ラオスにおけるダム安全法の成立
ラオスにおけるダム安全法の成立についてのニュースレターを発行しました。PDF版は以下からご確認下さい。
→ダム安全法について
ラオスにおけるダム安全法の成立
2022年11月03日
One Asia Lawyers ラオス事務所
1.背景
ラオスにおいて、ダムの安全基準について包括的に規定している法令は存在しておらず、ダムの建設に関しては、個別のガイドライン等に従って、安全基準も含め規律されてきました。
2018年7月にラオス南部アッタプー県で発生した建設中のダムの決壊事故をきっかけに、ラオス政府は一時的にダムの新規建設を中止し、全国のダムを対象とした安全点検及び監査を実施することになりました。ダムの決壊事故により、多くの住民の命と財産が奪われ、ラオスだけではなく、下流のカンボジアにおいても、洪水が発生し、避難勧告が出されました。
決壊事故から4年が経過し、ラオスは、2020年11月に国際大ダム会議(INTERNATIONAL COMMISSION ON LARGE DAMS)に正式に加盟し、ダムの新規建設は再開されたものの、建設基準と安全性を徹底することが、喫緊の課題となっています。
今回、ラオス政府は、2022年7月7日付で「ダム安全法」を成立させました。同法は、10月1日から施行し、同法の成立により、建設されたダムが国際的な安全・品質基準を満たしているかどうかを判断し、政府がダム施工者を監視する体制が整うことが期待されています。なお、同法は、ダムの高さが5m以上かつ貯水量が10万㎥以上のダムを対象としています。
ダムの安全管理体制の導入部分について、解説いたします。
2.ダム安全管理組織
ラオス政府は、ダムの安全管理を統括する最高責任者であり、エネルギー・鉱山省がその実務を担っています。ダム安全管理組織は、エネルギー・鉱山省及びその管轄下にある県、郡レベルのエネルギー・鉱山局(事務所)により構成されています。また、灌漑用ダム及び水道用ダムについては、農林省及び公共事業運輸省が管轄しています。
3.ダム安全監査組織
ダム安全監査組織は、内部監査及び外部監査に分類されます。内部監査は、上記2.のダム安全管理組織と同一の組織です。
外部監査は、国民議会、県国民議会、政府査察機関、政府監査機関、退役軍人協会、民衆組織及び国民を指します。
4.ダムのリスク分類登録
(1)ダムのリスク分類
ダムのリスク分類とは、ダムの安全性を確保するための対策、調査における基準、設計、建設及び運営、管理、検査計画及び緊急時の対応計画を決定するための分類です。
ダムの高さ、貯水池の容積、ダム下流部のリスク人口、及び経済社会的及び環境への影響評価に従って、次の4つのカテゴリーに分類されます。
1. 低リスク
2. 中程度のリスク
3. 高リスク
4. 重大なリスク
各タイプのリスクを分類するための基準は、別途定めに従うとあります。
(2)ダムのリスク分類の登録
ダムの施工者は、ダムの建設図面が承認されてから60日以内に、ダムのリスク分類を登録する必要があります。同法が施行される前に、建設が完了しているダムについては、12か月以内に登録する必要があります。登録が完了すると、証明書が発行されるますが、更新の都度、安全面に関して包括的な検査を実施すことになります。証明書の有効期限や登録に関する詳細は別途定めるとあります。
5. 監査・検査の頻度
ダムの施工者は、詳細かつ完全な監査・検査をダムのリスク分類ごとに規定された時期に従って、実施する必要があります。なお、監査・検査内容の詳細は、別途規定するとあります。
重大なリスク:貯水後または深刻な災害後、5 年ごと
高リスク:貯水後または深刻な災害後に 8 年ごと
中リスク:貯水後または深刻な災害後、10 年ごと
低リスク:深刻な災害後
以 上
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