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ラオスにおけるリース業法令の改正について

2021年08月13日(金)

ラオスにおけるリース業法令の改正についてニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

リース業法令の改正について

 


ラオスにおけるリース業法令の改正について

 

2021 年8月13日

One Asia Lawyersラオス事務所

  • 1.背景

ラオスにおけるファイナンス・リース等の金融リース業法規制としては、1999年の首相令(Decree on Financial Leasing(No11/PM))がありましたが、5、6年前から改正案に関する会議が行われてきました。そして、ようやく2021年7月2日付でリース業に関する首相令(以下、「リース業法」)が発行、2021年7月30日に官報に掲載、15日後に施行される予定となっています。

なお、すでにラオスでリース業を行っている会社は、施行後2年以内に、同リース業法に則った業務形態へ移行する必要があります。

今回は、ラオスにおける新リース業法を基礎に、対象となる取引の形態及びリース会社設立の概要をご紹介いたします。

  • 2.法律上の定義

リース業法第2条によれば、リース業とは、「機器や機械設備等のリース物件をリース会社が直接提供し、又はリース物件の調達人となり、借手に賃貸すること」と定義されています。なお、リース物件は、改正前は、目的物となり得る「動産又は不動産」と定義されていましたが、改正後は、「動産」のみとなっている点に留意が必要です(リース業法第3条4項)。

  • 3.リース業の種類について

リース会社は、以下の3種類の取引が可能となっています(リース業法第6条)。これらのいずれかを行う場合、その事業者は、リース業法の対象となります[1]

①ファイナンス・リース

②オペレーティング・リース

③ハイヤーパーチェイス[2]

リース業法第6条によれば、上記3種類の取引の特徴は次のとおりです。

種類

契約期間

所有権

維持管理

契約満期後

①   ファイナンス

・リース

中・長期

リース会社

借手(占有権、使用権)

①返却

②買取

③契約更新

(再リース)

②オペレーティング

・リース

合意した期間

リース会社

リース会社

①返却

②契約更新

(再リース)

③ハイヤーパーチェイス

合意した期間

借手(割賦払い完了後に所有権移転)

借手

所有権移転

 

  • 4.リース契約内容の概要について

リース契約の基本的な内容は以下の通りとされており、書面で作成する必要があります(リース業法第10条)。

1.リース物件の詳細、例えば、種類、年式、シリアルナンバー等

2.リース物件の価格、リース料、リース料と支払額の計算方法

3.リース期間

4.損害又は修理が必要な場合の契約条件

5.保険(もしあれば)

6.契約不履行規定及び罰則規定(もしあれば)

7.紛争解決規定

8.契約終了又は解除規定

9.その他、両者の必要合意事項

ファイナンス・リースの場合は、上記の項目以外に、金利(ハイヤーパーチェイスの場合も同様)、期限満了後のリース物件の選択肢(返却、買取、再リース)を記載する必要があります。

また、1億キープ(約10,000米ドル)以上の契約の場合は、公証役場で認証する必要があると明記されておりますので、留意が必要です(リース業法第10条)。

  • 5.契約の履行について

借手がやむを得ない理由により支払いができない場合、例えば、遠隔地へ出張、病気などの場合は、リース会社に文書で通知する必要があります。しかし、上記理由が解決した後、15日以内に、借手は、リース料の支払いを精算しなくてはなりません。

借手が、リース料を期日に従って3回続けて支払わなかった場合、リース会社は、30日以内に支払うように知らせる必要があります。借手が、上記で定めた期日以内に支払いが行われなかった場合、リース会社はリース契約を解除することができ、また、リース物件の返却を借手より受けることができます(リース業法第13条)。

  • 6.リース会社の設立について

リース業法第16条によれば、リース会社を設立しようとする者は、商工省、都・県商工局等で企業登録を行った後(一人株主会社の形態は、認められません)、ラオス中央銀行(以下、中銀)より事業許可書を取得する必要があります。事業許可取得に必要な書類の中には、実現可能性調査(Feasibility Study)をはじめ多くの書類を要求されますが、すべてラオス語で作成する必要があります。なお、通常の会社と異なり、定款は中銀より承認を受けた後に有効となりますので、ご留意頂く必要があります。

(1)登録資本金

最低登録資本金は、50億キープ(約50万米ドル)以上と規定されています。現物出資は許容されていますが、登録資本金額の10%を超えることはできません(リース業法第17条)。

(2)取締役会・取締役委員会

取締役会の役員は3人以上と規定されています。任期は3年間で、再任も可能となっています(リース業法第23条)。取締役委員会も義務化されており、マネージング・ダイレクター(MD)、副MDから構成される必要があります(リース業法第26条)。

  • 7.事業許可取得要件

企業登録後、事業許可書に必要な書類を揃えて、中銀に提出後、15日以内に審査結果が通知されます。中銀は書類の審査と同時に、申請者が以下の要件を満たしているかどうかについても審査します(リース業法第16条)。

(1)資金原が十分かつ明確であること

(2)実現可能性調査内容に説得力があり、実行可能であること

(3)役員の金融に関連する経験、知見が十分であること

(4)株主に刑事事件履歴がないこと

中銀は、申請者が上記の要件を満たし、さらに下記の要件も満たしていると判断した場合、45日以内に事業許可証を発行します。許容できる理由により、下記の要件のいずれかを満たしていない場合、中銀は、さらに45日間、要件を満たすまで猶予を与えます。

(1)登録資本金の払い込みが完了していること

(2)人員の配置がある程度整っていること

(3)事業の実施を保証する機器、技術、場所が整っていること

(4)事業の実施、監督、管理システム等内部環境が整っていること

8.最後に

2017年5月18日に中銀より、「ラオスにおける金融関連事業に関する事業ライセンスの発行一時停止」が発行され、2019年2月まで、新規会社設立のための申請書は受理しないことが通知されていました。しかしながら、許可を得ないで金融業を行っている会社(特にマイクロファイナンス事業)が多く存在し、法令を整理する必要があることから、2019年2月以降も、中銀は、金融業の事業申請書を受理しない方針にあり、いつ解除になるのか不明な状態が続いていました。しかしながら、リース業については、中銀でのヒアリングによれば、リース業法の改正及び施行により、申請書の受理および事業許可書の発行が開始される見込みとのことです。

[1] 文言上、対象となる取引は広範に及んでいますが、実務上どこまで適用対象となるかは中央銀行等の関係当局の判断によると想像されます。

[2] ハイヤーパーチェイス契約については、民法第414条から第417条においても規定が存在しております

以 上

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)