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新最低賃金規制と可決された2021年雇用(改正)法案について

2022年05月13日(金)

新最低賃金規制と可決された2021年雇用(改正)法案についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

マレーシア法に関する最新情報

 

マレーシア法に関する最新情報
新最低賃金規制と可決された2021年雇用(改正)法案について

2022年5月
One Asia Lawyers Group
マレーシア担当
日本法弁護士 橋本有輝
マレーシア法弁護士 Najad Zulkipli

1.新しい最低賃金規制

 National Wages Consultative Council Act 2011 [Act 732] の第 23 条に従い、マレーシアの人的資源省大臣は、2022 年 4 月 27 日に公布された最低賃金令 [P.U.(A) 140/2022] (「MWO」)を制定しました。

 MWOの運用は、以下で説明するカテゴリー別に実施され、最も早いもので2022年5月1日に開始されます。なお、このMWOは家事使用人には適用されないことに留意する必要があります[1]

 本項では、MWOの主要な条項と、雇用主および人事担当者がこの法律の遵守を確実にするために取るべきステップを紹介します。

1.1 主な規定

 (a) カテゴリー1202251日発効):最低月額RM1,500.00

  -基本給ではなく、出来高払い、作業払い、歩合払い等の従業員
  -5 人以上の従業員を雇用する雇用主に雇用されている従業員
  -従業員の人数にかかわらず、専門職団体(以下、「専門職団体」)に雇用される従業員[2]

 (b) カテゴリー2202311日より発効):最低月額RM1,500.00

専門職団体以外の5人未満の雇用者に雇用される従業員

 要約すると、5人以上の従業員を抱える雇用主および専門機関(従業員数に関係なく)は、2022年5月1日から始まる新しい最低賃金に従わなければならない、ということです。5人未満の従業員を抱える雇用主(Professional Bodies以外)については、2022年12月31日までは以前の最低賃金を維持することができます。

 従って、上記MWOの影響を受ける雇用主は、給与が新しい最低賃金に沿ったものであることを確認しなければなりません。

 最低賃金令で定められた基本賃金を従業員に支払わない雇用主は、有罪判決を受けた場合、従業員一人当たり 10,000.00 RM以下の罰金に処されます[3]

2.雇用法(改正)2021国会での可決

 弊所は以前、1955 年雇用法の改正案について、2022 年 1 月 6 日付けのニュースレターにて言及していました。その後、2022 年 3 月 21 日、マレーシア議会の下院は、雇用法(改正)法案 2021(以下、「法案」)を可決しました。しかし、この法案は、上院の承認と王室の同意を得る手続き中であり、まだ正式に施行されていません。

 2.1 出産休暇(Maternity Leave)と育児休暇(Paternity Leave)の修正

  この法案で提案されたいくつかの変更点は、国会での審議を経てさらに修正され、特に出産休暇と育児休暇の日数について修正されたことは注目に値します。特に出産休暇と育児休暇の日数については、国際的な労働基準に従うため、90日の予定が98日に延長されました。

  育児休暇については、産後間もない時期に男性労働者の活躍を促すため、当初の法案の3日間ではなく、7日間で可決されました。この変更は、家族を持つ労働者を支援するための前向きな変更であると考えられています。

  その他、フレックスタイム制、セクハラ防止通知の掲示、外国人労働者の雇用、強制労働を妨げるための変更など、法案に提案された変更が追記なく可決されました(詳細は、2022年1月6日付ニュースレターをご参照ください)。

 2.2 雇用法適用のための給与上限について

  マレーシアの現在の雇用法の特徴として、従前、月額の給与がRM2,000以下の従業員にのみ適用される、という点がありました。

  ところが、法案審査の過程で、この従業員が雇用法の対象となるか否かを判別する現行の給与上限RM2,000は撤廃される予定とアナウンスされました。しかし、この点については、法案としては言及されておらず、大臣命令によって修正が行われる予定とのことです。

  同大臣令が公布されれば、給与の額にかかわらず、雇用の保護がすべての従業員に拡大されることになります。ただし、雇用法が適用されるには、一定の条件が導入されることも予想されており、未だその内容は確定しておりません。

3.結論

 マレーシアの雇用法は、近年最も急速に変化している法律のひとつです。

 健全でバランスのとれた労働文化を促進するため、最低給与、雇用保護、福利厚生、及び労働環境は絶えず改善され、また、最新の技術に対応するため、勤務形態もフレキシブルに大きく変化しています。 このような変化の中、法律や政策の立案者は、雇用のあらゆる側面において法律の妥当性と適用性を確保するため、法改正を随時行っています。

 私たちは、法律の専門家として、マレーシアの法律の最新の動向を提供し続け、お客様のビジネスニーズに沿ったアドバイスを提供することをお約束します。雇用法に関する法的アドバイスをご希望の方は、お気軽にお問い合わせください。

 

[1]1955 年雇用法第 2 条 1 号、サバ労働条例第 2 条 1 号[Sap.67]、サラワク労働条例第 2 条 1 号で定義されている「家事使用人」です。

[2]人的資源省が公表しているMalaysia Standard Classification of Occupations(MASCO)に基づく専門的な活動を行う「専門機関」の意味。例:エンジニア、弁護士、測量士、医療従事者等

[3] National Wages Consultative Council Act 2011 [Act 732] の第 43 条