ラベル規制が一部改正:原産地の記載ルールなど変更
ベトナムにおけるラベル規制の一部改正:原産地の記載ルールなど変更についてニュースレターを発行いたしました。
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<ラベル規制が一部改正:原産地の記載ルールなど変更>
2022年2月11日
One Asia Lawyers ベトナム事務所
1 はじめに
ベトナム政府は2021年12月9日、製品ラベルに関する政令43/2017/ND-CP号を一部改正する政令(Decree No.111/2021/ND-CP、以下「新政令」といいます)を公布しました。新政令は、2022年2月15日に施行されます。
新政令には、記載が義務付けられる事項や、原産地の記載ルール等について変更がなされていますので、主な改正点を旧政令と比較しながらご紹介します。
2 適用対象の変更
旧政令においては、政令が適用される対象は「ベトナムで流通する製品」と「輸入品」に限られていたところ、新政令においては「輸出品」「輸出者」も対象に含まれることとなりました(新政令第1条1項、第2条)。
原則的として、「輸出品」のラベルは輸入国のラベル記載に合わせることとされていますが(第10条3項)、原産地については、新政令15条1項に従って記載しなければなりません(後述の「5原産地記載」を参照)。また、主権紛争に関連する映像や内容、ベトナムの安全保障、政治、経済、社会、外交関係、公序良俗に影響し得るその他のセンシティブな内容を表示することはできません(新政令10条3項b)、旧政令18条2項)。
3 輸入品のベトナム語ラベル
旧政令においては、輸入品にもともと貼付されているオリジナルのラベルが政令に適合していない場合、オリジナルのラベルを保持したまま、ベトナム語の補助ラベルを付して市場流通させなければならないとされていました(旧政令第9条4項)。
新政令においては、「ベトナムに製品を輸入する組織・個人は、本政令の輸入品のラベルに記載することが義務付けられる内容に関する規定に従ってラベル記載しなければならない」という規定に変更されており、対応方法が変更されています(後述の「4」記載が義務付けられる内容を参照)。
4 記載が義務付けられる内容
新政令では、記載が義務付けられる内容が大きく変更されました。具体的には、原産地の記載ルールとして、「原産地を確定できない場合には、製品を完成させる最終工程が実施された場所を記載すること」という規定が追加されています(新政令第10条1項ⅽ))。その他、旧政令と新政令の差異については、次ページの表をご参照ください。
【表1 ラベルの記載に関する新旧規定の比較】
旧政令第10条 |
新政令第10条 |
1.製品ラベルには、次の内容を表示しなければならない。
a) 製品名 b) 製品に責任を負う組織・個人の名・住所 c) 原産地 d)本政令附録Ⅰおよび関連法規で規定される製品の各種類の性質に基づくその他の内容
2. 製品に付録Ⅰで定める複数のグループに属する性質を有する、あるいは法令に規定がない場合は、製品の主な効用に基づいて、製品に責任を負う組織・個人が、製品のグループを自ら特定して、本条1項dに規定される内容を記載する。
3. 製品の寸法が、ラベルに表示しなければならない内容をすべて表示しきりない場合には、製品ラベル上には本条1項a,b,cで規定される内容を記載し、本条1項dで規定される内容については、製粉の付帯資料に記載し、ラベル上にはその内容を記載した場所を示すこと。 医療機器については、本条1項dで規定する内容は、本政令附録Ⅰの規定に従って表示する。 |
1.ベトナムで流通する各種製品のラベルには、ベトナム語で次の内容を表示しなければならない。 a) 製品名 b) 製品に責任を負う組織・個人の名・住所 c) 原産地 原産地を確定できない場合には、製品を完成させる最終工程を実施した場所を本政令第15条3項の規定に則って記載する d) その他の記載が強制される内容は、本政令附録Ⅰおよび関連法規で規定される製品の各種類の性質に基づいてラベル表示すること
製品が付録Ⅰで定める複数のグループに属する性質を有する、あるいは法令に規定がない場合は、製品の主な効用に基づいて、製品に責任を負う組織・個人が、製品のグループを自ら特定して、本条1項dに規定される内容を記載する。
製品の寸法が、ラベル表示しなければならない内容をすべて表示しきれない場合には、製品ラベル上には本条1項a,b,cで規定される内容を記載し、本条1項dで規定される内容については、製品の付帯資料に記載し、ラベル上にはその内容を記載した場所を示すこと。
2. ベトナムに輸入される商品のオリジナルのラベルは、通関手続き時に外国語あるいはベトナム語で次の内容が表示されていなければならない
a) 製品名 b) 原産地
原産地を確定できない場合には、製品を完成させる最終工程を実施した場所を本政令第15条3項の規定に則って記載する
c) 生産組織・個人あるいは外国の製品に責任を負う組織・個人の名あるいは略称
c1) 商品のオリジナルラベルに、生産組織または個人、あるいは外国で商品に責任を負う組織、個人の氏名と住所が記載されていない場合、これらの内容は製品の付帯資料に十分に表示されていること。
c2) ベトナムへの輸入品で、本条2項a,b,cの規定に従った外国語のラベルを有するベトナムへの輸入品については、通関手続きを実施し、倉庫に移送した後、製品を輸入した組織・個人は、ベトナム市場に製品を流通させる前に本条1項の規定に従ってベトナム語で製品ラベルを補充すること。
3. 輸出品の製品ラベルは、輸入国の法令に則って記載すること。
a) 輸出品のラベル上に原産地を表示する場合は、本政令第15条1項の規定を順守すること。 b) 輸出品のラベルの内容は、本政令第18条2項の規定を順守すること。
4. 科学技術大臣は、電子方式による、本条1項dで規定する商品ラベル上に義務付けられる内容の一部について詳細に規定すること |
5 原産地記載
原産地記載の新旧政令の差異は、以下の表をご参照ください。
【表2 原産地記載に関する新旧規定の比較】
旧政令第15条 |
新政令第15条 |
1.生産、輸入する組織および個人は、自己の製品の原産地を自ら確定するが、真実かつ正確であり商品の原産地に関する法律またはベトナムが参加または署名する協定を順守すること。
2. 原産地の記載方法は次のものとする:「san xuat tai–」(–で生産)あるいは「che tao tai–」(–で製造)、「nuoc san xuat」(生産国)「xuat xu」(原産地)あるいは「san xuat boi –」(–によって生産)という文言に、その製品が生産された国・地域名を記載する。
製品を生産した国あるいは地域名は、省略して記載してはならない |
1.生産、輸出、輸入をする組織、個人は、自己の製品の原産地を、忠実、正確、ベトナムにおける製品の輸出、輸入品の原産地、ベトナムにおいておける生産品の法規、あるいはベトナムが加盟する国際的な約束の規定を順守して、自ら特定して記載する。
2. 原産地を記載する際には、「san xuat tai–」(–で生産)「che tao tai–」(–で製造)「nuoc san xuat」(生産国)「xuat xu」(原産地)「san xuat boi」(–によって生産)「san pham cua–」(–の製品)という文言に、その製品が生産された国・地域名を記載するか、原産地にかかる法令の規定に則って記載する。
3. 規定に則った原産地記載ができない場合には、製品が完成した最終工程が実施された場所を記載する。その場合には、「lap rap tai–」(–で組み立て)「dong chai tai–」(–で充填)「phoi tron tai–」(–で混合)「hoan tat tai–」(–で完成)「dong goi tai–」(–で包装)「dan nhan tai–」(–でラベル貼付)という文言を(組み合わせて)使用して、製品の最終工程が実施された国・地域名を記載する。
4. 製品を生産したあるいは製品を完成させる最終工程を実施した国あるいは地域名は、省略して記載してはならない |
6 付録
旧政令では、共通して記載しなければならない内容に加えて、付録Ⅰにおいて、食品、飲料、酒、タバコ、食品添加物、栄養素、食品原料、医療機器、化粧品など68種類の製品について、ラベル記載を義務付ける内容を個別に規定していましたが、新政令で全体的な改正がなされていますので、自社が取り扱う製品について変更がなされているか、ご確認ください。
7 経過措置
旧政令に従って生産、輸入、流通していた製品のラベルについては、引き続き流通が認められ、商品ラベル上に記載された使用期限まで、使用することが可能です。旧政令上、ラベル上に使用期限の記載が義務付けられていなかったものについても、引き続きの流通が認められます。
以上