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インドネシアにおける電子契約への印紙税の課税等

2023年08月17日(木)

インドネシアにおける電子契約への印紙税の課税等についてニュースレターを発行いたしました。 PDF版は以下のリンクからご確認ください。

インドネシアにおける電子契約への印紙税の課税等

インドネシアにおける電子契約への印紙税の課税等

2023年8月
One Asia Lawyers Indonesia Office

日本法弁護士 馬居 光二
NY州法弁護士 友藤 雄介
インドネシア法弁護士 プリシリア・シトンプル

1.はじめに

コロナ禍以降、インドネシアにおいても電子システム上で契約を取り交わす機会が増加しており、こういった電子上で締結された契約(電子契約)は、インドネシア法上、有効であると規定されています(「電子情報と取引に関する法律 2016 年 19 号で改正された法律 2008 年 11 号」。詳細は2021年8月のニュースレター(日本語のみ)を参照ください。)。

しかしながら、インドネシアにおいては電子契約であっても印紙税の課税対象となっているため、留意が必要です。

2.印紙税法改正による電子契約の印紙税課税対象化

従来インドネシアにおいては、印紙税の課税対象はあくまでも紙(Kertas)の契約書を指していた(「印紙税に関する法律1985年第13号)(「旧印紙税法」)第1条2項(a)等)ため、電子契約は印紙税の課税対象文書ではありませんでした。

しかし、2021年1月1日に施行された「印紙税に関する法律2020年第10号」(「新印紙税法」)に基づくと、課税対象文書は以下のように規定されており、このため電子契約も印紙税の課税対象と考えられています。

  • 第1条1項: 印紙税は、文書にかかる税金である。
  • 第1条2項: 文書とは、証拠または情報として使用できる、手書き、印刷、または電子形式で書かれたもの、または文章のことである。

3.印紙税の課税対象文書

上記の通り、新印紙税法においては、手書き、印刷、または電子形式で書かれたものであっても、課税対象文書であれば印紙税の納付義務が生じます。それでは、印紙税の課税対象文書とは何を指すのでしょうか。新印紙税法第3条において、以下と規定されており、電子契約は以下の第3条2.a.の合意書に含まれるため、電子契約は印紙税の課税対象となります。

●第3条1項

 印紙税は以下のものに課税される。

  1. 民事的性質の事象を説明するための手段として作成された文書
  2. 裁判所において証拠として使用される文書

●第3条2項

 前項aでいう民事的性質の文書には、以下のものが含まれる。

  1. 合意書、証明書、陳述書又はこれらに類似する文書及びその写し
  2. 公正人証書(写しおよび抜粋を含む)
  3. 土地権利登録機関によって作成された権利書(写しおよび抜粋を含む)
  4. 有価証券(名称および形態を問わない)
  5. 先物契約取引を含む有価証券取引文書(名称及び形態を問わない)
  6. 競売文書(抜粋、議事録、原紙、またはコピー)
  7. 500万ルピアを超える価額が記載された文書で、(i)金銭の受領が記載されたもの、または(ii) (金額の全部か一部かは問わず)負債が弁済若しくは清算されたことを承認する記述のあるもの
  8. その他政府規則が定める書類

4.印紙税額及び、電子契約の印紙税の納付方法

電子契約に対する印紙税の納付は、税務総局等が運営する電子納税システム(https://e-meterai.co.id/about)にて行います。納税額は、階層別の納税額を定めていた旧印紙税法と異なり、契約書の種別等に関わらず10,000ルピアとなります(印紙税法第5条及び、印紙税の納付、印紙の一般的特徴および特別な特徴、電子印紙、その他の形態の印紙、印紙および有償後日付印紙の有効性の決定に関する財務大臣規則第134/PMK.03/2021号(「MoFR 134/2021」)第2条2)。

納付手続きとしては電子納税システム上でアカウントを作成の上、課税対象文書をアップロードし、税額を納付等すると、22桁のシリアルナンバーが付与された印紙が課税対象文書に電子上で押印され、納付が完了します。(MoFR 134/2021第6条及び第7条等)

5.納税懈怠時の罰則

印紙税の納税を懈怠した場合は行政罰を受けるとされており、その場合、結果として、納付すべき印紙税額の2~3倍の印紙税を納付する必要があります。(印紙税法第18条、19条及びMoFR134/2021第20条等)

6.結論

インドネシアにおいては、電子契約であっても印紙税を納税する必要があるため留意が必要です。納税の方法は上述の通り電子納税システムを通じて電子契約をアップロードの上、必要税額を支払うことで行なえます。今後もオンラインでの契約のニーズは益々高まることが予想されますので、懈怠とならないように十分注意が必要です。