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インドネシア:リスクベースの事業ライセンスシステムの実施に関する政府規則2025年28号の施行

2025年08月21日(木)

インドネシアにおけるリスクベースの事業ライセンスシステムの実施に関する政府規則2025年28号の施行についてのニュースレターを発行いたしました。こちらの内容は、以下のリンクよりPDF版でもご覧いただけます。

リスクベースの事業ライセンスシステムの実施に関する政府規則2025年28号の施行

 

リスクベースの事業ライセンスシステムの実施に関する政府規則202528号の施行

2025年8月
One Asia Lawyers Indonesia Office
日本法弁護士 馬居 光二
インドネシア法弁護士 Prisilia Sitompul

1.はじめに

インドネシア政府は、新たに、リスクベースの事業ライセンスシステムの実施に関する政府規則2025年28号(GR 28/2025)を公布しました。GR 28/2025はライセンスシステムの円滑な運営を企図して策定され、2025年6月5日に施行されております。同規則の施行により、従来ライセンスシステムを定めていた政府規則2021年5号(GR 5/2021)は無効化されますが、GR28/2025に矛盾しない範囲では効力を有するとされております。同規則は、全550条・14章からなり、リスクベースの事業ライセンスシステムを大幅にアップデートするものであるところ、本ニュースレターでは、事業ライセンスシステムの全体像と概要についてご説明いたします。

2.基本的な枠組み

GR 28/2025は主に下記のような内容を定めております。基本的枠組みとしては、リスクベースのライセンスシステム(Perizinan Berusaha Berbasis Risiko/PBBR)を採用したGR5/2021の内容を引継ぎつつ手続期限、権限、処理方法を明確化し、規定範囲を拡大しております。

(1) 基本要件(第2章)
(2) 事業ライセンス(第3章)
(3) 事業活動支援ライセンス(PB UMKU)(第4章)
(4) 規範・基準・手続・評価基準(NSPC)(第5章) 
(5) OSSシステムによるサービス(第6章)
(6) 監督(第7章)
(7) 政策評価と改革(第8章)
(8) マーキング(基準への適合表示やラベル)(第9章)
(9) 問題・障害の解決(第10章)
(10) 制裁(第11章)

3.フィクティフ・ポジティブ(fiktif positif)制度の導入

GR28/2025では、フィクティフ・ポジティブ制度が導入されております。これにより、一定期間内に行政処理がなされない場合、自動的に承認とみなされる形となり、より迅速な手続の推進が企図されております。具体的には、環境承認やKKPR、その他のライセンス取得過程で、申請を行ったにも関わらず、行政側の都合で手続きが遅延するような場合に、自動的に承認決定やライセンスの発行がなされる旨が規定されております。

4.環境承認及び技術承認の厳格化及び効率化

インドネシアにおいては各事業毎にその性質に応じて環境承認を取得する必要がございます。また、事業活動を行う前に必要となる専門的・技術的な基準適合の確認書である技術承認が環境承認の前提として要求される場合がございます。
GR28/2025は、事業ライセンスの前提要件である基本要件(Persyaratan Dasar)として環境承認及び技術承認を位置づけ、下記のような点を規定し、明確化しております。

  同一敷地内複数KBLIは最も厳しい環境要件を適用
  技術承認と環境承認をOSSシステムで同時申請可
  工業団地・経済特区・自由貿易地域では条件付きで技術承認免除

また技術承認について、一定の要件を満たす場合には、環境承認との同時申請を認めることで、手続の迅速化を図っています。

5.KKPRPBGSLFの統合

現状のライセンスシステムでは、事業ライセンスを取得する前に、前述の環境承認に加え、(1)空間利用適合性(KKPR)、(2)環境承認(PL)が必要であり、事業用施設として建物の建築が必要な場合には、建築許可(PRG)及び建設物使用適合証(SLF)が必要となります。
GR 28/2025では、これまで別途の申請が必要だったPRG及びSLFも含め、全て基本要件として、OSSシステムでの申請に1本化され、処理期限も明確化されました。

6.事業ライセンスとPB-UMKUの明確化

GR 21/2021においては前述のように、リスクベースのライセンスシステムを採用しており、GR 28/2025もこれを踏襲しています。同システムにおいては、各事業者は、行う事業に割り当てられたKBLI(インドネシア標準産業分類)毎に設定されたリスクレベル(低、中・低、中・高、高)に応じて事業ライセンス(Perizinan Berusaha/PB)を取得する必要があり、これによって、事業が開始できる形となっております。ただし、同じKBLIであっても、扱う商品やサービスの違いによって、追加で補助的なライセンス(PB-UMKU)を要求される場合がございます。GR28/2025においては、これまで運用上採用されていたPB-UMKUをPBと明確に分けて規定されております。全てOSSシステムを介して申請を行う旨が規定されております。

7.行政制裁の強化

GR 28/2025では、基本要件、事業ライセンス、PB-UMKUの違反者に対して直接行政制裁を科すことが可能になり、GR 5/2021よりも制裁範囲が大きく拡大されました。
制裁内容には以下が含まれます:

  • 警告
  • 事業活動の一時停止
  • 行政罰金
  • 権限機関による是正措置の実施
  • 許可・証明書・承認の取消し


重大な違反の場合には、基本要件・事業ライセンス・PB-UMKU自体の取消しも行われる可能性があります。

8.補助的事業活動の収益化

前述のように、インドネシアにおいて各事業者は、事業毎に設定されたKBLIを選択の上、ライセンスを取得して事業を行うことになります。当該KBLIについて、各事業者は、主たる事業活動とは別に、補助的事業活動(Kegiatan susaha pendukung)を明確にする必要があるとされております。当該補助的事業活動について、従業前は、これを収入源とすることは禁止されておりましたが、GR28/2025では、これを「事業者の収入源となり得るもの」と規定しており、同事業から収入を得ることを許容しているように見えます。本規定の解釈は必ずしも明確ではないところ、今後の運用が注目されます。

9.移行規定

GR 28/2025については、OSSシステムの更新(2025年10月5日予定)までは、GR5/2021が適用されるものとされております。

また、本規則に規定する事業許認可の実施に関する規定は、当該政令の施行前に基本要件、事業許認可(PB)、及びPB UMKUが既に発行され、検証され、または承認されており、かつ有効である事業者には、これが事業者にとって有利な場合を除き、適用しないとされております。

10.結論

GR28/2025は、現行のライセンスシステムを基本的には踏襲しつつ、各規定を明確化、迅速化しております。これにより、これまで以上に円滑にインドネシアでの事業活動を進められることが期待されます。一方で、行政制裁も含め、従前よりも詳細な規定が置かれており、これまで以上にコンプライアンスについて注意が必要となります。この点、インドネシアにおける実務は法令とともに運用が極めて重要となるところ、実際の進出に当たっては、当地の法律事務所等に相談を行いつつ進めることが推奨されます。