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日本における改正借地借家法の概要について

2022年07月13日(水)

日本における改正借地借家法の概要についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

改正借地借家法の概要

 

改正借地借家法の概要

2022年7月13日
One Asia Lawyers 東京事務所
弁護士 松宮浩典

 2021年5月12日、「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」が成立し、同月19日に公布されました。この法律では、行政や民間の各種手続における押印・書面に係る制度の見直しのため、48の法律が一括改正されました。その中には、借地借家法の一部改正[1](以下「本改正法」といいます)が含まれており、借地借家法上の一般定期借地権の設定や定期建物賃貸借の契約手続等の電子化などが行われました。この借地借家法の改正に伴い、借地借家法施行令及び借地借家法施行規則が制定され、本改正は2022年5月18日から施行されました。

 本ニューズレターでは、上記法律によって改正された借地借家法、借地借家法施行令[2]及び借地借家法施行規則[3](以下「施行令」及び「施行規則」といいます)に関して解説いたします。

1 概要

 本改正法における改正[4]は、次のとおりになります。

 ①一般定期借地権の特約が電磁的記録でも可能
 ②定期建物賃貸借に係る事前説明書面の交付等が電磁的方法等でも可能

2 改正点の具体的内容

(1)一般定期借地権の特約が電磁的記録でも可能(本改正法第22条2項)

 一般の定期借地権(存続期間が50年以上の借地権)については、特約で法定更新や建物買取請求権等の制度の適用を排除することが可能ですが、その特約は公正証書等の書面による必要がありました(改正前第22条)。

 本改正では、この特約について、電磁的記録による特約も書面による特約と同様の扱いとされることになりました(本改正法第22条2項)。これによって電子契約システム等を利用したオンラインでの契約においても、一般定期借地権の特約を合意することが可能になりました。

第22条2項(定期借地権)

前項前段の特約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第38条第2項及び第39条第3項において同じ。)によってされたときは、その特約は、書面によってされたものとみなして、 前項後段の規定を適用する。

(2)定期建物賃貸借に係る事前説明書面の交付等が電磁的方法等でも可能(本改正法第38条)

 定期建物賃貸借(期限の定めがある建物の賃貸借)については、特約で法定更新の適用排除することが可能ですが、そのためには、公正証書等の書面による契約が必要であり、また、賃貸人は、賃借人に対して、事前に、契約の更新がなく、期間の満了により賃貸借が終了することについて、書面を交付して説明する必要がありました(改正前第38条1項及び2項)。

 本改正では、この特約について、電磁的記録による特約も書面による特約と同様の扱いとされることになり(本改正法第38条2項)、また、賃借人の承諾を得た場合には、説明の際の書面の交付に代えて電磁的方法により提供を行うことが可能になりました(本改正法第38条4項)。これによって、法定更新の適用のない定期建物賃貸借の契約について、事前説明書面の交付・説明から契約の締結まで、電子契約システム等を利用したオンラインでの対応が可能になりました。

第38条4項(定期建物賃貸借)

建物の賃貸人は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、建物の賃借人の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。)により提供することができる。この場合において、当該建物の賃貸人 は、当該書面を交付したものとみなす。

 電磁的方法の具体的な内容は、施行規則第1条1項に定められており、以下の①~③の方法であって、受信者がファイルへの記録を出力することにより書面を作成することができるものとされています。

 ①電子メール等を送信する方法
 ②アップロードしたファイルをダウンロードさせる方法
 ③情報を記録した媒体(USBメモリ、DVD、CD-ROM等)

 なお、事業用定期借地契約(第23条3項)については、引き続き公正証書による必要がある点については、留意が必要です。

 また、事前説明書面を電磁的方法で提供する際の手続は、賃貸人が賃借人に対して、利用する電磁的方法の種類・内容(上記①~③から選択及びファイルの記録方式)を示した上で、賃借人から書面又は電磁的方法で承諾を得るものとされています(施行令第1条)。ただし、承諾を得た場合で、賃借人から電磁的方法による提供を受けない旨の申し出があった場合は、書面での交付となります(施行令第2条)。

以上

[1] デジタル庁「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律(令和3年法律第37号)」新旧対照表、99頁以下

[2] 法務省「借地借家法施行令(政令第187号)」条文

[3] 法務省「借地借家法施行規則(法務省令第29号)」条文

[4] 法務省「改正の概要」