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日本における改正資金決済法の概要について

2022年08月16日(火)

日本における改正資金決済法の概要についてニュースレターを発行いたいました。
PDF版は以下からご確認ください。

改正資金決済法の概要

 

改正資金決済法の概要

2022年8月16日
One Asia Lawyers 東京事務所
弁護士 松宮浩典

 2022年6月3日、「安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律[1]」(以下「改正法」といいます)が第208回国会で成立しました。

1 概要  

 米国を中心とした海外における電子的支払手段(いわゆるステーブルコイン)の発行や流通の増加、銀行等における取引モニタリング等の更なる実効性向上の必要性の高まり、高額で価値の電子的な移転が可能な前払式支払手段の広がりなどの影響により、金融のデジタル化等に対応し、安定的かつ効率的な資金決済制度を構築する必要があるとされ、本改正が行われました。

 改正法における主な改正点[2]は、次の3つになります。

 ①電子決済手段等取引業等の創設
 ②為替取引分析業の創設
 ③高額電子移転可能型前払式支払手段への対応

 本ニューズレターでは、①の電子決済手段等取引業等の創設について取り上げます。

2 電子決済手段等取引業等の創設

(1)電子決済手段の新設

 改正法では、「電子決済手段」という概念が新設され、その基本的な内容として以下の通り規定されました(改正法第2条5項1号)。

第2条

5 この法律において「電子決済手段」とは、次に掲げるものをいう。

一 物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されている通貨建資産に限り、有価証券、電子記録債権法(平成19年法律第102号)第2条第1項に規定する電子記録債権、第3条第1項に規定する前払式支払手段その他これらに類するものとして内閣府令で定めるもの(流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定める者を除く。)を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(第3号に掲げるものに該当するものを除く。)

 

 当該定義では、電子決済手段の要素として通貨建資産に限定することが定められており、規制の対象となるいわゆるステーブルコインについて明確化されました。

(2)電子決済手段等取引業者への登録制の導入

 電子決済手段等の発行者と利用者との間に立つ仲介者が行う以下の対象行為について「電子決済手段等取引業」と定義されました(改正法第2条10項)。そして、電子決済手段等取引業者として電子決済手段等取引業を営むためには内閣総理大臣の登録を受けることが必要とされ(改正法第2条12項、第62条の3)、また、電子決済手段等取引業者には各種の行為規制が課されることになりました。これらの概要は以下の通りです。

 

項目

該当条文

内容

対象行為

改正法第2条10項

・電子決済手段の売買・交換、管理、媒介等

・資金移動業者を代理して預金債権等の増減を行う行為

参入要件

改正法第62条の6第1項

・電子決済手段等取引業を適正かつ確実に遂行する体制の整備

・一定の基準に適合する財産的基礎を有するなど

業務に関する規制

改正法第62条の10~第62条の16

・情報の安全管理

・委託先に対する指導

・利用者の保護等に関する措置

・金銭等の預託の禁止

・利用者財産の管理

・発行者等との契約締結義務

・指定電子決済手段等取引業務紛争解決機関との契約締結義務等

監督について

改正法第62条の18~第62条の24

・帳簿書類の保存

・報告書の作成

・立入検査、業務改善命令など

 

 また、電子決済手段を発行する銀行等又は資金移動業者は、自身の発行する電子決済手段について電子決済手段等取引業を行うことが認められています(改正法第62条の8第1項)。

 なお、銀行の代理で電子決済手段を仲介する場合については「電子決済等取扱業」という概念が新設されました(改正銀行法[3]第2条17項)。そして、電子決済等取扱業を営む「電子決済等取扱業者」については登録制とした上で(改正銀行法第2条18項、第52条の60の3)、改正法における電子決済手段等取引業者とおおむね同様の規制が課されることになりました(改正銀行法第52条の60の11乃至第52条の60の15)。

以上

[1] 金融庁「改正資金決済法 新旧対照条文」

[2] 金融庁「改正の概要」

[3] 金融庁「改正銀行法 新旧対照条文」