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シンガポールの賭博改正法の施行および企業が注意すべき点について

2022年08月16日(火)

シンガポールの賭博改正法の施行および企業が注意すべき点についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

シンガポールの賭博改正法の施行および企業が注意すべき点

 

シンガポールの賭博改正法の施行および企業が注意すべき点

2022年8月
One Asia Lawyers Group
Focus Law Asia LLC
シンガポール法・日本法・アメリカNY州法弁護士
栗田 哲郎

シンガポールの「Gambling Control Act 2022」および「Gambling Regulatory Authority of Singapore Act 2022」 が、2022年8月1日から施行されます。本法律の改正点は「Gambling Regulatory Authority (以下、「GRA」」という単一の規制当局の設立、「ソーシャルギャンブル」の合法化、代理ギャンブルや未成年者のギャンブルを取り締まるための新たな刑罰の実施など多くの変更が含まれています。

本改正により、本法律の対象が広がったため、賭博業界以外の企業業務も「ギャンブル」と見なされ、GRAの規制の管轄に入る可能性があるため注意が必要となります。

1 「ギャンブル」の再定義

「Gambling Control Act 2022 (以下、「GCA」)」では、ゲーム参加者が何かを失うリスクがあるか否かに関わらず、賞金を得るためのGame of Chance(運の要素のあるゲーム)を行うことはギャンブルと見なされます[1]。 通常、「運の要素のある」ギャンブルはポーカーやコイントスなどゲームのイメージがありますが、今回のGCAにおいてはそのギャンブルの定義を拡大し、参加者の運および腕前が影響を与えるゲーム(games involving elements of chance and skill)も含むものとしています。すなわち、たとえ参加者の腕前によって、運の要素が排除されるゲームであった場合でもギャンブルと見なされる可能性があることとなります。従って、参加者は賞金を得るために、ビリヤードやダーツなどのゲーム、ランダムな要素を含む対戦型ビデオゲームをする場合、ギャンブルであると見なされる可能性があります。しかし、シンガポール政府により、官報にて発表された特定のスポーツイベント、試合または競技などの活動はGCAの目的に対する運の要素のあるものではないと宣言されたものについては、ギャンブルの定義から除外されることとなります。

さらに、GCAが定めたギャンブルの定義には「lottery(くじ引き)」も含まれています。「lottery」とは腕前の要素も含まれていながら、あらゆる段階において運の要素に従って懸賞を得る活動のことです。すなわち、改正法では、参加者が参加するためにお金を払う必要がない場合でも、福引、くじ引き、懸賞はギャンブルの一種であるとみなされる可能性があります[2]。そして、商品やサービスを購入してくじ引きをできるようにすることも、くじ引きの一種であるとみなされます[3]

2 「ソシャルギャンブル」の合法化について

GCAでは、ソシャルギャンブルは認可が必要ではない合法の活動になります[4]。ソシャルギャンブルとは、家庭で親戚と友人の間で行われる自然発生的なギャンブル活動です。ソシャルギャンブルでは、参加者以外の人が利益を得ることだできない、営業活動として行われられないため、企業はソシャルギャンブルの免除を行使できません。

3 Class License」の導入について

通常、運の要素によるギャンブルやくじ引きなどギャンブル活動を行うためには、事業者はGRAからのギャンブルのライセンスを取得しなければなりません。ギャンブルのライセンスの申請手続きにはかなりの時間がかかることが想定されています。しかし、「Class License」制度の下、ギャンブルのライセンスを持たない事業者は、GRAによってリスクが低いと判断された特定のギャンブルサービスを運営することができます[5]

上記に示す広義のギャンブルの定義を考慮すると、Class Licenseのルールは、最初に事業者がギャンブルライセンスを取得することを必要とせずに、特定の運の要素を含むプロモーションやサービスを提供する事業を規制することを意図しています。事業者はClass Licenseを申請する必要はありませんが、該当するClass Licenseのカテゴリーの全ての条件及び規定に従わなければなりません。条件及び規定には、提供される掛け金またはチケットの数、賞金の制限、事業者の提供するギャンブルサービスの頻度、必要な記録、広告に関する規則などが含まれています[6]が、これらに限定されるものではありません。各事業者は条件及び規定に従わない場合、Class Licenseに基づくギャンブルサービスを運営する資格を失う可能性があります。

4 どのようなClass Licenseがあるか

現在、GRAが公表しているClass Licenseは以下の活動となります。Class Licenseに基づくギャンブル活動を行おうとする者は、活動を開始する前に、ライセンスで定められた条件を満たすことを確認する必要があります。

・Mystery Boxes – 日本のガチャなど中身が不明なアイテムが入った箱を顧客に販売すること。
・Remote Games of Chance – プレイヤーが価値のある褒賞を得られる運の要素を含むオンラインゲーム。例えば、オンラインゲームのルートボックス。
・Promotional Lotteries and Games of Chance – 企業の商品やサービスをプロモーションするキャンペーンとして行うくじ引きやゲーム。企業は参加者から参加費を徴収してはなりません。
・Incidental Lotteries and Games of Chance – 祭りなどのイベントで行われる付帯的な活動として提供されるくじ引きやゲーム。これらの活動への参加は、無料かつイベント関係者のみに限定されなければなりません。
・Fund-Raising Lotteries – 特定のチャリティーへの資金を調達するために行われるくじ引き。
・Other Lotteries and Games of Chance – 公共団体によりその目的を促進するために行われるくじ引きおよびゲーム、教育機関または企業が研究及び調査プロジェクトの参加者を募集するための活動も含まれています。

5 新ギャンブル法のもと企業はどのような対応を取る必要があるか

一般的に、GCAでは、あらゆる運や偶然性の要素が含まれるサービスおよび活動が「ギャンブル」の一形態とみなされます。そのようなキャンペーンを実施する企業は、その活動がGRAの公表するClass Licenseに基づく事業に該当するかどうかを確認する必要があります。

現在利用可能なClass Licenseは潜在的な状況のほとんどをカバーすると思われますが、各企業は、各Class Licenseが規定する詳細な条件(褒賞や広告の規制など)に従っていることを確認する必要があります。現在、GRAのホームページにはClass Licenseの規定の詳細がほとんど記載されていません。今後数ヶ月のうちにさらなる情報が公表されると考えられますが、それまでに、その活動が該当するClass Licenseに適合しているかどうか分からない事業者は、GRAに直接連絡することが推奨されます。

以上

[1] Section 7(6) of the GCA 2022.

[2] Section 9(1) of the GCA 2022.

[3] Section 9(2) of the GCA 2022.

[4] Section 12(1) of the GCA 2022.

[5] Section 60(1) of the GCA 2022.

[6] Section 62(1) of the GCA 2022