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日本における賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解説

2022年01月10日(月)

日本における賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解説についてニュースレターを発行いたしました。 PDF版は以下からご確認ください。

賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解説

 

日本:賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解説

 

2022年1月7日
One Asia Lawyers Group
弁護士法人One Asia大阪オフィス
弁護士 江 副    哲
弁護士 川 島  明 紘

1.はじめに

2021年6月15日,賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(以下,「賃貸住宅管理業法」といいます。)が施行されました。賃貸住宅管理業法は,近年の賃貸住宅の重要性の高まりにより[1],多くの賃貸住宅所有者が管理会社に管理を委託するようになるに伴い,賃貸住宅の管理会社を巡るトラブルも増加していること,サブリース事業におけるサブリース事業者と所有者との間の紛争も多発していることを受け,これらに対応するために定められました。

. 賃貸住宅管理業法の解説

 ⑴ 制度概要

   賃貸住宅管理業法は,①賃貸住宅管理業者の登録制度,②サブリース事業に対する規制措置の大きく2つから構成されています。

 ⑵ 賃貸住宅管理業登録制度

   賃貸住宅管理業法では,賃貸住宅管理業=「賃貸住宅の賃貸人から依頼を受けて,物件の維持保全,家賃・敷金・共益金・その他の金銭の管理を行う事業」を営む場合には,国土交通大臣による登録を義務付けています(賃貸住宅管理業法第3条1項)。ただし,管理戸数が200戸未満の場合には,登録なく管理業を営むことができます(同法同項但書)。

   国土交通省の登録を受けた賃貸住宅管理業者は,管理業務に当たって,以下のようなルールを遵守することが義務付けられており,遵守されない場合には,国土交通大臣による監督(業務改善命令,業務停止命令,または登録の取消し等)がなされることとなり,刑事罰(同法第41条以下)も定められています。

  【賃貸住宅管理業者が遵守すべきルール】

  ①業務処理の原則(同法第10条)

  ②名義貸しの禁止(同法第11条)

  ③業務管理者の選任・配置(同法第12条)

  ④管理受託契約の締結前の書面の交付(同法第13条)

  ⑤管理受託契約の締結時の書面の交付(同法第14条)

  ⑥管理業務の再委託の禁止(同法第15条)

  ⑦家賃等の分別管理(同法第16条)

  ⑧証明書の携帯等(同法第17条)

  ⑨帳簿の備付け等(同法第18条)

  ⑩標識の掲示(同法第19条)

  ⑪委託者への定期報告(同法第20条)

  ⑫秘密を守る義務(同法第21条)

 ⑶ 特定賃貸借契約(マスターリース契約)の適正化のための措置等

   賃貸住宅管理業法は,サブリース事業(サブリース業者が賃貸住宅を賃貸人などから転貸を目的として借り受けるマスターリース契約を締結することを内容とする事業)を営むことについて登録を求めてはいませんが,サブリース事業を営むにあたってのルールを以下のとおり定めています。

  【サブリース事業を営むに当たってのルール】

  ①誇大広告等の禁止(同法第28条)

  ②不当な勧誘等の禁止(同法第29条)

  ③特定賃貸借契約の締結前の書面の交付(同法第30条)

  ④特定賃貸借契約の締結時の書面の交付(同法第31条)

  ⑤書類の閲覧(同法第32条)

   これらのルールを遵守しない場合,指示(同法第33条1項)・業務停止命令(同法第34条1項)や,刑事罰(同法第42条以下)の対象となります。

   また,上記ルールのうち,①(誇大広告等の禁止)及び②(不当な勧誘等の禁止)については,勧誘者に対しても遵守が義務付けられており,サブリース事業者と同様に指示・業務停止命令や刑事罰の対象となります。

.  経過措置

賃貸住宅管理業法は2021年6月15日に施行されていますが,施行時点で賃貸住宅管理業を営んでいる事業者は,登録義務がある場合であっても,2022年6月14日までは登録を受けずに管理業を営むことができる経過措置が定められております(同法附則第2条1項)。但し,登録までの期間においても,当該管理業者は法令上の賃貸住宅管理業者とみなされるため,上記を含めた法令上の義務が課されることとなる点,注意が必要です。

4.今後の展望

  賃貸住宅管理業法は施行間もないため,その運用に関しては,今後公表されるであろう政省令やガイドラインの内容を注視していく必要があります。また,経過措置期間後においては,業務管理者を選任できないために登録することができない可能性もありえますので,早め早めの準備・対応が必要と思われます[2]

 

【参考】

・国土交通省関連ページ

https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_tk3_000001_00004.html

・渡辺晋「賃貸住宅管理業法の解説」(住宅新報出版,令和3年)

・一般社団法人全国賃貸不動産管理業協会「賃貸住宅管理業者登録制度施行に伴う法律上の留意点」

 

[1] 「平成30年住宅・土地統計調査」(総務省統計局)によれば,居住世帯のある住宅総数5361万6000戸に対し,賃貸住宅は全体で1906万5000戸と,賃貸住宅が住宅総数に占める割合は35.6%であり,消費者の指向からしても,持家よりも賃貸住宅を指向する消費者の割合が9.3%(平成8年)から20.4%(平成28年)に増加しています(国土交通省「平成29年度土地問題に関する国民の意識調査」)。

[2] 業務管理者は,他の営業所又は事務所の業務管理者と兼務することはできないため,複数の営業所の設置が想定されている場合は,業務管理者となることのできる人員の確保には注意が必要になります(同法第12条3項)。

 

以上