2025年上半期のベトナムにおける法改正まとめ ①
2025年上半期のベトナムにおける法改正についてのニュースレターを発行いたしました。こちらの内容は、以下のリンクよりPDF版でもご覧いただけます。
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2025年8月19日
One Asia Lawyers ベトナム事務所
1.はじめに
2024年8月にトー・ラム氏がベトナム共産党書記長に就任して以降、政治・経済改革が急速に進展しています。2025年3月には中央省庁の統廃合が行われ、同年7月には地方省・市の再編が行われ、地方行政組織も3層体制から2層体制へと変更されました。
これに歩調を合わせるかのように、法律の制定と施行も急テンポで実施されています。2025年6月末に閉会した第15期国会第9回会議においては、ベトナムの立法史上稀にみる、34本もの法令が制定または改正され、その多くが同年7月1日に施行されています。これもまた、スピードアップを志向する上記のガバナンス改革の成果を示すものといえます。
本年1月から6月末までの立法状況の概要について、今回は政府組織と地方政府の改革に関連して制定/改正された法律の概要についてご紹介し、次回はビジネスの観点から注目される法令をご紹介します。
2.政府組織と地方政府の改革に関連して制定/改正された法律の概要
政府組織と地方政府の改革に関連して制定/改正された法律の概要は以下のとおりです。
◇国会組織法(改正)62/2025/QH15(施行日:2025年2月17日):
国会常務委員会の議長・副議長らの人事権を強化し、法律案の立案・審議・公布手続きを明確化しました。法律の一時停止の導入や臨時会の招集権拡大など、立法運営の柔軟性と透明性を向上させる規定が追加されました。
◇政府組織法(改正)63/2025/QH15(施行日:2025年3月1日):
中央政府の再編・効率化を目的とする省庁の統合・再配置を実施するための改正です。同時に公布された「政府の組織構造と国会の組織構造に関する決議」(176/2025/QH15)と政令177/2025/QH15号に基づき省庁の統廃合が実施され、行政コストと重複を低減し、迅速な政策実行を可能にしました。
◇地方政府組織法(改正)65/2025/QH15(施行日:2025年3月1日):
中央政府と地方政府の権限の明確化と地方への分権化を強化し、地方政府の自主性を促進する法的枠組みを確立することを目的とした改正です。地方政府と地方議会の権限を見直すとともに、行政単位の組織の設置、解散、合併、分割、行政境界の変更などの条件を規定して、行政の効率化と行政単位設置計画の柔軟性を確保しました。
◇法規文書公布法(改正)64/2025/QH15(施行日:2025年4月1日):
法規文書の体系の明確化と拡大、特に地方政府が発行する法規文書の種類と権限の細分化・明確化がなされました。また、法規文書の公報掲載義務を強化し、中央および地方の法規文書が電子公報に掲載されることが義務付けられました。立法プログラムの策定プロセスも改善され、国会の任期立法指針がより明確に規定されました 。緊急案件の処理手続きが導入され、迅速な法改正が可能になりました 。
◇憲法改正決議 Resolution 203/2025/QH15(施行日:2025年6月16日):
地方政府は6月30日をもって従来の3層構造(省、郡、コミューン)を改め、郡レベルの行政区(省・中央直轄市傘下の市、区、郡、町)を廃止し、7月1日から、省・中央直轄市レベルと、下位のコミューンレベルの行政区(市、村、街区、特区)から成る2層構造に移行しました。
◇地方政府組織法(改正)72/2025/QH15(施行日:2025年6月16日):
2025年3月に成立した法65号の運用を補強・具体化するもので、地方政府の制度運用の柔軟性と実効性の向上を目的としています。主な改正点として、①特別行政単位(特区)の組織構造や設置条件の明確化、②住民による政策形成・監視への参加制度(住民会議、公聴会など)の整備、③地方住民委員会の任務・構成の明示、④行政境界の調整における住民意見反映手続の整備、⑤地方の政策立案・執行における自治体の裁量強化が挙げられます。これにより、分権型行政の定着と地域ガバナンスの質的向上が図られています。
◇法規文書公布法(改正)87/2025/QH15(施行日:2025年7月1日):
法規文書体系を拡張し、地方人民議会および人民委員会が発する法規文書を正式に国家の文書体系に組み込みました。法規文書の発布手順、登録、効力発生日のルールが詳細化され、地方行政レベルにおける文書の制定・公布手続が明確化されました。これにより、文書管理における重複や不一致が回避され、全国的な一体運用が可能となります。加えて、法規文書の公告、体系化、情報公開制度の整備も進められ、地方自治体における法的運用の透明性・責任性が向上し、法治国家としての基盤強化が期待されます。
3.上記法改正に関して注目すべきポイント
上記の法改正により、2025年3月から7月にかけて、中央政府および地方政府のレベルで大幅なリストラが実施されました。この改革により、以下のような効果が期待されます。
1.立法制度の近代化と透明化:
国会組織法と法規文書公布法の改正により、立法プロセスの柔軟性と即応性が高まり、変化する社会経済状況や緊急事態に対して、ベトナムの立法機関が迅速に対応するための基盤が強化されました。
2.行政の効率化と統治改革:
中央レベルと地方レベルの組織構造の再編・簡素化により、行政コストの削減、政策執行スピードの向上、中間管理職の簡素化による指揮命令の明確化が図られます。
3.投資・事業環境の改善:
行政手続の簡素化や法制度の安定化・予測可能性向上により、企業の行政負担の軽減や投資環境の透明性・信頼性の向上が期待されます。
2025年上半期のベトナムにおける法改正まとめ②に続く

