ラオス : リース業法令の細則について
ラオス : リース業法令の細則についてのニュースレターを発行しました。PDF版は以下からご確認下さい。
→細則について
ラオス:リース業法令の細則について
2023年4月28日
One Asia Lawyers Group ラオス事務所
1.背景
2021年8月に「リース業に関する首相令(以下、リース業法)」が施行されています(詳細は8月13日付ニューズレターを参照下さい)。ラオス中央銀行(以下、中銀)は、その後、リース業法に関連する以下の二つの細則を発行しています。
1)2021年12月8日付「リース業法のガイドライン(No01)(以下、ガイドライン)」
リース業法の第2条(リース業の定義)、第6条(リース業の種類)、第11条(リース会社の権利と義務)、第13条(契約の履行)、第15条(事業許可証取得に必要な書類)、第30条(報告義務)及び36条(リース会社の禁止事項)について、補足説明をしています。
2)2023年3月20日付「リース契約書に関する合意(No265)(以下、合意)」
主にリース契約書に規定すべき項目とその説明をしています。
今回は、ガイドラインの第6条(リ-ス業の種類)、第11条(リース会社の権利と義務)、第13条(契約の履行)及び合意に関しては、リース契約内容の詳細(利息、罰金の計算方法など)、重要なポイントを解説いたします。
2. リース業の種類について
リース業法第6条において、3種類のリースの取引の種類が記載されていましたが、英語の表記がありませんでした。ガイドラインでは、その3種類が、①Financial Lease、②Operating Lease ③Hire Purchaseという表記にて英語でも併記されています。また、各取引のリース物件の種類、契約期間、契約終了時の所有権、リース物件の保守管理、リースの目的などが、以下の表のとおり、まとめられています。
特に、リース業法において、各取引の契約期間は、中期、長期という曖昧な記載でしたが、ガイドラインでは、次の通り、年数が明示されています。
|
Financial Lease (ファイナンス・リース) |
Operating Lease (オペレーティング・ リース) |
Hire Purchase (ハイヤーパーチェス) |
リース物件 |
飛行機、船、工業分野で使用する重機など |
車両、IT機器、事務機器・備品など |
全種類の車両、電気製品、高価なものなど |
契約期間 |
3年以上 |
5年以内 |
1年から5年 |
契約終了後の 所有権 |
借手の再リース、買取、返却のいずれか契約内の条件によって異なる |
リース会社(リース会社へ返却) |
借手 |
リース物件の保全管理責任者(費用負担者) |
借手 |
リース会社 |
借手 |
3.リース会社の債権回収、物件回収手続きについて
リース業法第11条「リース会社の権利と義務」の中の第9項において、「リース物件の返却請求又は借手の契約違反によるリース物件の返却催促」とあり、ガイドラインでは、その方法について記載があります。
(1)リース物件の返却又は損害賠償請求
リース会社は、借手が契約違反をした場合、借手に対してリース物件の返却又は損害賠償請求を行うことが可能です。但し、借手に対して、脅し、追及、暴力、武力等で請求を迫ることは禁止されています。
また、リース会社が、第三者に請求を委任した場合は、委任された者は、リース会社が定めた請求方法、規定、ガイドライン等に従う必要があります。
(2)リース物件の返却又は損害賠償請求に関する規定
一連の手続きは、リース会社が作成したガイドライン又は規定に従うことになります。ガイドラインの内容は、以下の項目を含める必要があります。
①請求先:例)借手、保証人又は契約内で定めた借手が許可した委任された人
②請求場所:例)契約内で記載した借手の連絡場所
③請求日時:例)日ごと、月ごとの請求回数、時間
④請求方法:例)電話、Email、文書の送付又は契約内で規定した連絡場所へ訪問、口頭による場合は、脅し、暴言の禁止又は借手の身体や財産を傷つけるような暴力、武力を使用することを禁止
4.契約不履行による紛争の解決について
リース会社は、借手からの要求を受理、調査、解決するための管理職を指南役とする部署や責任者を社内に構築する必要があります。そして、紛争解決の担当部署や責任者の情報と借手の要求方法や手続きについて規定し、リース契約書の別添として、契約書ごとに添付する必要があります。
また、紛争解決の方法は、「消費者保護法」、「金融サービスの利用者保護に関する首相令」等に基づき、以下の項目について規定します。
①和解又は調停による解決
②中銀による解決
③経済紛争解決センターによる仲裁
④裁判所へ提訴
②の中銀による解決は、中銀は、リース会社と借手の仲裁人として、共有された当事者に関わる情報に基づき、双方の合意が得られる解決へと導く役割を果たします。中銀による仲裁で解決しない場合は、紛争解決センター及び裁判所による紛争解決手続きへと進みます。
5.リース契約書について
(1)リース契約書の体裁と契約締結
リース契約書は、ラオス語のフォント(Phetsarath OT)を使用し、文字の大きさは12ポイントで作成する必要があります。英語の文章、単語を使用する際は、ラオス語を先に書き、その後ろにカッコ付きで英語を書く必要があります。ラオス語に翻訳できない英語の文章や単語の場合は、その英語をラオス文字で記載する必要があります(合意第5条)。
リース契約書は、リース会社がそのドラフトを借手及び保証人に対して、署名する前に確認してもらうか、読み合わせをする必要があります(合意第5条)。
リース契約書は、原本を少なくとも2部用意する必要があり、双方が署名後は、1部を借手に渡す必要があります(合意第5条)。
(2)リース料について
①金利
減額金利制(リース料の残高に対して金利を計算する方法)又は均等金利制(物件価格と金利を合算した額を返済回数で割る方法)であるのか、契約締結前に、借手が理解できるようにリース会社は説明する義務があります(合意第7条)。
②返済遅延による罰金(違約金)
原則、罰金の計算方法は、契約書の中で定める必要があり、罰金率は、契約書内で定めた金利(年間)の150%を超えることは認められません。具体的な罰金の額の計算方法は以下のとおりです(合意第9条)。
罰金(違約金) =(遅延額×罰金率) ÷ 360日 × 返済遅延日数
なお、リース料支払日が、土曜日、日曜日、祝日に設定している場合、その該当日に支払いができなくても、遅延とはみなさず、翌日以降の平日を支払日とします(合意第9条)。
(3) 契約満期前の物件購入について
契約満了前に別件を購入する場合はその条件について太字で契約書に記載し、契約書に署名前に借手に説明をする必要があります(合意第11条)。
以 上
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