• Instgram
  • LinkeIn
  • Lexologoy

ベトナム2026:改正知的財産法及び技術移転法

2026年08月12日(水)

「ベトナム2026:改正知的財産法及び技術移転法」についてニューズレターを発行いたしました。こちらの内容は以下のPDFからもご覧いただけます。
ベトナム2026:改正知的財産法及び技術移転法

< ベトナム2026:改正知的財産法及び技術移転法>

2026年8月12日
One Asia Lawyers ベトナム事務所

I. 概要

2026年4月1日、「知的財産法(第131/2025/QH15号)」(「2025年知的財産法」)のいくつかの条項を改正・補足する法律及び「技術移転法(第115/2025/QH15号)」 (「2025年技術移転法」)が施行されました。
両法は異なる分野を規制しているものの、デジタル経済や人工知能(AI)の急速な成長に対応し、知的財産及び技術に関する法的枠組みを近代化しようとするベトナムの姿勢を表しています。これら2つの法律は、ベトナムにおける知的資産や技術の保護、商業化、移転についてのルールや、国境を越えた取引や投資活動における新たな規制やコンプライアンス上の検討事項を導入しています。外国人投資家及び外資系企業にとって、ベトナムで変化する法的枠組みの下で、知的資産や技術をどのように構築し、商用化し、管理すべきかという点が重要になります。
これまでの規制からの主な変更点は以下のとおりです。

II. 主な変更点

パートA – 2025年知的財産法(第131/2025/QH15号)

1. 人工知能:AI生成物の保護とAI学習に関する例外
2025年知的財産法は、知的財産の創出においてAIシステムが利用されることを初めて明示的に認識し、その結果生じる知的財産上の問題に対処するための法的枠組みを導入しています。詳細な施行規則はまだ公布されていませんが、AIによって生成された全ての成果物がベトナムにおいて自動的に知的財産保護の対象となるとは考えられていません。AIを補助として用いた著作物、発明、その他の知的財産資産の所有権及び保護を決定するにあたっては、これまでと同様に人間の創造性、管理及び貢献の程度が重要な考慮事項となります。また、知的財産の登録を求める出願者は出願時にAIシステムの利用状況について誠実に開示することが求められており、今後公開される詳細な施行規則の要件を満たさない出願は拒絶又は無効となる可能性があります。
2025年知的財産法は、著作者や権利者の正当な利益を不当に害しないことを条件に、科学研究、試験及びAIの学習のために、使用者が合法的に公表された著作物や公にアクセス可能なデータを使用することを認める限定的な例外規定を導入しています。これにより、ベトナムにおけるAI関連活動に関連して、企業が公表された資料や公にアクセス可能なデータを利用する条件付きの道が開かれています。

2. 手続き上の改革:保護の迅速化、期間の短縮
2025年知的財産法は、審査及び公報掲載の期間を短縮し、要件を満たす出願に対する迅速審査メカニズムを導入することで、ベトナムの知的財産登録手続を大幅に効率化しています。これらの変更により、ベトナムで知的財産保護を取得するのに必要な時間が短縮され、イノベーションやブランドを早期に商用化しようとする企業にとって、より魅力的な管轄区域となることが期待されます。
例えば、発明の審査期間は18ヶ月から12ヶ月に短縮され、商標、意匠、地理的表示の審査期間は5ヶ月に短縮されています。新たな迅速審査制度により、対象となる発明及び商標出願の手続がさらに短縮される可能性があります。同時に、公報に掲載される期間が短縮され、第三者による異議申立の期限も改定されたため、権利者が競合する出願を監視する時間も減少しています。
知的財産の登録が迅速化されれば、企業は製品や技術の権利を確保しつつ、より早く市場に投入することができる可能性があります。しかし、登録までの審査期間が短縮されたことで、自社の知的財産を侵害するような出願がされていないかどうかの監視をこれまでよりも積極的に行う必要が多くなる可能性があります。

3. 保護範囲の拡大と執行の強化:コンプライアンス上の検討事項
2025年知的財産法は、知的財産の保護範囲を拡大しています。例えば、意匠権の保護対象は、部分的な意匠や非物理的(デジタル)な意匠にまで拡大され、仲介サービス提供者及びデジタルプラットフォーム運営者の責任は、全ての知的財産権(従来は著作権及び隣接権のみ)を網羅的に保護するように拡大されています。
同法はまた、ベトナムで研究開発活動を行う企業に対して、新たにコンプライアンス上の検討事項を課しています。ベトナム国内で創出され、ベトナム人個人又はベトナムに設立された組織が所有する、防衛又は国家安全保障に関連する特定の発明については、所管当局の許可を得た後にのみ、海外で知的財産として出願することができます。
同時に、ベトナムは知的財産権の侵害に対する強制執行の体制を強化しています。2025年知的財産法は、当局や裁判所が、知的財産権を侵害するコンテンツ、アカウント、ウェブサイト、アプリケーションの削除又はアクセス遮断を命じる権限を有しており、実損害額を容易に算定できない場合にも、権利者により効果的な救済措置を規定しています。

4. 資金調達可能な資産としての知的財産:企業にとっての新たな機会
2025年知的財産法は、知的財産権を単なる法的権利としてだけでなく、民事・商事・投資取引において活用可能な商業的価値のある資産としても認めたことが、大きな政策転換です。つまり、新たに、資本金としても知的財産を拠出でき、抵当権としても知的財産を利用できるようになっています。詳細は公表されていませんが、知的財産の活用が見込まれます。

パートB – 2025年技術移転法(第115/2025/QH15号)
1. 技術移転及び投資優遇措置
2025年技術移転法は、ノウハウ、技術計画、プロセス、ソリューション、パラメータ、設計及び技術図面、モデル、アルゴリズム、公式、ソフトウェア、情報及びデータ、生産合理化及びイノベーションソリューション並びに付随する機械・設備など、移転可能な技術対象の範囲をこれまでよりも明示的に認めたことで、何が対象になるかをより明らかにしています。
同時に、2025年技術移転法は、ベトナムにおける技術移転、従業員研修、研究開発、設計、製造活動を組み込んだ外国投資プロジェクトをより促すような投資優遇措置などの枠組みを導入しています。

2. 規制遵守:技術主導型投資における新たな考慮事項
2025年技術移転法は、ベトナムにおける技術移転の規制も強化しています。移転対象となる技術は引き続き「奨励」「制限」「禁止」のカテゴリーに分類され、制限技術の移転には依然として技術移転ライセンスの取得が義務付けられています。ライセンス発行権限は省レベルの人民委員会に委譲された一方、ベトナムから海外への技術移転については、より厳格な規制が課されます。
さらに、移転が制限されている技術、又は環境に悪影響を及ぼすおそれのある技術を利用する投資プロジェクトについては、投資方針承認段階又は投資決定段階において、技術評価を受けるか、技術に関する意見を取得することが求められます。
これらの法律改正は、国境を越える取引や投資プロジェクトの初期段階で、技術関連の規制について評価検討を行うことの重要性をより一層高めています。

III. 結論と提言

2025年知的財産法及び2025年技術移転法は、デジタル経済における知的財産と技術をより一層現代的に整備することを目指すベトナムにとって、重要な法律です。
多くの規定については今後、実施指針が策定される予定であるため、外国投資家及び外資系企業は、ベトナムにおける事業計画や取引の初期段階から、知的財産や技術移転に関する法整備の動向を注視し、新たな規制の影響を注視する必要があります。