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ラオスにおける防災・消化設備基準について

2024年10月17日(木)

ラオスにおける防災・消化設備基準についてのニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

防災基準について

 

ラオスにおける防災・消化設備基準について

2024年10月16日
One Asia Lawyers Groupラオス事務所

1.背景

首都ヴィエンチャンでは、コンドミニアムのような高層の建物やショッピングモール、空港、鉄道の駅など収容人数が大きい建物が徐々に増えています。また、国の発展にともない、環境や景観を損なわない建築物、環境、障がい者や高齢者にやさしい建物が注目され始めています。それにもとない、建築物の安全性を確保するために、建築基準も見直す必要が出てきました。

そこで、公共事業運輸省は、2024年9月13日付で「建築基準に関する合意(No25207)(以下、合意)」を発行し、官報掲載日(2024年10月9日)から、45日後に施行されます。合意は、建築物の安全性を確保するための様々な基準が定められていますが、今回は、特に防災設備に関する基準を中心に解説します。なお、ラオスでは、2007年に「火災防止法」が発行されていますが、建物火災以外の火災も含んだ一般的な規定であり、今回発行した合意のような、建物火災に特化した法令は存在していない状況です。

2.防災設備について

合意では、第38条から第49条まで防災・消化設備について規定されています。防災・消化設備には以下のような設備があり、設置基準や条件の詳細が別添に記載されています。

(1)避難経路表示・誘導灯

(2)火災・煙報知設備

(3)避雷針

(4)安全管理棟

(5)換気設備

(6)排煙設備

(7)加圧防排煙設備(Pressurized Smoke Control System)

(8)消火器

(9)消火栓設備(Fire Hydrant System)

10)スプリンクラー設備 (Sprinkler System)

11)消防ポンプ設備 (Fire Pimp System)

12)非常用エレベーター

 3.建築物のレベルについて

建築物は、その広さ、高さ及び使用目的によって、4段階及び高リスク(火災発生時に生命や財産に大きな影響を及ぼす施設)に区分され(対象建築物)、防災・消化設備の設置の義務が決定されます。

<対象建築物のレベル(合意第7条)>

レベル1

使用面積400㎡未満、高さ10m未満

レベル2

使用面積400㎡以上10,000㎡未満、高さ10m以上20m未満

レベル3

使用面積10,000以上30,000㎡未満、高さ20m以上100m未満

レベル4

使用面積30,000 ㎡以上、高さ100m以上

高リスク

公共の施設(人が密集する施設、娯楽施設、映画館、競技場、観覧席のある場所、空港の待合場、公共交通機関の乗り場、工業施設、可燃性のものを保管する施設、起爆性のあるものを置く施設など

 <防災設備設置基準(合意別添4)>

防災設備

設置義務

設置免除の建築物

避難経路表示・誘導灯

 

すべての建築物

レベル1

個人の住居

火災・煙報知設備

 

すべての建築物

レベル1

個人の住居

避雷針

 

・高さ20m以上の建築物

・工場、危険物保管庫、商業施設、教育施設、病院等

 

安全管理棟

・レベル3及びレベル4

・地下面積1,000㎡以上の建築物

200人以上収容できる施設

 

換気設備

不明

 

排煙設備

・レベル3及びレベル4のすべての建築物

・地下又は小窓(又は窓がない)のある、床面積1,000㎡以上の建築物

 

加圧防排煙設

Pressurized Smoke Control System)

各階に水平距離50m未満で設置

防煙区画10㎡以上

 

消火器

床面積200㎡以上のすべての建築物

 

消火栓設備

(Fire Hydrant System)

すべての建築物

レベル1

個人の住居

スプリンクラー設備

 (Sprinkler System)

・床面積5,000㎡以上建築物

・床面積1,000㎡以上かつ高さ20m以上の建築物

・高さ31m以上の建築物

・多層式倉庫で天井までの高さが8m以上かつ床面積1,500㎡以上の建築物

 

 

消防ポンプ設備

(Fire Pomp System)

・ジョッキーポンプ等

 

非常用エレベーター

・レベル3及びレベル4のすべての建築物等

・高さ31m以上の階の床面積が1500㎡以下の場合は、1基設置する

・高さ31m以上の階の床面積が1500㎡以上の場合は、3000㎡ごとに1基ずつ増やす

 

 4.基準検査及び検査証明書の発行

対象建築物に対する基準検査の主な実施機関は公共事業運輸省(以下、検査実施機関)です。検査実施機関は、3回にわたり、検査を実施、証明書を発行します。1回目は、建設が許可される前に図面との整合性を検査します。2回目は、建設中に計画どおり建設されているか検査を行い、最後は建設後、建築物を使用中に、耐久性及び安全性を検査します。

そのほか、年に1回、建築物が使用用途と整合しているか、安全性は確保されているかなど検査を行います(通常検査)。さらに、5年に1回の大規模な検査を行います(合意第60条から第64条)。

既存の対象建築物については、構造、防災・消防設備、内部の衛生環境及び利便性について検査を行い、合意に従い改善されたことが確認できた場合、検査証明書が発行されます(合意第66条)。

従いまして、合意発行前に建設した企業が所有している既存の対象建築物がある場合、首都であれば公共事業運輸省都市計画・住宅局(Department of Construction and Urban Plan)、県であれば公共事業運輸課、郡であれば公共事業運輸事務所による検査を実施してもらう必要があります。

 5.罰則規定

建設事業者が、合意に規定された防災・消火設備の設置義務(手続き、設置基準、技術基準を含む)を満たさず、防災設備設置対象の建築物を建設した場合、建設許可を取得せずに建設した場合、自然・社会環境に負の影響があった場合は、処罰の対象となります(合意第70条)。

           以上

yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)

 


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