、性能試験・分析評価、出版業については、外国投資家の場合は10万米ドル、国内投資家との合弁の場合は5万米ドル(同3項)と規定される。

分野・投資形態による最低資本金の要件

外資100%での投資事業

国内投資家との合弁事業

投資法上許可された分野への投資

20万ドル

15万ドル

設計・エンジニアリング、技術コンサルタント等への投資

10万ドル

5万ドル

 

なお、投資家自身の既存企業(his existing enterprise)からの利益または配当を、外国投資が認められる分野に再投資する場合等、最低資本金の要件が免除される(同4項)。

エチオピアで投資を行うには、新規事業への投資(Greenfield投資)も、既存企業の買収、既存企業の株式取得(Brownfield投資)も、まずは投資許可証(Investment Permit)を投資委員会から取得する必要がある。

(2)進出形態

外国企業がエチオピアに進出する際は、有限責任会社(Private Limited Company)、個人事業主(Sole Proprietorship)、支店、駐在員事務所のいずれかの形態をとることとなる。

投資許可証および法人登記の主な手続内容は以下のとおり[12]

 

手続

対象形態

内容

投資委員会への必要書類提出

個人事業主

申請書・事業計画書

パスポート

ビジネスビザまたは投資ビザ 等

有限責任会社

申請書・事業計画書

事業経歴(会社概要)

基本定款および付属定款の草案

パスポートおよびビザ(株主が個人の場合)

親会社に関する文書(設立証明書を含む)

親会社がエチオピアへの投資を決議した際の議事録

財務状況を証明する文書 等

支店

申請書・事業計画書

本籍国における法的に有効な法人設立認可証

代表者のパスポートおよび新会社用のビザ

財務状況を証明する文書 等

駐在員事務所

申請書・事業計画書

親会社の法的人格が記載されている文書

申請者が駐在員事務所代表者に任命されたことを示す取締役会決議または公式証明書(人事部からの公式文書等) 等

投資委員会での確認手続

有限責任会社のみ

商号の重複

基本定款と付属定款の認証

投資委員会から銀行口座開設のためのサポートレターを受領

国内銀行口座の開設、最低資本金の送金

銀行送金通知を投資委員会に提出

投資委員会への追加書類提出

有限責任会社のみ

認証済みオフィスリース契約書

納税識別番号(TIN)証明書を投資委員会

投資委員会発行の投資許可証と登記証明書を受領

エチオピア国外で発行されたすべての文書は、海外の公証人、エチオピア大使館、エチオピア外務省および(または)国内の公証人による認証を受けたものである必要がある。

なお、2021年に成立された新商法では、第2巻「商業の組織形態(Business Organizations)」に以下の7つの形態が規定されており、旧法にはない「一人会社(One person private limited company)」と「有限責任事業組合(Limited Liability Partnership: LLP)」が新たに導入されている。本稿発行時点では新商法はまだ施行前(大統領署名後、官報が発行され正式に施行)のようであり、これら新たな形態は直ちに採用できるものではないが、将来的にエチオピアに進出する際の選択肢となり得る。

【新商法における組織形態】

General Partnership(ジェネラル・パートナーシップ)

Limited Partnership(リミテッド・パートナーシップ)

Limited Liability Partnership(有限責任事業組合)

Joint Venture(合弁事業)

Share Company(株式会社(シェアカンパニー))

Private Limited Company(非公開有限会社)

One Person Private Limited Company(個人会社)

(3)土地に関する規制

土地の所有について、憲法上外国企業は土地を取得・所有することは認められていないが、「市街地リース法(Urban Land Lease Holding Proclamation No. 721/2011)」[13]に基づき、最長99年の借地権を得て土地を使用するこができる。都市部(urban center)[14]におけるリース期間は土地の使用目的に応じて規定されており、例えば住宅または研究・調査目的であれば最長99年間、アディスアベバでの工業(industry)目的では最長70年、アディスアベバでの商業目的は最長60年などと定められている(同法18条)。

 

土地の利用目的

最長リース期間

都市部全般

住宅、研究、調査、政府機関の事務所、慈善団体、宗教施設

99年

都市型農業(urban agriculture)

15年

アディスアベバ

教育、保健、文化・スポーツ

90年

工業

70年

商業、その他

60年

アディスアベバ以外の都市部

教育、保健、文化・スポーツ

99年

工業

80年

商業、その他

70年

(4)優遇制度

基本的な税金は下表[15]のとおりであり、奨励業種には法人税や関税等免除といった税制優遇措置も設けられている。

 

税金の種類

法人所得税

30%

売上高税(TOT)

課税対象:年間総売上高100万ブル以下のVAT対象外の事業

国内市場での物品供給、建築・トラクター等の技術供与:2%

サービス供給10%

付加価値税(VAT)

課税対象:年間総売上高100万ブル超の事業

15%

(輸出品と基本的サービスは免税)

関税

0%~35%

物品税

10%~100%

雇用による所得税

0%~35%

源泉徴収税

2%

輸出税

0%

(ただし原皮[16]は150%)

ロイヤルティ税

5%

配当税

10%

 

奨励業種やその他優先分野には、以下のような投資優遇措置が設けられている[17]

なお、2020年に「新投資規則」が制定された後も、投資優遇措置に関しては、「投資インセンティブおよび投資エリア規則(以下、「投資優遇措置規則」)」(2012年発行、2014年改定)[18]に規定された内容が継続して適用されることとなっている(投資規則21条)。

【所得税の免除】

対象となるセクターにおいて、新規に企業を設立した場合、または既存企業の規模拡大[19]を達成した場合、下表のとおり、最大10年間の法人所得税の免税を受けることができる(投資優遇措置規則5条1項、6条、別紙)。

さらに、製品・サービスの60%以上を輸出、または輸出業者に供給する場合は、下表に示す所得税免除期間が2年間延長となる(同規則7条、別紙)。

また、指定の低開発地域[20]で新たに企業を設立する場合には、下表に示す所得税免除期間満了後、追加で3年間の所得税30%免除措置が適用となる(同規則5条2項、別紙)。

主な所得税免税対象分野および免除期間

対象分野

免税期間(アディスアベバおよび周辺オロミア特別区)その他の地域はプラス1-2年間

食品製造・加工、飲料品(酒類含む)製造・加工

1-5年間

繊維、繊維製品製造

2-5年間

皮革、皮革製品

(仕上げ段階以前の皮革のなめしは免税対象外)

5年間

木材製品の製造

(木材の製材、木材半製品の組立ては免税対象外)

5年間

紙、紙製品製造

(印刷業は免税対象外)

1-5年間

化学品、基礎薬品、薬剤製造

2-5年間

ゴム、プラスチック製品製造

1-4年間

その他の非金属・鉱物製品製造

(粘土製品・セメント製品の製造は免税対象外)

(アディスアベバおよびオロミア特別区でのセメント、石灰、石膏の製造は免税対象外)

1-4年間

卑金属工業(鉱物採掘を除く)

3-5年間

金属製品工業(機械および設備を除く)

1年間または3年間

コンピュータ・電子工学・光学製品製造

2-4年間

電気製品、機械製造

2-5年間

車両・トレーラー・セミトレーラー製造

2-5年間

事務用・家庭用家具製造(陶磁器製を除く)、その他の製品(宝石、楽器、スポーツ用品、玩具等)

1年間

農業統合生産(Integrated manufacturing with agriculture)

4年間

農業

(アディスアベバおよびオロミア特別区での穀物・繊維作物・香辛料・薬用作物・多年生果実・多年生飲料作物(茶・コーヒー等)等の栽培は免税対象外)

2-3年間

(その他地域での多年生作物栽培は5-6年間)

畜産

(アディスアベバおよびオロミア特別区での野生動物の飼育、牛乳・鶏卵製品等の生産は免税対象外)

2年間または3年間

混合農業(家畜飼育+作物栽培)

3年間

林業

8年間

ICT

4年間

発電、送電、電力供給

4年間

 

【関税の免除】

対象となるセクターにおいて、新規企業の設立、または既存企業の規模拡大をする場合、事前申請により、商品生産・サービス提供に必要な資本財や、投資事業に必要な建設資材の輸入時の関税が免除となる(投資優遇措置規則13条)。

資本財・建築資材の輸入関税免税の対象セクター

上記の表に記載の分野(製造業、農業、ICT、発電・送電・電力供給)、観光、建設・建築、教育、保健医療、技術試験・分析、資本財リース、LPGガス・瀝青輸入

 

また、輸出業者に対する輸出関税の全額免除措置も設けられており、エチオピア国内で生産した製品は、原皮を除き、輸出税が免除される。

 

[1] 国連世界人口推計 2019 年 https://population.un.org/wpp/Download/Standard/Population/

[2] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.CD?locations=ET

[3] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.PCAP.CD?locations=ET

[4] 世界銀行 https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.KD.ZG?locations=ET

[5] National Bank of Ethiopia (エチオピア国立銀行、NBE) “Annual Report 2019-2020” https://nbebank.com/wp-content/uploads/pdf/annualbulletin/Annual%20Report%202019-2020.pdf

[6] 外務省 海外進出日系企業拠点数調(2020年調査結果) https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page22_003410.html

[7] 世界銀行 https://www.doingbusiness.org/en/reports/global-reports/doing-business-2020

[8] 世界銀行 https://www.doingbusiness.org/content/dam/doingBusiness/media/Profiles/Regional/DB2020/SSA.pdf

[9] JETRO「アフリカ進出日系企業実態調査(2020年度調査)」:アフリカ24か国の日系企業327社を対象とした調査 https://www.jetro.go.jp/world/reports/2020/01/a0ebbac802bb502b.html

[10] http://www.investethiopia.gov.et/images/Covid-19Response/Covid-19Resources/June-2/Investment-Proclamation-No.-1180_2020-Copy.pdf

[11] http://www.investethiopia.gov.et/images/pdf/Investment-Regulation-No.-4742020_09-08-2020_0001-2.pdf

[12] Ethiopian Investment Guide 2021 https://investethiopia.gov.et/index.php/news-resources/publications.html

[13] http://extwprlegs1.fao.org/docs/pdf/eth169468.pdf

[14] 同法における「都市部」は、市政を敷いている地域、または人口2,000人以上の地域で、労働力の50%以上が非農業活動に従事している地域を指す。

[15] https://investethiopia.gov.et/index.php/investment-process/tax-bracket.html

[16] これまでは皮革中間製品(”Semi-Processed Hides and Skins:ピックル皮、ウェットブルー、クラスト)にも5-20%の輸出税が課されていたが、2020年1月6日付通達において、皮革中間製品に対する輸出税は廃止されたため、現在は原皮(Raw Hides and Skins)にかかる150%の輸出税のみが残っている。

[17] https://investethiopia.gov.et/images/pdf/Investment_Regulations_No270-2012_of_Ethiopia.pdf

https://investethiopia.gov.et/images/pdf/Investment_(Amendment)_Regulation_No270-2012.pdf

https://investethiopia.gov.et/index.php/investment-process/incentive-package.html

[18] Investment Incentives and Investment Areas Reserved for Domestic Investors Council of Ministers Regulation No. 270/2012

[19] 既存企業の「拡張(Expansion)」または「アップグレード」は、投資法2条の定義に基づいており、生産能力・サービス提供能力を50%以上増加・向上させて既存企業の規模拡大、または新製品・サービスを既存企業の品目を100%以上増加させる場合を指す。

[20] a)ガンベラ、b)ベニシャルグル・グムズ、c)アファール(アワッシュ川の両岸から15キロ以内の範囲を除く)、d)ソマリ、e)オロミア州グジおよびボラナゾーン、f)南オモゾーン、セゲン地域(デラシェ、アマロ、コンソ、ブルジ)民族ゾーン、ベンチマジゾーン、シェカゾーン、ダワロゾーン、カッファゾーン、コンタおよびバスケト特別郡(南部諸民族州)

                                          以上

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。

info@oneasia.legal