欧州ビジネス法務通信 2026年7月号 EUの最新法務トピック3選 ― 包装規則(PPWR)の適用開始/サイバーレジリエンス法(CRA)の報告義務/森林破壊防止規則(EUDR)の適用迫る
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欧州ビジネス法務通信
2026年7月号 EUの最新法務トピック3選 ― 包装規則(PPWR)の適用開始/サイバーレジリエンス法(CRA)の報告義務/森林破壊防止規則(EUDR)の適用迫る
2026年7月
One Asia Lawyers Group
弁護士(日本・フランス)・弁理士
広瀬 元康
今号では、欧州で製品・包装・原材料を取り扱う日本企業の経営・法務・事業部門の皆様向けに、2026年後半から年末にかけて適用開始が迫るEUの新しいルールを3つお届けします。今回の共通点は、いずれも対応が遅れると自社製品をEU市場に出せなくなりかねない、「市場アクセス」に直結する規制だという点です。準備は今から始めるのが安全です。
以下は、今号で取り上げる3つの規則の適用時期と対象の概要です。
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規則 |
適用開始(大企業) |
主な対象 |
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包装規則(PPWR) |
2026年8月12日 |
EUで包装された製品を出す企業全般(製造・輸入・販売・越境EC) |
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サイバーレジリエンス法(CRA) |
2026年9月11日 (報告義務) |
ネットワーク接続・データ処理をする製品の製造者等 |
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森林破壊防止規則(EUDR) |
2026年12月30日 |
牛・カカオ・コーヒー・パーム油・ゴム・大豆・木材と派生品を扱う企業 |
1. 包装規則(PPWR)が2026年8月12日から適用 ― EUで売る「容器・包装」の新ルール
EUの包装・包装廃棄物規則(PPWR、規則(EU)2025/40)が、2026年8月12日から適用されます。EU市場に「包装された製品」を出すほぼすべての企業(製造者・輸入者・販売者・越境EC事業者)が対象で、原則として経過措置(猶予期間)はありません。当面、特に注意すべき点は次のとおりです。
・適合宣言(Declaration of Conformity):2026年8月12日以降にEU市場へ出す包装は、包装タイプごとに、技術文書に裏付けられた適合宣言が必要になります。これがないと市場に出せません。
・有害物質(PFAS)規制:食品接触用の包装について、同日から一定濃度以上のPFAS(いわゆる「永遠の化学物質」)の使用が禁止されます。経過措置はありません。
・リサイクル可能性:同日から、包装は欧州規格(EN 13430)に沿ってリサイクル可能であることが求められます(より詳細な設計基準への適合評価は2030年から)。
・拡大生産者責任(EPR):製品を販売する加盟国ごとに生産者登録を行い、リサイクル性等に応じて変動するEPR費用を負担する必要があります。
実務ポイント:まず「自社が製造者・輸入者・販売者のどの役割に当たるか」を確認し、包装ごとに適合宣言と技術文書を準備しましょう。特にサプライヤーからの材質・物質データの収集には時間がかかります。違反の場合、製品回収・販売停止・マーケットプレイスの出品停止・制裁金など、直接的に市場アクセスへ影響が及び得ます。なお、細部を定める委任・実施法令の一部は未確定で、欧州委員会は2026年3月に解釈ガイダンス・FAQを公表しています。
2. サイバーレジリエンス法(CRA)― 2026年9月11日から「脆弱性・インシデント報告」義務が開始
「デジタル要素を持つ製品」(ネットワークに接続する、またはデータを処理するハードウェア・ソフトウェア)を対象とするサイバーレジリエンス法(CRA、規則(EU)2024/2847)について、2026年9月11日から報告義務(第14条)が先行して始まります(製品全体の適合義務・CEマーキング等の全面適用は2027年12月11日)。EU市場に製品を出す企業は、所在地を問わず対象です。主な内容は次のとおりです。
・報告のタイミング:現に悪用されている脆弱性や重大なインシデントを認識したら、24時間以内に早期警告、72時間以内に通知、是正措置後14日以内(重大インシデントは1か月以内)に最終報告を、ENISAの単一報告プラットフォーム経由で行います。
・既存製品も対象:この報告義務は、2027年の全面適用より前に、すでにEU市場に出ている「レガシー製品」にも及びます。
・準備事項:対象製品の棚卸し、ソフトウェア部品表(SBOM)の整備、報告を担う法的主体(グループ内・OEM・第三者部品を含む)の特定が求められます。
実務ポイント:まず自社のどの製品がCRAの対象かを洗い出し、9月11日までに、脆弱性・インシデントの検知から報告までの社内フロー(24時間・72時間・最終報告)を整備しましょう。サプライヤー契約にもCRA対応を織り込む必要があります。欧州委員会は2026年3月に解釈ガイダンス案を公表しており、今後の確定にも注意が必要です。
3. 森林破壊防止規則(EUDR)― 大企業は2026年12月30日から適用、直前に簡素化
牛・カカオ・コーヒー・パーム油・ゴム・大豆・木材の7品目とその派生品(革・チョコレート・タイヤ等)を扱う企業を対象とする森林破壊防止規則(EUDR、規則(EU)2023/1115)は、大・中規模の事業者について2026年12月30日から適用されます(小・零細事業者は2027年6月30日)。2025年12月の改正(規則(EU)2025/2650)で適用が1年延期され、あわせて手続が簡素化されました。ポイントは次のとおりです。
・対象と義務:対象品目が2020年12月31日以降に森林破壊された土地に由来しないこと等を、生産地の地理座標(ジオロケーション)を含むデュー・ディリジェンス(DDS)で示す必要があります。
・簡素化:DDSの提出義務は原則として「最初にEU市場に出す事業者」に一本化され、川下事業者(downstream operator)は軽減された規律に。低リスク国からの調達には簡易な確認で足ります。書籍・新聞等の印刷物は対象から除外されました。
・これ以上の延期はなし:欧州委員会は2026年5月の措置公表で、これ以上の延期は行わない方針を明確にしました。対象品目の範囲は委任法令で微調整されています(例:レザー・更生タイヤの除外、インスタントコーヒー等の追加を提案)。
実務ポイント:まず自社の取扱品目・派生品がEUDRの対象かを確認し、サプライチェーンをさかのぼって、原産地の地理座標と適法性を裏付けるデータ収集の体制を整えましょう。商社・食品・タイヤ(ゴム)・家具・紙製品などが特に影響を受けます。制裁は最大でEU売上高の4%に及び得ます。
4. おわりに
今号は、いずれも「対応が遅れると製品をEU市場に出せなくなりかねない」3つのルールを取り上げました。包装(8月)、製品のサイバーセキュリティ(9月)、原材料の調達(12月)と、適用開始が今夏から年末にかけて続きます。まずは「自社のどの製品・包装・原材料が、どの規則の対象か」を棚卸しし、サプライヤーからのデータ収集など時間のかかる作業から着手されることをお勧めします。個別のご相談やセミナーのご依頼など、お気軽にお問い合わせください。
※本稿は2026年7月時点の公開情報に基づく一般的な情報提供であり、個別の法的助言ではありません。PPWR・CRA・EUDRは、細部を定める委任法令・実施法令やガイダンスが確定していない事項を含みます。一般的情報としての性質上、法令の条文や出典の引用を一部省略している場合があります。

