• Instgram
  • LinkeIn
  • Lexologoy

日本の建設業における時間外労働の上限規制等について

2022年07月07日(木)

日本の建設業における時間外労働の上限規制等についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

日本:建設業における時間外労働の上限規制等

 

日本:建設業における時間外労働の上限規制等

2022年7月6日
One Asia Lawyers Group
弁護士法人One Asia
弁護士 江 副    哲
弁護士 川 島  明 紘

1. はじめに

 時間外労働・休日労働をさせるためには36協定の締結・監督署への届出を必要とすることを内容とする改正労働基準法(以下、「本改正法」といいます。)が2019年4月1日に施行されましたが、建設業等の一部の業種については、2024年3月31日までその適用が猶予されています[1]。来たる日に備えて、本改正法の内容を振り返ります[2]。既に本改正法が適用されている業種においても、現在の勤怠・労務管理が適切に行われているか振り返る機会としていただければと存じます。

2.本改正法の概要

 従前、労働時間については、原則1日8時間、1週間40時間を上限として、これを超える場合には36協定を締結・届出が必要となっており、36協定で定める時間外労働についても上限が定められていました(限度基準告示)。もっとも、臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情が予想される場合には、特別条項付きの36協定を締結すれば、限度時間を超える時間まで時間外労働を行わせることが可能となっていました。

 しかしながら、長時間労働がもたらす健康やワークライフバランスへの影響により、少子化・女性のキャリア形成・男性の家庭参加の阻害が懸念されることから、働き方改革の一環として、長時間労働の解消が求められていました。

その結果、従前では罰則のない限度基準告示によって定められていた上限が、本改正法においては罰則付きの上限として法律に規定されることとなり、加えて、臨時的な特別の事情がある場合にも上限が定められることとなりました。

 具体的には、時間外労働の上限は原則として月45時間、年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることができなくなりました(本改正法第36条3項)。また、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)であっても、以下の上限を超えてはならないこととなりました。これらに違反した場合、罰則(6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金)が科されるおそれがあります(本改正法第119条)。

 ・時間外労働が月720時間以内  ・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満  ・時間外労働と休日労働の合計について、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」が全て1月当たり80時間以内  ・時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6カ月が限度

3.最後に

  建設業に関して他業種よりも長い適用猶予期間が設けられている背景には、同業種における長時間労働の常態化や就業者の減少により、法改正への対応に時間を要することが指摘されています。建設技能者人口は1997年には464万人であったところが、2025年には215万人程度になると言われており、就業者の高齢化も年々進行しています[3]。社会全体で働き方改革が進んでいく中、新たな若手人材確保・定着、高齢就業者の安全確保の観点からも、建設業における業務効率化、長時間労働の解消は急務であり、各事業者におかれては、猶予期限を待たずとも、規則改訂等に向けた準備を是非進めていただきたいと思います。

以上

 

[1] 本改正のほかにも、働き方改革の一環として、「同一労働同一賃金」に関する法改正(建設業については2024年4月1日から。)、月60時間を超える時間外労働を行った場合の割増賃金率の引き上げ(2023年4月1日から。建設業かかわらず中小企業全体に適用されることになります。)が定められており、適用開始時期が決まっています。

[2] なお、本改正法ではこのほかに年次有給休暇取得の義務付け等も定められましたが(同改正部分については既に建設業においても施行されています。)、本ニュースレターにおいては時間外労働の上限規制を取り上げてご紹介しています。

[3] 日本建設業連合会によれば、建設業就業者の年齢別人口について、2020年時点で55歳以上が36%に対して、29歳以下は12%にとどまると指摘されています。