ラオスにおける公証役場制度について
ラオスにおける公証役場制度についてのニュースレターを発行しました。PDF版は以下からご確認下さい。
→公証役場制度
ラオスにおける公証役場制度について
2023年3月29日
One Asia Lawyers Group ラオス事務所
1.背景
ラオスにおける公証役場法は1991年12月に制定され、その後、2009年に改正されています。公証役場法が施行されてから、約20年以上経過していますが、公証役場制度がラオス国民にいまだ理解されていないこと、契約書がラオス法に準拠していないことを理由とした紛争等が多く発生しており、同制度の国民への周知および制度の強化に関する通達が2016年に首相から発行されています。
今回、ラオス政府は、2022年12月29日付で公証役場法を改正、2023年3月15日に官報に掲載、3月30日より施行される予定となっています。ラオスにおいて、公的な公証機関は司法省管轄下の機関と外務省管轄下の大使館、領事館が担う認証作業があります。契約内容によっては、多くの関連書類を要求されたり、契約内容の修正を求められたりすることが多く、他国と比較しても、手続きが複雑であり、また、公証人による恣意的な判断も散見される状態でした。今回の改正により、どのような契約書を公証すべきか、より明確に示されていますので、国民の公証に対する意識が高まることが期待されます。
今回は、司法省管轄下の機関での公証(以下、公証役場)を中心に解説いたします。
2.公証の対象、種類
公証役場において、対象となる認証の種類は以下の通りです(同法第9条)。
1)契約書
2)遺言
3)夫婦の財産に関する所有権の確認(婚前財産、婚姻財産、共同財産)
4)原本からコピーした文書
5)署名または拇印
6)人物証明(写真と本人を照合)
7)文書提出先および提出日
8)翻訳
9)遺産相続に関する書面
10)その他文書
翻訳文書も公証可能かどうかというご質問を受けますが、同法第17条によると、「外国語からラオス語、ラオス語から外国語の文書」が公証可能と規定されています。過去の実務においては、例えば、日本語から英語へ翻訳した文書であっても認証が可能ですが、ラオス語訳が必須となりますので、ご留意ください。
なお、公証役場は、翻訳内容が正しいか否かは判断しませんので、翻訳者が責任を持つこととなると規定されています(同法第17条)。実務的には、翻訳会社が翻訳したという証拠がある翻訳証明を公証役場に提出することが、望ましいといえます。
3.契約書の公証
同法の改正前は、どのような契約書が公証の対象であるのか詳細な記載はありませんでしたが、改正後は以下の通り、いくつか分類されています。なお、下記に分類されない契約書であっても、公証することが可能です(同法第10条)。
1.登録済み車両の売買、交換、リース、譲渡契約
2.不動産の売買、交換、リース、譲渡契約
3.不動産および登録済み車輛担保設定したローン契約
4.合弁契約書
5.株式、またはあらゆる活動の売買、譲渡契約
6.コンセッション契約
7.法律で公証が義務付けられている契約
4.認証の意義、効果
事実と法律に従って認証された契約書や文書は、活動を行う中で、契約当事者、公証申請人または関係者にとって、より高い証拠力が認められ、契約書が適法であるという重要な要素となります。また、認証があれば、紛争解決の検討又は当局の訴訟手続き上、法的な根拠となり、執行力が高まると、規定されています(同法第19条)。
5.認証の手続き
契約書の公証を必要とする者は、自身の居住地、契約締結地、不動産の所在地に所在する所轄の公証役場へ直接又はオンラインで申請 をすることが可能です(同法第21条)。
公証人は、申請書受理後、3日以内に、関連資料が真正性、適法性、事実の存在等を検討します。書類に不備や誤りがあった場合は、書類の訂正や追加資料の提出を求めて、最大で15日間、検討する期日を延長することが可能となっています(同法第22条)。
その後、公証人の面前で契約書の内容を認証、承諾、合意するため、一部例外を除き、署名者本人が公証役場へ出向く必要があります(同法第24条)。当事者が同日に出向けない場合は、別々の日に設定することも可能となっています。
実務的には、例えば、担保契約書の場合、公証役場の書式に従い、公証人の面前で同契約に署名したことを自らラオス語で記述し、署名をすることになります。従って、署名者本人がラオス語を解せない場合、ラオス語が理解できる通訳者を伴う必要がありますので、留意が必要です。
以 上
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