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フィリピンにおける商標・サービスマーク等に関する新規制について

2023年03月13日(月)

フィリピンにおける商標・サービスマーク等に関する新規制についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

フィリピンにおける商標・サービスマーク等に関する新規制について

 

フィリピンにおける商標・サービスマーク等に関する新規制について

2023年3月
日本法弁護士   難波  泰明
フィリピン法弁護士  Cainday, Jennebeth Kae
シンガポール法・日本法・アメリカNY州法弁護士  栗田 哲郎

第1 はじめに

 2017年、Intellectual Property Office of the Philippines (IPOPHL、フィリピン知的財産庁)は、商標登録における行政手続きの合理化とフィリピンにおける知的財産権の強化のため、「The Revised Trademark  Regulations of 2017」(2017年改訂版商標規則)を発行しました。しかし、当該ガイドラインは、Republic Act No. 8293(IP Code、知的財産権法)に基づき規定された非伝統的な視覚商標を含むものではありませんでした。非伝統的な視覚商標を含めるため、また商標権に関する方針と実務の進展を踏まえ、IPOPHL Memorandum Circular No. 2023-001、「Rules and Regulations on Trademarks, Service Marks, Trade Names and Marked or Stamped Containers of 2023, Replacing the Revised Trademark Regulations of 2017」(2017年の改訂商標規則を全面改定する2023年の商標、サービスマーク、商号及び標識又は刻印のある容器に関する規則及び規制)が発行されました。

 これに加えて、IPOPHL Memorandum Circular No.2023-001は、IPOPHLとの書類および支払いの送信、受領を可能にするオンラインシステムを正式に導入し、迅速な対応を可能にしました。

 以下、IPOPHL Memorandum Circular No.2023-001の主要な条項を説明します。

第2 Memorandum Circular No.2023-001

 2023年2月14日に発効したIPOPHL MC No.2023-0001によって導入された主な変更点は以下のとおりです。

1.ルール101 – 改正規則では、以下の新しい定義が定められました。

 i. Actual Use(実際の使用) - 公衆を対象とした実際の営業目的を示す通常の取引過程における使用をいう。

 ii. Certification Mark(認証マーク) – 商品、サービスの地域的またはその他の地理的な原産地、材料、製造方法、品質、正確さ、またはその他の特性、商品、サービスに関する作業または労働、並びに商品、サービスに関する作業、労働がグループ・団体のメンバーによって行われたことを認証するために、その所有者以外の第三者が所有者の許可を得て商業的に使用し、または使用することを予定した標識をいう。

 iii. Communication(コミュニケーション) - 事務所に対して提出された拒絶理由通知、嘆願書、要求、および申し立てに対する応答、または維持要件もしくは権利に影響を与える文書に関連する提出物であって、提出期限の遵守に関するものを除く。

 iv. Mailing date(郵送日) - 電子通信システムを通じて、または該当する場合は申請者・登録者もしくはその代理人が指定した登録電子メールに最初に送信された日をいう。拒絶理由通知または通知が、電子通信システムまたは申請者・登録者またはその代理人の電子メールの両方を通じて受信された場合、より遅い受信日とする。

 v. Translation(翻訳)とは、フランス語を英語で表現するように、ある言語の単語を別の言語で等しい意味にすることをいう。

 vi. Transliteration(音訳)とは、漢字をローマ字やラテン文字に変換するように、ある言語の単語、文字、または文字を、音の類似性によって他の言語やアルファベットの対応する単語、文字、または文字に変換することをいう。

2.規則203-優先権を主張する出願の要件が改正され、非伝統的な商標のうち、一連の動きやホログラムが申請可能な表現として定められました。

3.規則206-Declaration of Actual Use(DAU)の更新について-従来の規則では、2017年1月1日に更新期限が到来する登録商標は、登録維持のためにDAUを提出する必要があるとされていました。しかし、新しい規則では、DAUの更新は登録の有効期限切れの6か月前までに提出することと明記されています。

4.規則210-商標の実際の使用(Actual Use)に関して認められる証拠は、以下のとおり改正されました。

IPOPHL MC No. 17-010 (改正前)

IPOPHL MC No. 2023-001 (改正後)

a.                   使用されているマークのラベル

b.                   フィリピンで商品が販売されていること、またはサービスが提供されていることを明確に示すウェブサイトをダウンロードしたページ

c.                   実際に使用されている商標の付いた商品、商標が印字または付された商品の容器、サービスが提供されている施設・設備の写真(普通紙に印刷したデジタル写真を含む)

d.                   商標が実際に使用された商品またはサービスがフィリピン国内で販売され、または提供されていることを示すパンフレットまたは広告物

e.                   商品または提供されたサービスの販売に関する領収書または請求書、またはその他の商標の使用を示す類似の証票であって、フィリピン国内で商品が市場におかれていること、またはサービスが利用可能であることを示すもの

f.                    商標の使用を示す役務提供契約の写し

a.                   フィリピン国内で、商品が販売されていること、またはサービスが提供されていること、または利用できることを明確に示すウェブサイトをダウンロードしたページ

b.                   次に掲げるものの写真(普通紙に印刷したデジタル写真を含む)

(i) 商品に実際に使用されている商標を付したラベルまたは包装

(ii) 商標が印字または付された商品の容器

(iii) 商標が表示された看板または商標が表示された施設

c.                   商標が実際に使用された商品またはサービスがフィリピン国内で販売され、または提供されていることを示すパンフレットまたは広告物

d.                   商品または提供されたサービスの販売に関する領収書または請求書、またはその他の商標の使用を示す類似の証票であって、フィリピン国内で商品が市場におかれていること、またはサービスが利用可能であることを示すもの

e.                   商標の使用を示す役務提供契約の写し

f.                    長官が許容する、類似の性質を有する他の証憑

5.規則2- 団体商標および認証マークに関する新しい規則が追加されました。同規則では、団体商標または認証マークの登録申請の際、当該商標を記載したうえで、団体商標の使用を規定する協定がある場合はその写し、認証マークの使用を規定する認証機関が定めた基準がある場合はその写しを添付しなければならないとしています。

6.規則402-出願時の商標の複製に関するガイドラインも改正されました。最も重要なのは、色彩のみからなる商標、位置商標、動き商標、ホログラム商標、立体商標に関する規定が盛り込まれたことです。

7.規則503-事務連絡の提出および送信の方法に関する新しい規定が追加され、電子メールまたはオンラインによる提出および送達が正式に実施されました。現在では、IPOPHLのオンライン提出システム(eTMFile)を通じて提出する必要があります。IPOPHLへのその他の通信は、IPOPHLのオンライン提出システム、eDocFileを使用してオンラインで提出することができます。

8.規則601:IPOPHLによって優先的に処理される例に加え、現在では、パンデミックの準備や対応、または医薬品製剤やワクチンなどの公衆衛生上の緊急事態への対処に直接関連する商品やサービス、すなわち、フェイスマスク、フェイスシールド、手袋、実験衣などの個人防護具(PPE)、医療機器や実験器具、除菌剤や消毒剤、科学・実験サービス、医療サービスに使用する、または使用する商標の出願も可能となりました。

9.その他、免責事項に関する規則(規則604)、登録証の内容に関する規則(規則803)が改正され、立体商標、位置商標、色彩のみからなる商標に関する規則が追加されました。

10.また、手続規則も改正されています。詳しくは、2023年商標規則(参照:https://drive.google.com/file/d/1kfczZkVpKiWuFiRSgG5OIlAKvYvRXsB9/view)をご参照ください。

第3 企業がとるべき対策

 商標登録に関する新しい規則が施行されましたので、登録商標を有している企業の皆様はご留意ください。また、立体商標、位置商標、色彩のみからなる商標に関する新しい規則も発行されましたので、関連する商標を使用している企業の皆様は、適宜申請されることをお勧めします。詳細については、下記までお問い合わせください。

 引き続き、当事務所のニュースレターにおいてもアップデートをしていく予定です。