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カンボジアにおける訪問販売・非対面方式販売を対象としたクーリングオフ制度の導入について

2022年08月16日(火)

カンボジアにおける訪問販売・非対面方式販売を対象としたクーリングオフ制度の導入についてニュースレターを発行いたしました。

PDF版は以下からご確認ください。

訪問販売・非対面方式販売を対象としたクーリングオフ制度の導入

 

訪問販売・非対面方式販売を対象としたクーリングオフ制度の導入

2022 年 8 月 16 日
One Asia Lawyers カンボジア事務所
日本法弁護士 吉田 重規

 カンボジア商業省は、2022 年 4 月 11 日付けでクーリングオフに関する省令第 113 号(以下、「本省令」)を施行し、施行日の 6 ヶ月後から適用が開始されることになりました(2022 年 10 月 12 日から適用)。
 一般的にクーリングオフとは、消費者保護を目的とし、商品・サービス等の販売契約後、一定の期間中、消費者に解約権を認める制度をいいます。日本におけるクーリングオフ制度は、訪問販売・電話勧誘販売などに対して適用があります。本省令では、これらに加え、Eコマースなど非対面方式の販売に対しても適用があり、より対象が広くなっていることに注意を要します。もっとも、下記の通り、種々の例外があります。
クーリングオフ期間(解約が認められる期間)は、売買契約などの翌日から 7 日間とされています。
 事業者には、書面による契約条件の告知義務、消費者の解約権を認める義務が課されており、また、違反に対しては罰則も定められているため、注意を要します。

1.対象となる取引
(1) 消費者を相手方とした取引
 消費者(個人、家庭、家族のために商品またはサービスを購入する者)を相手方とした事業者の取引に適用があります。事業者間の取引には適用がありません。
(2) 取引類型
 以下の(ア)(イ)のいずれかに該当する場合、適用対象となります。もっとも、(ウ)で述べる通り、例外が多く設けられています。
(ア) 非対面方式(隔地者間)の販売
 取引当事者が、事業者の事業所で直接顔を合わせることなく行われる商品・サービスの販売取引をいうとされます。
 電話による販売・E コマースなどの、事業者と消費者とが対面せず行われる販売取引が、これに該当します。
(イ) 訪問販売(Door-to-door Sales)
 事業者が、消費者の所在地・公共の場所などの、事業者の所在地以外の場所で行う商品・サービスの販売取引をいうとされます。
 典型的には、事業者が消費者の住居を訪問し勧誘、販売を行う場合がこれにあたります。

(ウ) クーリングオフの対象とならない取引
 以下の取引については、非対面方式・訪問販売方式でなされても、クーリングオフの対象になりません。
 ① 試用期間を定めた商品販売(民法 520 条)
 ② 以下に該当する商品の販売
 a. クーリングオフ期間中に、事業者の支配の及ばない金融市場の動向により、価格が変動する商品
 b. 受注生産品(消費者の注文に従い製造された商品 )
 c. 消費期限が短い商品(製造日から 30 日以下)
 d. 気候等の状況によって腐敗しやすい消費期限が 30 日以下の商品
 e. 消費者により包装が破かれ、衛生上の理由で返品ができない商品
 f. 飲料品の販売
 g. オーディオ、ビデオ、コンピュータプログラムの販売で、配送後に消費者によって包装が破かれたもの
 h. 新聞、チラシ、雑誌の販売(これらに関連する購読の場合を除く)
 i. 競売で販売される商品
 j. 消費者が所有するハードウェアに保存されていないデジタルコンテンツの販売で、クーリングオフに関する権利放棄を行った後に消費者が使用したもの
 k. 200,000 リエル(約 50US ドル )以下の商品の販売
 l. 無償提供された商品、値引き販売された商品
 ③ 以下に該当するサービスの販売
 a. クーリングオフ期間の終了前に、消費者から事前に書面によるクーリングオフに関する権利の放棄の同意を得て、サービスを完全に提供する場合
 b. クーリングオフ期間中に、事業者の支配の及ばない金融市場の動向により、価格が変動するサービス
 c. 消費者の住居での保守または修理を伴う緊急のサービスで、消費者が付属品の交換を特に要求したもの
 d. 宿泊施設、貨物の配送、車両のレンタル、ケータリングまたはレジャー活動に関するサービスで、特定の日時に提供されるもの
 e. すべての銀行業務
 f. 200,000 リエル(約 50US ドル )以下のサービスの販売

2.クーリングオフに基づく解約・返金
(1) 解約の方法
 クーリングオフ期間中、消費者は、事業者に対し事業者所定の方法に従い、事業者に対して書面で通知することにより、無条件で商品・サービス販売契約を解約することができます。消費者は、解約についての理由も説明する必要はありません。
 なお、消費者が商品を著しく棄損した場合等においては、消費者は解約することができなくなります。
(2) クーリングオフ期間
 クーリングオフ期間は、7 日間ですが、期間の開始日は取引の種類によって異なります。以下のそれぞれに該当する日の翌日から起算し、7 日間となります。
(ア) 非対面方式の販売
 ①サービスの販売の場合:契約締結日
 ② 商品の販売の場合:消費者またはその代理人(配達人を除く)が商品を受け取った日
 ただし 2 回以上に分けて配達される商品の場合、その最終の配達日
(イ) 訪問販売の場合:契約締結日
(3) 返金
 契約が解約された場合、事業者は、解約通知を受けた日から 7 日以内に、販売代金の全額を返金する必要があります。返品費用・商品破損の場合の費用など、例外として省令で定められているものを除き、解約に関する費用を消費者に負担させることはできません。
3. 事業者の義務
 クーリングオフの対象となる取引を行う場合、事業者には以下の義務が課されます。
(1) クーリングオフについての消費者の権利に関する情報の提供
 消費者のクーリングオフに基づく解約権の行使の機会を与えるため、商品・サービスの販売に際して、以下の各情報を提供することが義務付けられます。
 ① 解約のための書式とその提出方法
 ② 事業者の連絡先と、連絡手段(E メール等の電子的方法、またはその他の適切な手段)
 ③ 解約についての条件に関する情報(商品が未使用と同様の良好な状態であること等)
 ④ 返品により生じる費用についての情報
(2) 消費者の権利行使を認めること・代金の返金
 消費者がクーリングオフに基づく解約権を行使する場合、その権利行使を認めること、代金全額(返品費用・商品破損の場合の費用などを除く)を返金することが義務付けられます。
4. 罰則
 クーリングオフについての消費者の権利に関する情報の提供義務に違反した場合(上記3(1)への違反)、消費者保護法 48 条(情報提示義務違反に対する行政罰)の対象となるとされ、最大で 10,000,000 リエル(約 2,500US ドル)の罰金が科されます。
 事業者が、消費者に販売代金を返金しない場合、または消費者の解約権の行使に関して損害賠償などの請求をした場合は、消費者保護法 44 条に定める不公正な行為とみなされます。これらは、同条に基づき、最大で 50,000,000 リエル(約 12,500US ドル)の罰金の対象となります。