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港湾法の一部を改正する法律の概要について

2022年12月13日(火)

港湾法の一部を改正する法律の概要についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

港湾法の一部を改正する法律の概要

 

港湾法の一部を改正する法律の概要

2022年12月13日
One Asia Lawyers 東京事務所
弁護士 松宮浩典

 2022年11月18日、「港湾法の一部を改正する法律」(以下「改正法[1]」といいます。)が公布され、2022年12月16日より施行される予定です(ただし、一部の規定を除く)。

1 背景

 カーボンニュートラルポートの形成や港湾の安定的な機能維持・管理の効率化を図るため、今回の改正が行われました。エネルギー・産業構造の円滑な転換に必要な港湾における脱炭素化の取り組みを官民連携により推進するための仕組みを整備するとともに、パンデミックや災害時における港湾機能の確実な維持や、民間活力を活用した港湾空間の形成を図るための措置等を講ずることが内容となっています。

2 概要

 本改正法における主な改正点[2]は、以下の3点が挙げられます。

 ①港湾における脱炭素化の推進
 ②パンデミック・災害の際の港湾機能の確実な維持
 ③港湾の管理、利用等の効率化と質の向上

 本ニューズレターでは、上記①及び③について解説いたします。

3 港湾における脱炭素化の推進

 (1)港湾の基本方針への位置づけの明確化

 国が定める港湾の開発等に関する基本方針(以下「基本方針」といいます。)に、港湾が果たすべき役割として「地球温暖化の防止及び気候の変動への適応」など脱炭素化に関する事項が明記されました(改正法第3条の2第3項)。

 また、港湾法の適用を受ける港湾施設に、船舶に給油及び給炭の用に供する施設の他に、水素、燃料アンモニア等の動力源を補給する施設等も追加されました(改正法第2条第5項)。

(2)港湾における脱炭素化の取組の推進

 官民の連携による港湾における脱炭素化の取組を推進するため、「港湾脱炭素化推進計画」制度が創設されました(改正法第50条の2第1項)。

 港湾管理者は、港湾脱炭素化推進計画を作成することができ、主な記載事項は以下の(1)~(6)になります(改正法第50条の2第2項)。

 (1)官民の連携による脱炭素化の促進に資する港湾の効果的な利用の推進に関する基本的な方針
 (2)港湾脱炭素化推進計画の目標
 (3)前号の目標を達成するために行う港湾における脱炭素化の促進に資する事業(以下「港湾脱炭素化促進事業」といいます。)及びその実施主体に関する事項
 (4)港湾脱炭素化推進計画の達成状況の評価に関する事項
 (5)計画期間
 (6)上記(1)~(5)に掲げるもののほか、港湾脱炭素化推進計画の実施に関し当該港湾管理者が必要と認める事項

 なお、港湾脱炭素化推進計画は、基本方針に適合したものである必要があります(改正法第50条の2第4項)。

 さらに、港湾管理者は、港湾脱炭素化促進事業を実施すると見込まれる者、関係する地方公共団体や港湾利用者等からなる港湾脱炭素化推進協議会を組織し、港湾脱炭素化推進計画の作成及び実施等に関し協議することができます(改正法第50条の3)。

4 港湾の管理、利用等の効率化と質の向上

 港湾緑地等において、カフェ等の収益施設の整備と当該施設から得られる収益を還元して緑地等のリニューアルを行う民間事業者に対し、緑地等の貸付を可能とする認定制度が創設されました。貸付を受けようとする事業者は、港湾環境整備計画を作成し、認定を申請することが可能です(改正法第51条第1項)。

 港湾環境整備計画への記載事項及び認定要件は、次のとおりです。

【記載事項】(改正法第51条第2項)

 (1)貸付けを受けようとする緑地等の区域
 (2)緑地等の貸付けを受けようとする期間
 (3)(1)の区域において整備する飲食店、売店その他の施設であって、当該施設から生ずる収益の一部を(4)に規定する港湾の施設の整備に要する費用の全部又は一部に充てることができると認められるものに関する事項
 (4)(1)の区域において整備する休憩所、案内施設その他の港湾の環境の向上に資する港湾施設に関する事項
 (5)(3)、(4)に掲げるもののほか、(1)の区域において行う緑地等の維持その他の港湾の環境の整備に関する事業に関する事項
 (6)資金計画及び収支計画

【認定要件】(改正法第51条の2第1項)

 (1)当該港湾環境整備計画の内容が当該港湾の港湾計画に適合するものであること
 (2)当該港湾環境整備計画の実施が港湾の環境の向上に資すると認められるものであること
 (3)当該港湾環境整備計画の内容が当該港湾の利用又は保全に著しく支障を与えるおそれがないものであること
 (4)当該港湾環境整備計画が円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであること

 認定計画が認定要件のいずれかに該当しなくなった場合、及び必要な措置をとる旨の勧告に従わなかった場合は、認定を取り消される場合があります(改正法第51条の4第1項、第2項)。

以上

[1] 国土交通省「港湾法の一部を改正する法律案」新旧対照条文

[2] 国土交通省「港湾法の一部を改正する法律案」概要