ラオス社会保障基金による検査について
ラオス社会保障基金による検査についてについてのニューズレターを発行しました。
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→社会保障検査について
ラオス社会保障基金による検査について
2026 年10月12日
One Asia Lawyers Groupラオス事務所
1.背景
2026年5月25日付「ラオス社会保障基金(NSSF)による検査に関する労働社会福祉大臣合意(No.1971)」が同年9月1日に官報に掲載されました。同合意は、2021年11月発行の No.4139(旧合意)を置き換えるものです。検査の範囲、形態、対象者、罰則規定等の基本的な枠組みに関しては、大きな改正はありません。実質的な変更は、未加入事業者に対する違反是正の期限短縮と、検査の権限が労働社会福祉大臣へ集約されたという点です。
本ニュースレターでは、主な改正点と実務上留意すべきポイントについて解説します。
2.検査の対象と内容(第4〜5条・第7条)
対象範囲は公務部門、企業部門、任意加入の3つです。企業部門では主に次の点が検査されます。
・加入済み事業者による従業員数
・賃金の申告と保険料納付が正確かどうか
・未加入事業者に加入させること
・給付受給が適正かどうか
なお、在ラオスの大使館・領事館・国際機関・NGOで働くラオス人の雇用主・従業員も対象に含まれます。
3. 検査の形態(第6条)
検査の形態は以下の3パターンがあります。
定期検査:事前通知により、計画に基づいて行われる検査。
指示・提案に基づく検査:行政機関の長及び各級の検査機関による指示・決定・指導・通知に基づく検査。市民からの提案によって実施される場合もあります。
抜き打ち検査:事前通知はありません。緊急の指示によるほか、雇用主側代表または労働者側代表の提案でも実施されます。
通知がある場合は、少なくとも5営業日前までに対象者へ送付されます(第10条・第12条)。
4. 主な変更点
未加入事業者に対して、違反を是正するための猶予期間が90日又は3か月から30日に短縮され、地方での検査権限が労働社会福祉大臣に集約されました。
(1) 違反時の3段階措置(第25条)
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段階 |
対象となる違反・状況 |
旧(2021年) |
新(2026年) |
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第1段階:教育・指導 |
社会保障制度に加入していない事業所(故意に回避していない場合) |
指導後90日以内に加入 |
指導後30日以内に加入 |
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第1段階:書面警告 |
指導後も期限内に加入しない場合(故意の回避とみなされる) |
90日以内に完全加入するよう警告 |
30日以内に完全加入するよう警告 |
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第1段階:呼出し・延長 |
警告の期限が過ぎてもなお是正しない場合 |
NSSFへの呼出し・議事録作成、延長は90日まで |
延長は30日まで(呼出し・議事録作成は同じ) |
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第2段階:罰金・受給権停止 |
第1段階の措置に従わない場合 |
過料と受給権停止。滞納分を全額納付し、納付を継続すれば回復。被保険者の給付損失は雇用主の責任 |
変更なし |
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第3段階:法執行 |
第1・第2段階を経ても従わない場合 |
所管当局に法執行を提案。処罰・罰金・懲戒・行政処分 |
所管当局に法執行を提案し、必要に応じて司法手続きへ |
※ 第2段階の受給権停止は、主に加入済みで保険料を滞納している事業所を想定したものと解されます。受給権の回復条件が「滞納額(ຈຳນວນທີ່ຄ້າງມອບ)の納付」とされているためです。未加入の場合は、もともと停止する受給権がありません。そのため、過料に加えて、従業員が本来受けられたはずの給付について雇用主が責任を負います。加入後に納付した期間は保険期間に算入されます。ただし、第1段階の本文は未加入のみを対象としており、滞納の場合の扱いは明記されていません。実際の運用はNSSFへの確認をお勧めします。
(2) 違反類型ごとの過料(第26条)
第1段階で加入した場合は、新旧どちらの決定でも過料は科されません。下記、3類型の過料は、いずれも従業員ではなく事業者側に科されます。
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違反類型 |
具体的な違反内容 |
旧(2021年) |
新(2026年) |
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未加入 |
事業所が社会保障制度に加入していない |
雇用主負担分の保険料(月額)相当額。3か月以内に加入しなければ再検査 |
罰金額は変更なし。再検査までの期間が30日に短縮 |
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未登録・過少申告 |
一部の従業員を登録していない、または賃金を実際より低く申告している |
未登録の人数分・未納額に対応する雇用主負担分相当額(月ごと) |
変更なし |
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保険料の未納・遅延 |
従業員の賃金から控除した保険料を納付しない、一部しか納付しない、または正当な理由なく期限を超えて遅延している |
3か月を超える遅延が対象。未納額に中央銀行の貸出金利を適用し、月ごとに計算 |
対象が30日を超える遅延に拡大(算定方法は変更なし) |
(3) 検査の権限(第11条・第19条)
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項目 |
旧(2021年) |
新(2026年) |
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地方の特別検査の決定者 |
県知事・首都知事 |
労働社会福祉大臣 |
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地方の検査官の任命者 |
県労働社会福祉局長 |
労働社会福祉大臣 |
5.企業部門への留意点
検査で社会保障制度への未加入や保険料の未納・遅延を指摘された場合、加入・納付によって是正するための猶予が、90日/3か月から30日に短縮されました。指摘を受けてから対応したのでは間に合わないおそれがあるため、平時から備えておくことが重要です。
加入・登録状況の点検:全従業員がNSSFに登録され、賃金が正しく申告されているか、定期的に確認してください。未登録や過少申告があると、該当する人数分・月数分の雇用主負担分相当額が罰金となります(第26条2号)
保険料の期限内納付:保険料は全額を速やかに納付してください。正当な理由なく30日を超えて遅延すると、中央銀行の貸出金利に基づく罰金の対象になります(第26条3号)
抜き打ち検査への備え:検査官は事前通知なしの立入りやデータベース照合ができます(第6条・第17条)。従業員名簿、賃金台帳、納付記録などを、紙と電子のどちらでもすぐに提出できるよう整理しておいてください(第8条)
30日の是正期限への即応:指摘を受けたら第1段階のうちに是正してください。そうすれば過料は科されません。対応が遅れると、受給権の停止と、従業員の給付損失に対する雇用主の責任につながります。さらに第3段階では司法手続に移る可能性があります(第25〜26条)
以上
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)

