• Instgram
  • LinkeIn
  • Lexologoy

フィリピン電子自動車産業を推進

2022年07月14日(木)

フィリピンにおける電子自動車産業についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

フィリピン電子自動車産業を推進

 

フィリピン電子自動車産業を推進

2022年7月
シンガポール法・日本法・アメリカNY州法弁護士  栗田 哲郎
日本法弁護士   難波  泰明
フィリピン法弁護士  Cainday, Jennebeth Kae

第1      はじめに

 フィリピンは、日々のエネルギー需要にこたえるため、原油供給の約97%を輸入しており、経済活動の多くを他国に依存しています。[1]その中でも、最終エネルギー消費量のうち最も大きな割合である35%を占める運輸部門は、フィリピンの温室効果ガス排出の最大要因のひとつであり、環境に深刻な影響を与えています。

 これを受けて、フィリピン議会は共和国法11697号電気自動車産業開発法(Republic Act No. 11697, Electric Vehicle Industry Development Act (EVIDA)、以下「本法」という)を制定しました。この法律は、輸送部門における輸入燃料への依存を減らすことで国のエネルギー安全保障と独立性を確保し、公害や温室効果による危険から国民の健康と福祉を守り、世界からの投資を促進・誘致しながら国内の電気自動車産業を発展させることを目的としています。

本法は、政府機関や地方公共団体を動員して、自動車の電力化を促進し、需要の創出と産業の育成を図ることを目的としています。

本法のポイントは、以下の通りです。

第2 電気自動車産業開発のポイント

1 本法適用対象

 電気自動車産業開発法は、電気自動車、充電ステーションおよび関連機器、部品、バッテリー、関連サポートインフラの製造、組立、輸入、建設、設置、保守、取引および利用、研究開発、規制などに適用される主要な法律です。

 本法の適用対象として、以下の定義が規定されています。

 -電気自動車とは、自動車を駆動するために少なくとも1つの電気駆動装置を持つ車両を指し、バッテリー電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)、ハイブリッド電気自動車、軽電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車が含まれます。

 -充電ステーションとは、電気自動車またはそのバッテリーに電気エネルギーを供給するための機器を、特別な制御機能および通信機能を持つ筐体に設置した施設を指し、バッテリー交換ステーションを含め、車両外に設置される場合もあります。

 -配電事業者とは、配電システムを運営するためのフランチャイズまたは権限を有する電気協同組合、民間企業、または政府所有の公益事業者を指します。

 -グリーンルートとは、州、市、自治体が特定・指定し、運輸省(DOTr: Department of Transportation)が承認した電気自動車専用の公共交通路を指します。

2 電気自動車産業の総合的なロードマップ (CREVI: Comprehensive Roadmap for the Electric Vehicle Industry)

 この法律では、電気自動車の開発・実用化・利用を目的とした国家計画である電気自動車産業の総合的なロードマップ(CREVI)を定めています。CREVIは、以下の4つの柱から構成されています。

 ①電気自動車及び充電ステーション
  ・電気自動車及び充電ステーションの仕様と規格の開発
  ・電気自動車産業の促進
  ・電気自動車専用駐車場の配備
  ・電気自動車専用駐車場への充電ステーションの設置・建設

 ②製造部門
  ・電気自動車産業の製造地域の開発と促進
  ・電気自動車、バッテリー、リサイクル及び充電関連施設の基準の確立

 ③研究開発

 ④人材育成

3 需要創出と産業育成

(1)電気自動車使用割合の設定

 本法は、以下の事業者に対して、CREVIで定められた期間内に、使用する車両の5%以上を電気自動車とすることを義務付けています。

 ・貨物物流会社、食品配送会社、旅行会社、ホテル、電力会社、水道会社などの産業・商業企業

 ・ミニバス、バス、ジプニー、バン、トライシクル、タクシー、交通ネットワーク車両サービスなどの公共交通機関

 ・地方公共団体、政府機関、政府関係法人

(2)電気自動車専用駐車場及び充電ステーションの設置

 上記の使用割合の義務化に加え、民間および公共の建物や施設は、電気自動車専用の駐車場を割り当てることが義務付けられています。地方自治体は、電気自動車専用駐車場の設置基準を満たしていない建物や施設に対して、建設・改築の許可を出さないよう義務付けられています。

また、専用駐車場やガソリンスタンドへの充電ステーションの建設・設置も義務付けられています。

4 投資インセンティブ

(1) 財政的インセンティブ

 本法は、財政的なインセンティブと非財政的なインセンティブの両方が用意されています。

 ・電子自動車、充電ステーション、バッテリー、部品およびその部品の製造と組み立て、充電ステーション等の関連施設の設置運用は、1987年のオムニバス投資法(大統領令第226号)および1997年の国税法(大統領令第8424号)の修正案である企業再生および企業向け税制優遇法(共和国法11534号)による戦略的優先投資計画に含まれ、一定期間の奨励措置を受ける対象となるかの検討対象とされています。

 ・完全に製造された電気自動車の輸入は、TRAIN法(A. No.10963)に基づく奨励措置を受けることができます。

 ・本法の発効から8年間、完成された充電ステーションの輸入は、関税の支払いを免除されます。

 ・本法の発効から8年間、バッテリー電子自動車とハイブリッド電子自動車の自動車使用料、自動車登録料、検査料は、それぞれ30%、15%の割引を受けることができます。

(2) 非財政的インセンティブ

また、本法では以下のような非財政的なインセンティブも提供しています。

 ・優先登録、優先更新、特別な車両プレートの発行

 ・メトロマニラ開発局等の地方自治体が実施する強制的な統一車両量削減プログラム、ナンバーコード方式またはその他類似の方式による車両規制からの免除

 ・電気自動車を独占的に利用する事業者に対する公益車両の運行許可申請と更新の迅速な処理

 ・電気自動車メーカーや輸入業者による輸入の税関での迅速な処理

 ・電気自動車の製造業について、技術移転協定に基づく外国人専門職の雇用の許可

5 電気自動車等の普及を促進するための政府機関の役割

 本法は、政府機関や地方公共団体を動員して、電気自動車の導入を促進することを意図しています。特に、エネルギー省(DOE:Department of Energy)は、電気自動車の普及と充電ステーションおよび関連機器の開発を担当する主要機関として、他の関連政府機関や地方自治体と共に、本法に必要な認定や許可の発行など、必要な規制を公布し実施することが義務付けられています。

6 罰則

 本法および今後公布される関連規則に違反した場合、50,000ペソから500,000ペソの罰金、および許可証の停止や取り消しが行われる可能性があります。

第3 最後に

 フィリピンの電気自動車産業と市場を促進するための政府のこの積極的なアプローチにより、フィリピンにはバッテリーの主成分であるニッケルが豊富にあることも相まって、電気自動車のバッテリー製造などの他の産業についても、投資家にとって魅力的な環境が整ったといえます。さらに、本法が成立する以前から、フィリピン電気自動車協会(EVAP: Electric Vehicle Association of the Philippines)は、年間成長率が8〜12%で、2024年までに16億8000万ペソ(3360万ドル)の収入と20万台の販売を見込んでいます。 今後、需要が拡大すれば、さらに大きな成長が期待できるでしょう。

 引き続き、当事務所のニュースレターにおいてもアップデートをしていく予定です。

[1] http://wingatchalian.com/speech/sponsorship-speech-electric-vehicles-and-charging-stations-act-2/