ラオス最低賃金の改正へ
ラオス最低賃金の改正についてのニュースレターを発行しました。
PDF版は以下からご確認下さい。
→最低賃金改正について
ラオス最低賃金の改正へ
2022年7月09日
One Asia Lawyers ラオス事務所
1.背景
2022年6月13日付でラオス首相府は、労働社福祉省からの最低賃金引き上げの要請に対して合意する告知(No829)を発行しました。これまで、3年ごとに改正されていましたが、今回の改正は、2018年5月以来、4年ぶりの改正となります(前回の改正については、ニューズレターをご覧ください)。
2. 告知の内容
最低賃金は、下記の通り、2期間分けて、10万キープずつ、段階的に引き上げられます。
1)2022年8月1日より、最低賃金を110万キープから120万キープ(約80USD)[1]へ引き上げます。
2)2023年5月1日より、120万キープから130万キープ(約87USD)へ引き上げます。
3)経験、専門性、職業スキル等のある労働者は、最低賃金より高い賃金を支払う必要があります。
4)事業体は、労働者を国の社会保障基金へ加入させる義務があります。
5)事業体は、労働者への健康診断を1年に1回行う義務があります。
3. 最低賃金に関する規定について
ラオスの最低賃金規定については、労働法105条の「最低賃金の定義」に加えて、労働社会福祉省労働局発行の「ラオスにおける労働者の最低賃金改正に関するガイドライン(2018年4月25日付112号)」の中で以下の通り、定義されています。
①労動者の基礎的な生活を保証するための政府が定期的に規定する給与または賃金水準
②1カ月26日、1週間6日および1日8時間を超えない範囲で労働した者に対して使用者が支払う賃金
最低賃金には、諸手当(時間外労働賃金、手当、賞与、食費、宿泊費、送迎費、その他の褒賞金等)は含まれない基礎給与を指すので注意が必要です。
なお、他国に見られるような地域別、職種別の規定はではなく、全国一律の最低賃金設定となっています。
上記、2. の告知内容の3)のとおり、専門的な技術を持った労働者、資格を持った労働者、前職からの在職証明を保有する労働者または試用期間を含めてすでに9カ月以上勤務している労働者に対しては、最低賃金以上の基礎給与を支給しなくてはならないと規定しています(同ガイドライン3.2条)。
また、健康を害するような環境が厳しい業務、たとえば有害物や化学物質を扱う業務、放射線や感染症にさらされる業務、ガスや煙を吸い込む業務、地下やトンネル内での業務、水中での業務、高所での業務、非常な高温や低温での業務、常時振動のある道具を使用した業務、へき地での業務などの場合には、最低賃金に15%を上乗せした額を支払うことが義務づけられていますので、留意する必要があります(同ガイドライン4.3条)。
[1] 2022年7月現在のレート(1USD=約15,000キープ)
以 上
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