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ラオスにおけるマイクロファイナンス業の外資規制緩和について

2022年07月18日(月)

ラオスにおけるマイクロファイナンス業の外資規制緩和についてのニュースレターを発行しました。PDF版は以下からご確認下さい。
マイクロファイナンス事業外資規制緩和について

ラオスにおけるマイクロファイナンス業の外資規制緩和について

2022年7月18日
One Asia Lawyers ラオス事務所

1.背景                            

 ラオスにおいてマイクロファイナンス事業(以下、MFI)を規定する法令は2012年発行の「マイクロファイナンス機関に関する首相令(No.460)」がありますが、外資制限率は明確に言及されていませんでした。その後、2016年に「マイクロファイナンス機関に関する首相令実施のための細則(No.01)」が発布され、預金型および非預金型マイクロファイナンス事業において、外国人投資家は登録資本金の最低10%以上最高30%まで株式を所有することが可能であると明記されました。

ここ数年、MFIの外資規制が緩和される可能性があることをラオス中央銀行へのヒアリングを通して耳にしていました。そうしてようやく、ラオス政府は2012年発行の首相令を10年ぶりに改正し、2022年6月20日付で「マイクロファイナンス機関に関する首相令(No.184)(以下、首相令)」を発行、同年7月12日に官報に掲載、15日後に施行されます。

今回は、改正点を中心に解説いたします。

2.マイクロファイナンス機関の設立とライセンス取得

MFIの設立においては、必要書類を揃えて、商工業省において、企業登録証の発給を受けたあと、ラオス央銀行(以下、中銀)において事業許可証(以下、事業ライセンス)を取得する必要があります(首相令第7条)。

首相令第8条に記載の事業ライセンス申請に必要な書類が完全に揃い、下記の条件を満たした事業者に対して、中銀は30日以内に事業ライセンス発行を許可すること(仮許可)を通知します(首相令第9条)。

条件1  資金が十分にあり、関係法令の定めを満たしていること

条件2  Feasibility Studyが完成していること、事業の実現性があること

条件3  株主及び経営者が、金融関係の犯罪で起訴されたことがないこと

条件4  経営者が、金融関係、銀行等のマネージメントの経験を有していること

上記1から4の条件を満たした事業者に対して、事業ライセンスの許可通知後、中銀は、さらに以下の5から7の条件を満たしている事業者に対して、正式な事業ライセンスを90日以内に発行します(首相令第9条)。

条件5 登録資本金の振り込みが完了していること

条件6 条件に見合った人材が確保できていること

条件7 事業に必要な設備(店舗、機器、システム機械等)が揃っていること

中銀は、上記の条件を満たしていない事業者に対して、90日間の改善期間を与えますが、それでも改善されない場合は、事業ライセンスの発行拒否通知を出します(首相令第9条)。

事業ライセンスの有効期限は、事業実施期間中となっており、更新等の必要はありません(首相令第13条)。

3.登録資本金、外資規制について

 今回の改正により、下記の表の通り、外資規制が緩和され、特に非預金型の場合は、外資100%でも事業への参入が可能となりました。なお、首相令が改正される前に設立したMFIは、首相令施行後2年のうちに、首相令に従った会社形態へ移行する必要があります。

 

MFIの形態

預金型

非預金型

会社構成

・株主総会

・取締役会

・内部監査委員会

・取締役委員会

・下部組織

※預金型の場合は、一人株主会社は認められません(首相令第18条)。

※定款は、株主総会及び中銀により承認される必要があります(首相令第12条)

外資規制

外資51%まで

(首相令第10条)

外資規制なし

(首相令第68条)

最低登録資本金

30億キープ         現物出資の場合は、登録資本総額の10%以下(首相令第11条)

10億キープ

現物出資の場合は、登録資本総額の10%以下(首相令第69条)

事業範囲

・預金

・小口融資

・決済事業、担保、保険代理店、その他中銀が認めた金融事業(首相令第30条)

・小口融資

・決済事業、担保、保険代理店、その他中銀が認めた金融事業(首相令第72条)

上限金利

2021年6月4日付のニューズレターをご参照下さい

 

4.会社構成について

(1)株主総会(首相令第18条、19条)

株主総会は、最低1年に1回、年次会計を閉じた後、遅くても4月までに開催する必要があります。その他の条件は、会社法に基づきます。

(2)取締役会(首相令第21条)

 取締役会は3人~7人を構成員とします。少なくても、一人は社外役員を取締役とする必要があります。社外取締役は選挙により選出、あるいは年次株主総会で任命されます。任期は3年で、再選出も可能です。また、取締役会は最低3か月に1度開催しなくてはなりません。

(3)内部監査委員会(首相令第24条)

 委員会のメンバーは3人以上です。そのうち一人は会計業務の経験がある必要があります。メンバーは選挙により選出、あるいは取締役会により任命されます。

(4)取締役委員会(首相令第26条)

委員会のメンバーは、マネージング・ダイレクター(MD)及び副MDより構成されます。

 MDは選挙により選出、あるいは取締役会で任命されます。任期は3年で、再選出も可能です。また、副MDは、MDからの推薦の下、取締役会により任命されます。

5.禁止事項

1.外貨で事業を行うこと

2.金融機関以外の個人や法人からの借入れ

3.特定の顧客(会社役員の家族、親戚等)に対して特別なサービスを提供すること

4.融資を行った顧客で、返済が滞っている場合、新規で融資を行うこと

5.他の会社の株主となる場合、一つの会社に対して5%を超えて株式を保有すること。また、他社の株式を会社全体で30%以上保有すること等

以 上

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)