• Instgram
  • LinkeIn
  • Lexologoy

日本における長期優良住宅法等の改正について

2022年03月01日(火)

日本における長期優良住宅法等の改正についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

日本:長期優良住宅法等の改正について

 

日本:長期優良住宅法等の改正について

2022年3月1日
One Asia Lawyers Group
弁護士法人One Asia
弁護士 江 副    哲
弁護士 川 島  明 紘

1.はじめに

 本年(令和4年)2月20日,昨年(令和3年)住宅の質の向上及び円滑な取引環境の整備のための長期優良住宅の普及の促進に関する法律(以下,「長期優良住宅法等」といいます。)の一部を改正する法律(以下,「本改正」といいます。)が施行されました(一部の改正については施行日が異なります。)。

 長期優良住宅法は,スクラップ&ビルド型(「作っては壊す」)の社会からストック活用型(「いいものを作って,手入れをして長く大切に使う」)の社会への転換を目的として,長期にわたり住み続けられるための措置が講じられた優良な住宅(=長期優良住宅)を普及させるために平成20年12月5日に成立しました。

 その後10年以上が経った現在,日本の住宅市場は飽和状態にあるともいえ,空き家問題も取り沙汰され,耐震性・省エネルギー性能が十分ではない住宅ストックも多数存在しています。本改正の背景には,このような住宅について,長期優良住宅の認定促進等によって住宅の質を向上させるとともに,既存住宅を安心して購入できる環境を更に整備し既存住宅流通市場を活性化させることで,住居取得にかかる負担の軽減や地球環境への負荷を低減させることがあります。本改正は,長期優良住宅法と併せて,関連法令(住宅品質確保法,住宅瑕疵担保履行法等)の改正も行うものとなりますので,以下ではこれらも併せて概要を解説いたします。

2.長期優良住宅法改正の概要

 ⑴ 改正のポイント

   本改正では,大きく以下の4点が改正されることとなりました。

  ① 認定対象の拡大|一括住棟認定制度の導入・良質な既存住宅の長期優良住宅認定
  ② 頻発する豪雨災害等への対応|災害リスクに配慮する認定基準の追加
  ③ 認定手続の合理化|民間機関による基準確認の実施
  ④ 容積率緩和の特例許可制度の創設|長期優良住宅型総合設計制度

 ⑵ ①認定対象の拡大|一括住棟認定制度の導入・良質な既存住宅の長期優良住宅認定

  ア 一括住棟認定制度

  従前,区分所有の共同住宅は各住戸の区分所有者がそれぞれ認定を受けることとされていましたが,共同住宅の認定促進に向けて手続を合理化するため,本改正では,管理組合の管理者等が一括して認定を受ける仕組みに変更しました。この結果,長期優良住宅建築等計画に基づく維持保全の実施・記録の作成や保存については,認定を受けた管理組合の管理者等が実施することとなりました。

(愛知県「長期優良住宅 法改正について」参照)

  イ 良質な既存住宅を長期優良住宅に認定(施行日は令和4年10月1日)

  従前の長期優良住宅認定制度は,建築行為を前提として,建築計画と維持保全計画をセットで認定する仕組みであったため,一定の性能を有するものであっても,増改築行為を行わない限り認定を取得することができませんでした。しかし,本改正によって,優良な住宅については増改築行為がなくとも認定(維持保全計画のみで認定)できる仕組みが創設されることとなりました。

 ⑶ ②頻発する豪雨災害等への対応|災害リスクに配慮する認定基準の追加

  本改正により,長期優良住宅建築等計画の認定基準として,自然災害による被害の発生の防止又は軽減への配慮に関する事項が追加されました。ここでは,自然災害のリスクは地域ごとに多様であることから,国が基本方針を示した上で,各所管行政庁が具体的な災害配慮基準を定めることとなりました。

 ⑷ ③認定手続の合理化|民間機関による基準確認の実施

  従前の長期優良住宅法では,所管行政庁への長期優良住宅の認定申請の際に,認定申請者が事前に登録住宅性能評価機関に対して技術的審査を依頼する場合がありましたが,当該審査は法令上の位置づけがなかったため,所管行政庁において改めて審査を行う必要がありました。

  そこで,本改正では,手続の合理化や審査結果の責任の所在の明確化の観点から,認定申請者は,あらかじめ登録住宅性能評価機関に対して当該申請に係る住宅の構造及び設備が長期使用構造等であることの確認を求めることができるようにし,長期使用構造等である旨が記載された確認書や住宅性能評価書等を添付して所管行政庁に上記申請を行った場合には,当該申請に係る計画が長期使用構造等であるとする認定基準に適合するものとみなすこととしました。この点は,後記住宅品質確保法にて特例として規定されています。

 ⑸ ④容積率緩和の特例許可制度の創設|長期優良住宅型総合設計制度

  認定長期優良住宅は,地域における居住環境の維持・向上に対する配慮がなされているのに加え,上記②のとおり,災害リスクに配慮した認定基準が追加される等,高い公益性を有するものとなっています。本改正では,このような認定長期優良住宅の性質を踏まえて,用途地域ごとに政令で定める規模以上の敷地面積を有し,市街地の環境の整備改善に資するものについては,特定行政庁の許可により容積率制限を緩和できる「長期優良住宅型総合設計制度」が創設されました。

3.住宅品質確保法等の改正概要

 本改正では,上記の長期優良住宅法改正と併せて,住宅品質確保法等の関連法令においても,主に以下のような改正がなされることとなりました(施行日ごとに整理して記載しております。)。

 ⑴ 昨年(令和3年)9月30日に施行
 ・【住宅品質確保法】住宅紛争処理に時効の完成猶予効を付与
 ・【住宅品質確保法】住宅紛争処理支援センターによる住宅の瑕疵情報の収集・分析と活用

 ⑵ 本年(令和4年)2月20日に施行
 ・【住宅品質確保法】民間機関による長期使用構造等であることの確認(上記2.⑷に係る改正) 

 ⑶ 本年(令和4年)10月1日に施行
 ・【住宅瑕疵担保履行法】リフォームや既存住宅売買等に関する瑕疵保険に加入した住宅に係る紛争を住宅紛争処理の対象に追加

4.今後の展望

 本改正は,従来の長期優良住宅の認定対象を拡大し,認定手続を合理化する等,既存住宅流通市場を活性化させるものである一方,災害リスクに配慮することを認定基準に追加する等,認定申請に当たって追加の考慮が必要ともなりました。各事業者におかれては,改正内容や各所管行政庁の要綱等を確認していただきたいところです。

【参考】

・国土交通省公表資料
https://www.mlit.go.jp/report/press/house04_hh_000981.html
・国土交通省「長期優良住宅認定基準の見直しに関する検討会」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000190.html

以上